本研究の最終的な目標は、1940年代における中国語圏諸地域での文学表現の複数性を、その具体性にのっとって明らかにすることにある。
具体的には、1940年代における「地域」、「メディア」、「(文学)制度」という三つの大テーマを柱として、文学活動の地域的な多様性(例えば大陸における“解放区”“大後方”“淪陥区”、香港、台湾、シンガポール、マレーシアなど)や、作品媒体の多様性(小新聞、専門誌、レコード、映画、劇場、演劇場など)、また文学を成立させる「制度」の複雑性(文体や文体受容、〔読者層〕の変遷、文学空間の変化、文化接触の動向など)について整理し、その上で相互の関係性を明らかにする。
総じて、これまで政治体制や地域によって括られ、その枠内で価値付けられてきた1940年代文学を、中華圏という新しい大枠を設定して、広い視野の元で、複数の「関係性」としてとらえなおす視点を提示する。