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横溝正史さんの本の書評

 

横溝正史 (よこみぞせいし)

 
(プロフィール)
1902年、神戸市に生まれる。旧制大阪薬専卒。
1926年、博文館に入社。「新青年」「探偵小説」の編集長を歴任し1932年に退社後、文筆活動に入る。
信州で の療養、岡山での疎開生活を経て、戦後は探偵小説専門誌「宝石」に、『本陣殺人事件』(第1回探偵作家クラブ賞長篇賞)、『獄門島』、『悪魔の手毬唄』などの名作を次々と発表。
1976年、映画「犬神家の一族」で爆発的横溝ブームが到来。
1981年、永眠。
 
【金田一耕助シリーズ】
本陣殺人事件  八つ墓村  犬神家の一族  女王蜂  悪魔が来たりて笛を吹く  三つ首塔  悪魔の手毬唄  獄門島
 
  
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本陣殺人事件

本陣殺人事件

おススメ度:(5点満点)

本体価格:640円
発行所  :角川文庫
発行日  :1973年4月30日
形態   :文庫・414ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説

目次
本陣殺人事件
車井戸はなぜ軋る
黒猫亭事件
 内容
 第1回探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)長編賞受賞。
本陣殺人事件
 昭和初期の岡山県の片田舎で、かつて本陣として栄えた一柳家当主が結婚式を挙げた。 しかし婚礼の夜、新郎新婦は無残な惨殺死体となって発見された。殺人現場は完全な密室。 金田一耕助はこの密室殺人事件の謎に挑む。金田一耕助の初登場作品。
その他、車井戸はなぜ軋る黒猫亭事件の二篇の短篇を収録。

 感想
 金田一耕助が初登場するというエポックメイキング的な作品である。今の世の中の乱れきった感覚では本陣殺人事件の起こる動機というものはうかがい知れない。 昭和初期の人びとの考え方、風習が理解できるという意味でも良作であると思う。 もちろんミステリーとしても、密室殺人の謎、殺人の動機の推理、犯人は誰なのか、と数多くの謎が仕掛けられており、しかもその謎は簡単に看破されるような薄っぺらいものではない。
 あとの二つの短篇も、ミステリーの王道に対し、一ひねりを加えたものであり、読み応えがあった。
(書評作成:2007年4月7日) 
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八つ墓村

八つ墓村

おススメ度:(5点満点)

本体価格:743円(税別)
発行所  :角川文庫
発行日  :1971年4月30日
形態   :文庫・494ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説

目次
発端
第一章 尋ね人
第二章 疑惑の人
第三章 八つ墓明神
第四章 四番目の犠牲者
第五章 鎧の中
第六章 春代の激情
第七章 木霊の辻の恐怖
第八章 絶体絶命
大団円
 内容
 戦国の頃、三千両の黄金を携えた8人の落ち武者が岡山県のとある村に落ちのびた。 しかし、金に目の眩んだ村人たちにより8人は惨殺されてしまう。 その後不祥の怪異があい次ぎ、半年後、落人殺害の首謀者、田治見庄左衛門が家族・村人を切り殺し、自らの首をはねて死ぬという事件が起こった。 村人は落武者の怨念を恐れ、八つの墓をたて、明神として祟めることにした。 以来、この村は“八つ墓村”と呼ばれるようになった。
 その後大正の時代になり、田治見庄左衛門の子孫、田治見要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となる。
  さらにそれから二十数年、謎の連続殺人事件が再びこの村を襲った。

 感想
 映画などであまりにも有名な本作品である。 映画などでは金田一耕助の活躍が描かれているが、本作では金田一はあくまでも脇役に過ぎず、ほとんど登場しない。
 話は、事件に巻き込まれた主人公の目を通した部分だけで進行していく、という非常に変わった形式をとっている。 当然、警察や探偵というものの立場ではないので、事件の真相に触れることは困難であるが、それでも問題なく話は進展していく。
 著者の筆力を見せ付けられた気がした。 映画などに負けず劣らずの秀作であると思う。
(書評作成:2010年11月6日)
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犬神家の一族

犬神家の一族

おススメ度:(5点満点)

