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乃南アサさんの本の書評

 

乃南アサ (のなみ あさ)

 
(プロフィール)
1960年、東京生まれ。
1988年、「幸福な朝食」が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。
1996年、「凍える牙」で第115回直木賞を受賞。
 
幸福な朝食  凍える牙      不発弾  花散る頃の殺人
 
  
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幸福な朝食

幸福な朝食

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税
発行所  :新潮文庫
発行日  :1988年10月1日
形態   :文庫・307ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド
 内容
 日本推理サスペンス大賞優秀作。
 主人公・志穂子はその美貌から女優を目指すが、一足先に自分と瓜二つのアイドル歌手がデビューしてしまい、その夢が潰えてしまう。 ふとしたことからできた自分の子供を堕胎しても女優を目指すがついにその夢はかなわなかった。 芸能界にしがみついたい彼女はそれから10数年後においても人形使いとして芸能界に居座り続けるが、周りの女性がどんどん幸せになるのを見てさびしさから徐々に精神に破綻をきたしていく。

 感想
 乃南さんのデビュー作であるとのことで読んだが、可もなく不可もなくあまり印象に残らない内容か、というのが正直な感想である。
 主人公の女性の心理が徐々に変化(破綻)していく様子はうまく描かれているが、その過程を描くのにあまりにも多大なページが割かれており、中だるみがして読んでいてかなり退屈であった。 話の終盤に向かって話は徐々に盛り上がっていき最終章の1つ手前の章では話が急展開して結構楽しめたが、最終章ではかなり尻すぼみの印象を受けた。 40ページくらいの短篇であれば中だるみすることなくまた違ったかなりの好印象であったと思う。
(書評作成:2005年6月25日)
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凍える牙

凍える牙

おススメ度:(5点満点)

本体価格:705円+税
発行所  :新潮文庫
発行日  :1996年2月1日
形態   :文庫・520ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド
 内容
 直木賞受賞作品。
 深夜のファミリーレストランで突然男の体が発火し、ビルが炎上する事件が発生した。 また男の体には獣のかみ傷が残されていた。 警視庁の女性刑事・音道貴子は相棒の刑事・滝沢と捜査を行うことになる。 捜査の最中、獣にかみ殺される事件は続発する。 そのかみ傷は焼死した男に残されていた傷と一致した。

 感想
 直木賞受賞作品ということもあり、非常に面白い内容となっている。 内容は事件の謎に迫るミステリーの側面と、典型的な女性蔑視の男社会のなかで白い目で見られ続ける音道貴子の奮闘を描くヒューマンドラマの側面が描かれており、それらがうまくミックスされた内容となっている。 500ページを越える長篇でありながら、話がスピーディであり一気に読みきってしまった。
 本書とは全く関係ないが、今回読んだ本の末尾では安原顯氏が解説を書いている。 その内容はあまりにも偏った内容でありかなりの嫌悪感を持ってしまった。 小説の内容がすばらしかっただけに解説を読んだ際の後味の悪さが際立ってしまった。
(書評作成:2005年6月25日)
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鍵

おススメ度:(5点満点)

本体価格:552円+税
発行所  :講談社文庫
発行日  :1996年12月15日
形態   :文庫・318ページ

ジャンル:ミステリー小説
 内容
 数学の先生の長女・秀子、フリーターの長男・俊太郎、耳に障害を持つ女子高生の次女・麻里子の兄弟は相次いで両親を失う。 そんなショックから俊太郎と麻里子の間に溝ができてしまう。 そんなある日、電車の中で麻里子の鞄に知らぬ間に鍵が押し込められるちょっとした事件が起こる。
 それから数日後、彼らの近所で連続通り魔事件が起こる。さらにその通り魔事件は殺人事件にまで発展した。

 感想
 ミステリー小説に分類しているが、本作のテーマは家族愛。 気持ちのちょっとしたすれ違いが兄妹間の葛藤を生み、一つの事件をきっかけとして関係を修復していくさまを描いている。 通り魔事件や殺人事件は、あくまでも兄妹間の葛藤と関係修復を彩るサブイベントに過ぎない。 とはいっても何重にも張り巡らされた謎は充分に楽しむことができる。 話の展開もスピーディーで一気に読みきってしまった。
 本作品の兄妹を主人公とした続編「」も読んでみたいと思わせる出来であった。
(書評作成:2006年12月27日)
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窓

おススメ度:(5点満点)

本体価格:552円+税
発行所  :講談社文庫
発行日  :1999年7月15日
形態   :文庫・318ページ

ジャンル:ミステリー小説
 内容
 「」の続編的な位置づけのミステリー小説。
 耳に障害を持つ女子高生の麻里子は、障害のために制限される自らの進路に対して、苛立ちを持っていた。 そんな折、毒入りジュース事件が発生し、自分と同じ障害を持つ男子高校生が事件の関係者として疑われていることを知る。 少年の境遇に関心を抱いた麻里子は彼への接触を試みる。

