1.肩こり
−肩こり時代到来− 私たちはあらゆるストレスに囲まれ、常に緊張を強いられています。とくに最近の不況下では知らず知らず肩に力を入れて生活することが多くなりました。また、仕事などで長時間同じ姿勢を続けていると、 血のめぐりが悪くなり、筋肉はコリコリに緊張して、肩にだるさや痛みが起き、それがまたストレスを生むという悪循環におちいってしまいます。 ストレスの中でも、いま問題となっているのは、パソコンなどのVDT(Visual Display Terminals)機器を使うことによって生ずる、いわゆる「テクノストレス」です。 肩こりはもちろんのこと、目の疲れ、手首の腱鞘炎、頭痛、腰痛、胃痛などを起こし、極限まで疲労してしまっている人が多くみられるようになってきました。 −たかが肩こりとあなどるなかれ− じょうぶな人でも疲れてくると動作は不活発になり、無口になったり生あくびが連発し、上まぶたが眼を覆いかぶせたように目が細くなってきます。顔色もつやがなくなりひどくなると頬がこけ、仕事に間違いが多くなり、けがも起こりやすくなります。こうなると肩こりを通り越して、かなりの過労が起こっていることがうかがえます。この時期に早く充分な休養をとらないでいると、やがて回復がむずかしくなり、強い脱力感と嗜眠、時に睡眠障害があらわれ、食欲はなくなり、悪寒、発熱、嘔吐、下痢などが現れ、過労死という最悪の事態になることさえあります。また、肩こりは表1のようにいろいろな疾病が原因のこともあり、たかが肩こりとあなどることなく、その都度きちんとした対応にこころがけるべきだといえます。表1. 肩こりの原因疾患 |
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1.不良姿勢 | 円背、凹背、平背などの姿勢の異常 | |
2.頚椎症 | くびのストレスや年齢的変化のよっておこる頚椎の椎体、椎間板、椎間関節などの異常が原因。 手のしびれや筋力低下がみられることがある。 |
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3.内科的疾患 | ・狭心症の痛み | 胸骨の下部の痛みだけでなく、肩、上肢へ放散する。ときに左肩が「張る」「重い」「圧迫される」などと感じられ肩こりとして訴えられることがある。 |
・高血圧のばあいの肩こり | 後頚部から肩にかけてみられる。 | |
・消化器疾患のばあいの肩こり | 右肩のこりー胆石症、肝炎、肝腫瘍、膵炎、胃炎 | |
左肩のこりー膵疾患、胃潰瘍、胃腫瘍、胃炎 | ||
両側のこりー慢性膵炎、便秘、慢性下痢 | ||
4.眼科疾患 | 眼の疾患では自覚症状の1つとして肩こりを訴えやすい。眼精疲労が最も多い。 | |
5.精神疾患 | うつ状態や精神分裂病の緊張型、あるいは神経症の患者は肩こりを訴えやすい。逆に躁病のように始終動き回っていような人は肩こりを訴えない。 |
※精油(エッセンシャルオイル)は高濃度に濃縮されたものです。効果が高い反面、危険性も伴います。必ず専門家に相談し信用できるものを使用してください。
トピックス 米医学界がハリ認知 「気」は知らないけど効くみたい |
米国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会は、ハリ治療が手術や歯科治療後の痛みの除去と癌の化学療法や妊娠に伴う吐き気の治療の有効性を認め、ハリ治療の医療費を保険で支払うべきだと勧告した。また、麻薬中毒や頭痛、生理痛、筋肉痛、テニス肘、腰痛、喘息の治療や脳卒中リハビリなどに役立つ可能性を示唆した。ハリの理論的根拠になる「気」の存在については「分からなかった」としているが、ハリがなぜ効くかについて報告書は、ツボにハリを刺すことで、鎮痛作用を持つ生体内化学物質の放出が増えるためと推定した。 (平成9年11月6日付・毎日新聞より) |
3.鍼灸とコンディショニング
(スポーツとはり・きゅう)
−肉ばなれ− 楽しむためのスポーツも、青春をかけたスポーツもついついがんばり過ぎるとオーバーユース(使い過ぎ)になってしまいます。オーバーユースにより筋肉の疲労が慢性化すると、筋肉の収縮と弛緩のバランスが崩れたり柔軟性が失われます。このような時に筋肉に大きな力が加われば、普段はなんでもなくても筋肉が断裂(筋肉が完全に切れたのは「筋断裂」で肉ばなれとは区別します)を起こしたり炎症を起こしたりします。 肉ばなれは身体のあらゆる筋肉に起こりますが、その中でも最も多いのは大腿部のハムストリング(図2)の肉ばなれです。 症状は程度によって異なり、軽症の場合は筋線維の一部が引き伸ばされて局所に痛みがあり運動痛も起こります。中等症は筋線維の部分断裂で、筋の突然のスナップ音(何かが切れたような音)を感じ、ジョギングやランニングなどはできなくなり、局所をさわると断裂を確認し圧痛や腫れが出てきます。重症の場合は痛み、腫れ、内出血などの症状がさらに大きくなり、歩行や立つことさえ苦痛を伴います。肉ばなれを起こした時には、内出血や腫れを早く抑えるため、応急処置として現場でRICESの処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上、Support:固定)を行います。 中等症の場合、冷却は1〜2日行い、その後は患部を温湿布などで温めていきます。 痛みがなくなったら軽いジョギングから練習を再開し、肉ばなれの回復度に合わせて練習量を増やしていきます。 鍼灸治療は、受傷直後や受傷後間がない時は肉ばなれを起こした周囲の経穴(ツボ)に鍼を行い、筋肉や神経の興奮と緊張を抑え鎮痛をはかります。(図2) 内出血や腫れがひどい時は、その表面に皮内鍼(長さ3ミリ程度の鍼を皮内に1ミリくらい留置する)を行い、滲出物の吸収と持続的な鎮痛効果をはかります。 冷却期が過ぎてからは血行を良くし、受傷部の機能の修復と競技復帰を早めるために治療を行います。そのため、低周波のパルス波を流すことも効果的ですし、温灸(灸痕が残らないあたたかいお灸)を行うこともあります。 肉ばなれは特に再発の危険性が高いケガです。予防のため、さらにはスポーツマンとして日頃から疲労をためず良いコンディショニングを保つため鍼灸を利用してください。
FAQ(Frequently Asked Question) |
(Q)鍼でエイズなどの感染症がうつらないのでしょうか? (A)最近このような質問をよく耳にするようになってきました。ご心配はごもっともだと思います。当院で治療に使用している鍼はディスポーザブル(使い捨て)です。さらにバスタオル・シーツ類も患者さんごとに交換していますのでご安心ください。なお、他の鍼灸院でもオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で消毒するなどエイズより感染力の強いB型肝炎ウイルスに対応できるよう処理しています。どの鍼灸院でも安心して治療を受けてください。 |