怪談??
作:MUTUMI

こ、これは書きかけ小説です。出だしだけしか完成していません。
それでもよければ、読んで見て下さい。ここまで書いて煮詰まってしまいました。
でも、せっかくだからあげてしまえ〜〜。


神戸市郊外の豊かな自然の中、日本には不釣り合いな、いかにもカントリー調な家が一軒あった。
ログハウス風の家は、豊かな自然の中に見事に溶け込んでいる。
木々の木目が美しい木材の壁、何の素材かはよくわからないが、真っ赤な屋根。その天辺(てっぺん)には何故か風見鶏がついている。
広いテラスにはゆったりとした、2台のカントリーチェアーとふかふかのクッションがあり、冷たいジュースが丸テーブルの上に置かれている。
涼し気な風が、家の前にあるガーデンから吹き抜け、咲き乱れる花をほのかに揺らした。微かに甘い花の香りが漂っている。

心地よい風にゆらゆらと揺れる窓辺のカーテンは、白のレースに小さなビーズが縫い付けてあった。光に輝きキラキラとビーズが反射する。
まるでどこからか有閑マダムが出て来そうな、乙女チックな雰囲気をもつ家だった。
遠くの森では、小鳥がピピ、ピピピと美しい声で鳴いている。
そんな少女趣味丸出しの家に住む住人は、1台のカントリーチェアの上にあった。
うとうととまどろんでいたらしく、読みかけの本がテラスの床に落ちている。
テーブルの上のジュースのコップには水滴が幾つもついており、かなりの時間が経っている事を示していた。
だが住人は心地よいのか、一向に目覚める気配がない。そよそよと風が住人の短い髪を撫でていく。

と、そこに一陣の突風が吹いた。
長い黒髪の人形のような少女が、トトトトトと駆け込んで来る。
家の前のガーデンからダッシュし、勢いよく呑気にうたた寝をしている住人の上にダイビング。
それはそれは見事な飛びっぷりだった。
少女は狙い違わず、うたた寝中の住人のお腹の上に落下する。
とたんに。
「うぎゃっ!?」
蛙の潰れた様な声が、静謐(せいひつ)を突き破った。
「い、たたた」
起き上がり住人はお腹を抱えて蹲る。
その目は涙目で、恨みがましく少女を見ていた。

「あずみ!!」
大声で少女を呼び、キッとした顔で睨み付ける。
少女は怒られても平気な顔をし、蹲る住人、少女よりはかなり、いや大分年上の青年を見つめた。
「何〜? どうしたの司(つかさ)?」
くりっとした目を青年に向ける。
「お前ね。止めなさい、ダイビングは!!」
「えへへ。でも司おかげで起きたでしょう?」
悪びれもせず、少女あずみはそう自慢する。
「・・・あずみ〜。俺を殺す気?」
青年、司はぶつぶつと不平を漏らしつつ、まだ多少痛みが残るお腹を気にしながら立ち上がった。
床に落ちていた本を拾い、少女に向き合う。
「それで、あずみは何で俺を起こしたのかな?」
しょうもない理由なら、張り倒すとか何とかひくひくした顔で言い、あずみを窺った。
あずみはえへんと胸を張り、背後のガーデンの入り口付近を指し示す。

そこにはびっくりした顔をして、ショートヘアの眼鏡をかけた女性が立っていた。
女性は司と目が合い、はっとして手を振る。
「ありゃ。恭子さん?」
司が呟くや否、向こうから元気な声が聞こえてくる。
「司君〜! お仕事よ〜!」
銀縁眼鏡の女性、恭子はぶんぶんと手を司に向かって振る。
「し、仕事・・・!?」
引きつる司にかわって、あずみが嬉しそうに司の背にしがみつき歓声をあげる。
「良かったな、司! これで今月の生活費はいただきだ!」
妙に所帯じみたあずみの発言に司はどんよりと哀しくなる。

うう、あずみが所帯じみてきたよ。しくしく。天国のお兄ちゃんごめん。俺、あずみの育て方間違ったかも〜。
司は早世(そうせい)したあずみの両親、司にとっては兄夫婦になるのだが、に向かってそっと心の中で両手を合わせた。
でも、お兄ちゃん。あずみのおてんばは俺のせいじゃないぞ。あずみを引き取った時から、こんなだったんだぞ〜。これってお兄ちゃんのせいだからな〜。
誰のせいにすればいいのかわからない不満を、司は溜め息とともに飲み込む。
そしてしぶしぶ恭子の方へと歩いて行った。
無論司の背中には、しがみついたあずみがぶら下がっている。


□□□□


「悪いわね、司君。急な仕事を頼んじゃって」
「あ、いえ〜。気にしてませんよ。最近は暇でしたし」
ずっと仕事がなくて、生活費が不足しそうだったとは言えない〜。
あはははは、と乾いた笑みを浮かべながら、司は森に囲まれた古びた洋館を見上げる。
司の見上げた洋館はかなり古い建物らしく、壁や屋根、外装等が薄汚れている。決して手を抜いて掃除をしている訳ではないようなのだが、年代が年代らしくどう見ても古めかしく感じてしまう。
おそらく昭和初期の建築だろう。当時としては画期的な建物だったのだろうが、今となっては懐古趣味的な色合いが濃い。しかも森の中にあるものだから、じっと見ているとその独特の世界に引き込まれそうな雰囲気があった。