 感想
 毒入りジュース事件がやがては殺人事件に発展するというミステリーの王道のようなストーリー展開であるが、変わっているのは小説の冒頭から犯人が登場し、誰かが分かっているということ。 つまり純粋なミステリー小説ではなく、前編の「鍵」同様に、本書の主題は障害を持つ麻里子の成長であり、事件は彼女が成長していく様を彩るサブイベントである。
 「」でしっかりと成長したかに見えた麻里子は本書の冒頭では小さなことに対しても苛立ちを見せる子供っぽい部分が強調されている。 その後、不安定な心理状態を経てやがては自らの進路を自分で決めるまでに成長していく。 つまりはミステリー要素を含んだ家族団らん系の小説である。 とは言うものの事件の部分も面白く、しかもその展開はスピーディーであるので一気に読みきってしまった。
(書評作成:2007年1月8日)
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不発弾

不発弾

おススメ度:(5点満点)

本体価格:495円+税
発行所  :講談社
発行日  :2002年1月15日
形態   :文庫・264ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
かくし味
夜明け前の道
夕立
福の神
不発弾
幽霊
 内容
 ミステリー系、人情系の短篇小説6篇。
かくし味
 少しさびれた小料理屋での話し。 行列お断りの常連だけを相手にするため、主人公・糸田はなかなか入店できなかったが、ある日ついに入店でき、その店の名物の煮込み料理の虜になる。 その料理に隠された「かくし味」の秘密は・・・
夜明け前の道
 一度はビジネスで成功しながら、ある事件をきっかけにすべてを失い、タクシー運転手となる主人公。 そんな彼の元に厄介な客が現れる。
夕立
 主人公の女子高生・千紗は通学電車で痴漢に会い、その男を告発する。 その男は中学の教頭であった。 しかし痴漢は彼女たちの罠であった。追い込まれていく男・・・
福の神
 小料理屋「茜」を営む主人公の妙子。そんな彼女の店には、周囲を不愉快にする「疫病神」の常連客がいた。 その男を中心とした「茜」で繰り広げられる人情劇。
不発弾
 デパート勤務でマイホームパパの主人公・的場。幸せな家族を築くため仕事に耐える的場であるが、徐々に自分から家族が離れていくのに気づく。 徐々に不満という「不発弾」を抱えていく的場・・・
幽霊
 テレビ業界で花形プロデューサであった主人公・津久井。ある事件をきっかけに左遷され、誰からも声をかけられずなかば「幽霊」状態となる。そんな彼の前に、以前仕事で世話になったという男が現れる。

 感想
 私にとって乃南ミサの小説はこれが始めてである。短篇集であり話のテンポが速いが、シナリオはしっかりとしており、一気に読みきってしまった。
 日常生活でありがちな状況を題材としており、話の情景が頭に思い浮かべやすい。 特に「不発弾」はサラリーマンをやっている身としては自分にも起こりそうな設定であり、思わずなるほどと唸らされてしまう内容であり、明日はわが身かも考えさせられた。 この「不発弾」をはじめ、「福の神」、「幽霊」が特に面白かった。また彼女の小説を読んでみたいと思わせる内容であった。
(書評作成:2005年2月14日)
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花散る頃の殺人

花散る頃の殺人

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税
発行所  :新潮文庫
発行日  :1999年8月1日
形態   :文庫・313ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
あなたの匂い
冬の軋み
花散る頃の殺人
長夜
茶碗酒
雛の夜
特別巻末付録 滝沢刑事・乃南アサ架空対談
 内容
  「凍える牙」の女刑事・音道貴子を主人公にした、6編の短編集。
音道自身がゴミ漁りストーカーに狙われて、気味悪い日々を過ごす「あなたの匂い」、ビジネスホテルで無理心中を図った老夫婦の悲しい人生を描く表題の「花散る頃の殺人」、など。

 感想
 「凍える牙」において、すごく魅力的に描かれていた女刑事・音道貴子を再度描いているとあって、期待して読んだのであるが・・・期待はずれであった。 ストーリーとしては日常のちょっとした事件が深掘りされていて、まあまあ面白かった。
 ただし、「凍える牙」で女刑事であるが故の苦悩と戦っていた音道貴子の魅力が一切感じられない。 わざわざ再登板させる必然性が感じられなかった。
 小説的には面白いが、せっかくのキャラクターの魅力を損なってしまった点はいただけない。
(書評作成:2012年9月30日)
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