本体価格:640円
発行所  :角川文庫
発行日  :1972年6月10日
形態   :文庫・416ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 信州財界一の犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛が死去した。 彼は一族が血で血を争うような葛藤を生む条件を課した遺言状を残していた。 そしてその遺言状の内容をめぐり連続殺人事件が起こる。

 感想
 横溝正史の金田一シリーズ(古谷一行のシリーズ)はテレビで何度も見ているが、小説を読んだのははじめてであった。 今から35年前に発刊されているのも関わらず、全く飽きることなく楽しめた。
 話の節々にトリックが仕掛けられているが、それらがすべてムダに描かれていることなくすべてが結末に向かっての伏線として配置されている。 まさに推理小説の一級品である。最近の推理小説は兎角マニアックなトリックに懲りがちであるが、本作品のストレートなトリックの前にはかすんでしまう感がある。
 他の金田一シリーズも読んでみたいと思わせる内容であった。
(書評作成:2007年3月12日) 
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女王蜂

女王蜂

おススメ度:(5点満点)

本体価格:705円(税別)
発行所  :角川文庫
発行日  :1973年10月20日
形態   :文庫・464ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説

目次
第一章 月琴島
第二章 開かずの間
第三章 役者は揃った
第四章 第二の死体
第五章 歌舞伎座への招待
第六章 紅いチョコレート
第七章 寸劇
第八章 伏魔殿の惨劇
第九章 耕助開かずの間へ入る
大団円
 内容
 伊豆半島の南方にある月琴島に絶世の美女・大道寺智子が住んでいた。 彼女は18歳になると、義理の父のいる東京に引き取られることになっていた。 東京に引き取られる直前になり、彼女の周りで事件が起こることをほのめかす脅迫状が舞い込んだ。 この脅迫状には大道寺智子の出生に絡む19年前におきた事件が関係していた。
 金田一は智子の護衛の依頼を受けるが、彼の周辺で脅迫状どおりの惨劇が起きていく。

 感想
 殺人事件が起こり、金田一が事件の解決を行うというのは他の作品と同様であるが、ミステリーとしては事件のトリックの深みがイマイチである。 ミステリーとして読むとおそらくは期待はずれと感じてしまうであろう。
 本書の楽しみは、ドロドロの愛憎劇。 ゴシップだらけの人間ドラマとして読むのが適当であろう。 この小説では登場人物の個性が非常に重要となっていて、登場人物については非常に丁寧に記載されているのは好ましいと感じた。
(書評作成:2011年10月23日)
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悪魔が来たりて笛を吹く

悪魔が来たりて笛を吹く

おススメ度:(5点満点)

本体価格:705円(税別)
発行所  :角川文庫
発行日  :1973年2月20日
形態   :文庫・464ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 青酸カリを使った天銀堂事件の事件の容疑者とされていた椿元子爵が姿を消した。 椿元子爵の遺体は発見されたのであるが、娘美禰子は父の姿を見たとおびえる母を落ち着かせるため、金田一に調査を依頼する。 金田一が椿家を訪問した夜、どこからともなく聞こえる「悪魔が来りて笛を吹」というフルート曲の音色とともに、殺人事件が発生した。 そしてその後も、椿家では次々と殺人事件が発生する。

 感想
 テレビドラマで何度か本作品は見ていたが、改めて小説で読んでみると細部までよく理解できた。
 金田一シリーズは大きく分けて、金田一自身が事件解決に対して奔走するものと、金田一以外の人物が事件について調査し最後に金田一自身により総括されるもの、に分けられるが、本作品は前者に当たる。 私自身は前者の構成のほうが好きである。
 また金田一シリーズでもミステリー色が強いものとそうでないものがあるが、本作品は前者である。
戦後日本に起こった事件を題材にしながらも、エンターテイメント性を持たせた本作品は傑作と呼ぶべきものであると思う。
(書評作成:2012年9月30日)
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三つ首塔

三つ首塔

おススメ度:(5点満点)

本体価格:640円
発行所  :角川文庫
発行日  :1972年8月30日
形態   :文庫・348ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説
 内容
 謎の男との結婚を条件に100億円の遺産相続を持ちかけられた宮本音禰。 しかし彼女の周りで遺産相続に関係する人たちが次々と変死を遂げていく。

