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 研究会成立までの経緯


 本研究は中国現代文学研究の分野においては大規模の総合的共同研究である。

 本研究会のメンバーは、全員が所属し、それぞれの日常的な研究の拠点としている中国文芸研究会の、毎月開催される例会に参加し、主としてここで1940年代文学の重要性を認め、2006年秋に、一次資料の検討や周辺分野の研究動向に関する情報交換、さらにそれぞれに固有の研究対象を持ち寄ることなどを話し合い研究部会を計画した。以後数回の準備会議を持ち、既に2007年度より「1940年代文学漂泊研究会」を組織しており、この人間関係が今回の応募の母体となった。


 これまで日本において本研究の対象領域に関するいくつかの先行的研究が存在している。

 例えば、山田敬三編『十五年戦争と文学 日中近代文学の比較研究』1991、宇多禮ほか編『中国現代文学を読む 四十年代文学の検証』1994など。また個人研究としては阪口直樹『十五年戦早期の中国文学 国民党系文学潮流の視角から』1996がある。これらはいずれも1940年代文学研究の重要性や可能性を示す成果であるととらえている。

 また本研究会メンバーのうち、5人が編集執筆に関わった成果として『中国二〇世紀文学を学ぶ人のために』2003がある。これは研究対象の裾野が二〇世紀全体と大きく、また一般の読者を対象とした記述であるが、確実に本研究の発想と構成を支える原点となっている。成員おのおのの研究対象と着想の広がりはさまざまな角度から相互に共有されうる部分が大きく、今回の応募テーマは、中国文芸研究会を中心とするここ30年あまりの日本における中国現代文学研究の蓄積と人的ネットワークの中からごく自然に、また必然的に導き出されたテーマであると言える。

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