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野沢 尚さんの本の書評

 

野沢 尚 (のざわ ひさし)

 
(プロフィール)
1960年愛知県名古屋市生まれ。日本大学芸術学部映画科卒業。
1983年第9回城戸賞受賞。1985年テレビドラマ「殺して、あなた」で脚本家デビュー。以後テレビ、映画で活躍。
1997年『破線のマリス』で第43回江戸川乱歩賞受賞。同年『恋愛時代』で第4回島清恋愛文学賞受賞、2001年「深紅」で第22回吉川英治文学新人賞を受賞。
 
破線のマリス  リミット  眠れぬ夜を抱いて  深紅
 
  
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破線のマリス

破線のマリス

おススメ度:(5点満点)

本体価格:619円(税別)
発行所  :講談社文庫
発行日  :2000年7月15日
形態   :文庫・391ページ

ジャンル:ミステリー小説、映画化された小説
 内容
 江戸川乱歩賞受賞作品。
 人気ニュース番組「ナイン・トゥ・テン」の映像編集を担当する遠藤瑤子は自らの信念に基づいて編集した映像により人気を博する。 そんな彼女の元に郵政省の内部告発を映し出したVTRが届けられる。 そのVTRを元に番組の映像を構成するが、そこにはある罠が隠されていた。

 感想
 テレビの脚本家である著者の作品であり、テレビの内情の描写は真実味を感じさせられる。 一人の人間の意志による映像編集により一人の人間の生活が破壊される危うさ、報道の自由と個人のプライバシーの関係、について考えさせられた。 現在の情報社会において情報を鵜呑みにしがちな現代人に対する警鐘を鳴らしているようにも感じられる。
 ただ本作品をミステリーとして考えると、ミステリーの大前提である事件の謎が結局解決しないまま終わってしまう点など若干の不備は見られる。
 なお「破線のマリス」のマリスは報道の作り手の意図的な作為・悪意、破線はテレビの画面の走査線の意味であり、表題はテレビの送り側の情報操作、ヤラセといった意味になる。
(書評作成:2005年3月12日)
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リミット

リミット

おススメ度:(5点満点)

本体価格:762円(税別)
発行所  :講談社文庫
発行日  :2001年6月15日
形態   :文庫・523ページ

ジャンル:ミステリー小説、サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説
 内容
 幼児誘拐事件を担当することとなった警視庁捜査一課・特殊犯捜査係勤務の有働公子。 彼女の携帯電話に犯人から彼女の息子を誘拐したとの電話が入る。 彼女は息子を助けるため、警察組織を裏切ることとなる。 彼女は息子救出のために幼児誘拐事件について孤独な調査を強いられるが、その背景には恐るべき計画が潜んでいることを知る。

 感想
 実に多くのテーマが贅沢にちりばめられた小説である。 前半は連続幼児誘拐事件に背景にある邪悪な人間心理の描写。 中盤は警察における組織の縄張り争い(確執)と「ダイ・ハード」のマクレーンさながらの有働公子のアクション。 そして終盤は次々と仕掛けられてくるミステリーと驚愕のラストシーン。 ページ数も500ページ強とボリュームもあったが、手に汗握る展開で実に読み応えがあった。
 連続幼児誘拐事件については子供を持つ親の立場としては読むのがつらくなるほど身につまされる描写である。 また有働公子のアクションにおいてはマクレーンさながらと書いたが、決定的な違いは有働公子はか弱い女性であるということ。 しかも喘息というハンデまで背負っている。 これでは彼女を応援せずにはいられない。 更には驚愕のラストシーン。 まさかこんな結末が用意されていたとは全く予想できなかった。
 多くの点で楽しめるので本書は間違いなくオススメの本といえよう。
(書評作成:2007年5月21日)
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眠れぬ夜を抱いて

眠れぬ夜を抱いて

おススメ度:(5点満点)

本体価格:686円(税別)
発行所  :幻冬舎文庫
発行日  :2002年4月25日
形態   :文庫・494ページ

ジャンル:ミステリー小説、ドラマ化された小説

ジャンル
プロローグ 1990.7.4
第一章 遥か群衆を離れて
第二章 扉がふるえる夜
第三章 収穫祭
第四章 放熱の瞬間
終章 彼方へ
 内容
 夫が自らの理想を実現するために開発した郊外の新興住宅地。そこで立て続けに2件の一家失踪事件が発生した。 マスコミや世論からバッシングを受ける夫を助けるため妻が一家失踪事件について独自の調査を始めるのである。 その事件の背後には、1990年にアメリカで起こったある事件が関係していた。

 感想
 ページ数が多く、非常に読み応えがあったが飽きることなく一気に読み進むことができた。 ドラマを見てから本書を読んだので、ドラマの登場人物や情景が頭に浮かんできて楽しめた。
 様々な謎が絡み合って最後まで退屈させることがない構成は、さすがTVの脚本家と唸らされる。 謎が解明されていく過程で多少「ご都合主義的」な部分が出てくるが、充分許容できる範囲である。 小説はドラマとエンディングが少し異なるが、私はドラマのエンディングのほうが好ましいと思った。
 TVで見過ごした、あるいはTVではカットされた部分が再認識できるので、ドラマを見た人も対しても本書はオススメである。
(書評作成:2005年1月9日)
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深紅

深紅

おススメ度:(5点満点)

本体価格:695円(税別)
発行所  :講談社
発行日  :2003年12月15日
形態   :文庫・454ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、映画化された小説
 内容
 第22回吉川英治文学新人賞受賞作品。
 家族を惨殺され、たった一人生き残った小学生の奏子。 彼女は心に深い傷を負いながら大学生に成長する。 加害者の男性には自分と同い年の娘がいること、その娘も自分と同じ心の傷を背負っていることを知る。 奏子は正体を隠してその女性に接触し、親交をはかる。

 感想
 1章では奏子の視点から、2章では加害者の男性の視点から一家惨殺事件の状況、事件が起こる背景について述べられている。 その被害者、加害者の視点の対比から、殺人事件は決して一方だけに責任があるのではないということが考えさせられる。 3章以後は被害者、加害者のそれぞれの生き残りの娘の親交について語られている。 前半の1章、2章の衝撃的な内容、記述からするときわめて地味な内容である。 ただ主人公の奏子の心理の微妙な揺れがうまく表現されていた。
 エンディングは少しすっきりしないと感じたのは残念であるが、1・2章における一家惨殺事件を被害者・加害者のそれぞれの視点から対比した記述、3章以後の奏子の微妙な心理の変化を詳細に描いた記述を読むだけでも、一読の価値はあると思う。
(書評作成:2006年7月2日)
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