 感想
 金田一耕助のシリーズであるが、金田一は本篇にはほとんど登場しない。 本篇は宮本音禰野の周辺に起こる事件を宮本音禰の視点に立って描くという手法をとっている。 このため事件の謎は最後まで見えてこない。 最後に金田一が登場してすべての謎が解き明かされるので、最後にはすっきりとするが。
 本篇はミステリーとしても楽しめるが、それよりもどろどろした人間関係に主眼を置いて描かれている。 推理とメロドラマの融合が試みられているということであり、その点では作者の狙い通りに楽しめた。
(書評作成:2008年3月9日)
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悪魔の手毬唄

悪魔の手毬唄

おススメ度:(5点満点)

本体価格:705円(税別)
発行所  :角川文庫
発行日  :1971年7月10日
形態   :文庫・480ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説

目次
プロローグ 鬼首村手毬唄考
第一部 一羽のすずめのいうことにゃ
第二部 二番目のすずめのいうことにゃ
第三部 三番目のすずめのいうことにゃ
エピローグ ちょっと一貫貸しました
 内容
 岡山県の鬼首村に旅行に出かけていた金田一耕助は、そこでその村に伝わる古い手毬唄の歌詞通りに殺人が行われる連続殺人事件に遭遇する。 金田一は事件の謎の解明に当たるが、そこには20数年前に鬼首村で起こった迷宮入りした殺人事件が関係していた。

 感想
 何度かテレビドラマでも見たことがあるストーリーであるが、再度小説を読んでみようと思い本書を手に取った。 手毬唄にそって殺人が行われていくということで、次は誰が殺されるんだろうかということは大体分かってしまう。 これは読者にあらかじめネタをばらしているということで、ミステリー小説にしてはすごく大きな冒険であったと思う。 当然のごとく途中にはいろんな謎や偶然がちりばめられているけれども。
 本書はミステリーとして読むと謎解きの要素があまり無くて消化不良に感じるかもしれない。 ただし横溝氏の小説のもうひとつのテーマである人間ドラマとして読んでいくと、悲しい物語があり楽しむことができた。
(書評作成:2011年10月23日)
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獄門島

獄門島

おススメ度:(5点満点)

本体価格:552円(税別)
発行所  :角川文庫
発行日  :1971年3月30日
形態   :文庫・353ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化・ドラマ化された小説

目次
プロローグ 金田一耕助島へいく
第一章 ゴードンの三姉妹
第二章 にしき蛇のように
第三章 発句屏風
第四章 吊り鐘の力学
第五章 お小夜聖天
第六章 夜はすべての猫が灰色に見える
第七章 見落としていた断片
エピローグ 金田一耕助島を去る
 内容
 金田一耕助は戦友の遺言を携えて瀬戸内海に浮かぶ獄門島を音連れた。その遺言というのは、「三人の妹たちが殺される、おれの代わりに獄門島へ行ってくれ」という奇妙かつ恐ろしいものであった。
 金田一は獄門島で戦友の言う美しい三人の姉妹に出会うのであるが、金田一の奮闘むなしく遺言どおりの連続殺人事件が起こってしまう。

 感想
 今回のストーリーはかなりミステリー色が強く、結構頭を使わされた。本格ミステリーの名に恥じぬ物語であると思う。巧妙な伏線、巧妙なトリックがいくつにも張り巡らされており、最後にいたるまでストーリー展開にわくわくさせられた。
 この物語でも重要となるのは、戦争と前後する閉鎖的な日本の風習である。現在の比較的オープンな日本の感覚で、本書の事件の動機を考えるとおそらくは理解できないであろうと思われる。動機などに古臭さは残るが、日本の古き時代の風習、慣習を考えながら、読みすすめるとむしろ古臭さはなく、新鮮な感覚を覚えることができると思う。
 最近の謎解きに主眼を置きがちなミステリーとは一味違う、動機という側面に焦点を当てたミステリーを読んでみたいという方におすすめである。
(書評作成:2013年4月7日)
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