うわーっ。これはまた古いな〜。しかも何か無気味〜。
司は愛用のカメラを胸に抱え、しみじみとそう思う。
年季が入ってるっていうより、よくもまあこんな洋館が今もちゃんと残ってるって言う方が先だよな。
う〜む。さすが恭子さん、こんな舞台を探し出すとは。こういう事に関しては、本当にやり手だわ。
日本にまだこういう所が残ってるとはねー。ナイスな背景だよな。
司がしみじみとそう感嘆を漏らしていると、恭子がすかさず今回の仕事の説明に入った。
「見て想像できると思うけど、司君。今回のコンセプトはクールで幻想的な少女だからね。くれぐれも、元気爆発少女の写真にはしないでね!」
恭子にそう言われ、司は遠くのバンで撮影の用意をしているはずの、今回のモデルであるあずみの性格を思い出し、思わず呟いていた。
「そ、それは、あずみしだいかな〜っと」
「司君」
「うわっ。冗談です。真面目に、えっとクールで幻想的な少女の写真にします」
恭子に睨まれ司は慌てて答える。
「よろしい。ちゃんとしっかり撮ってね。もしかしたら、社長が気に入ったらなんだけど、このまま正式にうちの社のイメージに採用されるかもしれないんだから」
「ええっ。まじですか!?」
司はそれを聞き、驚いて恭子を見た。

恭子の勤めるアパレルメーカーは規模こそ小さいものの、市場の人気度では大手メーカーを抜いている。
知る人ぞ知る、今人気の新興メーカーなのだ。
恭子はそこで広報を一手に仕切っている。会社の急成長の影にはこのずば抜けた才能を持つ、クリエーターの存在が最も大きいと言われていた。
その恭子じきじきの指名で司は、過去に何度かポートレートの撮影をしていた。モデルは日本人形のようなあずみだ。それが思いのほか好評だったらしく、今回の撮影とあいなっていた。

「いいんですか? 俺みたいな駆け出しを使って」
「あら。司君の写真はいいと思うんだけどな。心に染みる写真が多いから、好きよ」
恭子はくすっと笑って、俄に緊張した表情をしている司の顔を覗き込む。
「それとも自信がない?」
「そ、それは。自信はありますよ! なんといっても、あずみがモデルなんだし。あいつの楽しい顔とか、笑った顔とかを一番綺麗に撮れるのは俺だって自負してますから」
「あらら。当てられちゃった」
恭子はそう言いながら、撮影用の衣装に着替えバンから出て来たあずみを手招く。
「あずみちゃーーん。こっちよ。転ばないようにね!」
裾の長いひらひらした白のワンピースを着たあずみは、レースのリボンをなびかせ司の元に走ってくる。
まるでそれは妖精のような雰囲気だった。

「うわっ。ロリロリ。恭子さん幻想的はともかく、これをどうやってクールにする訳??」
ちかちかとロリコンの文字が頭をよぎっては過ぎて行く。
「あら、それは司君の腕しだいよ」
「・・・」
ちょっと転けそうになった司は気を取り直し、着飾ったあずみに指示を出す。
「あずみー、取り敢えず自由に動け。泥まみれにならない限りいいぞー」
「はーい。司、美人に撮ってねーー」
「え? ・・・・・・・・・ハイ」
一人前にもそう要求してくるあずみに小さく肯定を返し、司はどんよりと吐息を吐いた。
何時の間にそんな言葉を覚えたんだよ。というか、あずみって俺の腕を信用してないな〜。
ふに〜。お兄ちゃん、あずみはちょっと思春期に入ってる様です。
ちょっと前までは泥んこ状態だったのに。美しさなんか興味なかったのに〜。
この変わりよう。女の子って難しいです。

「あらあら。あずみちゃんも女の子ね〜。司君可愛く写してあげてね」
くすくすと恭子は笑い、バンの方に戻って行く。
それを見送り司は愛用のカメラをあずみに向けた。
ストロボをたかず自然光だけで撮影していく。普段呑気な司もこの時ばかりは真剣な表情で、ファインダーを覗き込む。
司のシャッターをきる音がレトロな洋館に響く。太陽があずみを輝かすかの様に、キラキラと降り注いでいた。あずみは洋館を前に楽しそうに笑い、言われた通り右に左に自由気侭に動いた。しゃらしゃらと白のワンピースがあずみの動きにつられ、空に翻る。



は〜い。読みましたね?? 書きかけなのに。(苦笑) この後、怪談になる予定でした。しかし、・・・キャラクター的に無理がありました。
なので、投げちゃいました。(汗) ごめんなさい。