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海堂 尊さんの本の書評

 

海堂 尊 (かいどう たける)

 
(プロフィール)
1961年生まれ、千葉県出身。
医師、作家。
千葉大学医学部卒、同大学院医学系研究科博士課程修了。
第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞、『チーム・バチスタの栄光』にて2006年デビュー。
 
【東城大学シリーズ】 
チーム・バチスタの栄光  ナイチンゲールの沈黙  ジェネラル・ルージュの凱旋  イノセント・ゲリラの祝祭
【海堂シリーズ現代篇】
ブラックペアン1988  ジーン・ワルツ
【極北篇】
極北クレイマー
【その他】
螺鈿迷宮
 
  
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チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税(上・下とも)
発行所  :宝島社
発行日  :2007年11月26日
形態   :文庫・237ページ(上)、269ページ(下))

ジャンル:ミステリー小説、ドラマ化・映画化された小説

目次
第一部 ネガ ゆりかご
第二部 ポジ 白い棺
第三部 ホログラフ 幻想の城
 内容
 東城大学医学部付属病院の”チーム・バチスタ”はバチスタ手術で驚異の手術成功率を誇る天才外科チームである。 しかし、そんなチームで手術中の連続死が発生する。
 病院長の高階はその調査を不定愁訴外来の田口医師に依頼する。 しかし田口の前でまたもや術中死が発生する。 八方塞となったところに、厚生労働省の変人役人・白鳥が現れる。 白鳥の突拍子もない調査により、徐々に事件の真相が明らかとなってきた。

 感想
 『このミステリーがすごい!』大賞においてわずか数十秒で大賞に選ばれたという逸話のある本である。 その後も映画化、ドラマ化され評判になったということで、遅ればせながらも本書を読んでみた。
 評判どおり非常に秀逸な小説であると思った。 ミステリーとしても非常に楽しめたし、何より登場人物のキャラクターが魅力的である。
 スピーディーなストーリー展開であり、読み始めると手が止まらなかった。 医療系の小説は数多くあるが、それらの中でも本書のできは群を抜いていると思う。
(書評作成:2012年6月17日)
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ナイチンゲールの沈黙

ナイチンゲールの沈黙

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税(上・下とも)
発行所  :宝島社
発行日  :2008年9月19日
形態   :文庫・299ページ(上)、301ページ(下)

ジャンル:ミステリー小説、ドラマ化された小説

目次
第一部 天窓の迦陵頻迦
第二部 ナイチンゲール・ラプソディー
 内容
 抜群の歌唱力を誇る浜田小夜は、東城大学付属病院における小児科病棟の看護師である。 彼女が主に受け持つのは、目の癌である網膜芽腫の子供たちである。
 眼球の摘出しか治療法がない子供たちに心を痛めた浜田は、心のケアとして不定愁訴外来の田口医師に依頼した。 そんな最中、患者の一人の父親が惨殺される事件が発生した。
 田口は再び、厚生労働省の変人役人・白鳥とともに事件の謎について追うこととなった。

 感想
 今回の作品においても、登場人物のキャラクターは本当に魅力的である。 今回の作品では、警察庁から出向してきた加納警視正が新たな登場人物として加わっている。
 前作「チーム・バチスタの栄光」はとことんリアリティにこだわっているのに対し、本作ではちょっとSF的な要素が加わっている。 それに対しては、賛否両論があったと聞くが、個人的には多少の違和感はあったものの、十分に楽しむことができた。
 本書もスピーディーなストーリー展開が魅力のひとつであり、読み始めると読む手を止められなかった。
(書評作成:2012年6月17日)
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ジェネラル・ルージュの凱旋

ジェネラル・ルージュの凱旋

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税(上・下とも)
発行所  :宝島社
発行日  :2009年1月22日
形態   :文庫・251ページ(上)、254ページ(下)

ジャンル:ミステリー小説、ドラマ化・映画化された小説

ジャンル
第一部 潜航
第二部 戴冠
 内容
 「ナイチンゲールの沈黙」と同時期、東城大学医学部付属病院の不定愁訴外来の田口医師野本に、匿名の告発文書が届いた。 その内容は、救命救急センター部長の速水晃一が、特定の業者と癒着しているというものであった。 田口は高階病院長の命を受け、その事実関係の確認に奔走する。

 感想
 本作は、前2作とは異なり特に大きな事件が発生するものではない。 この物語で取り上げられているのはいわゆる収賄事件であり、殺人などが絡んだ前2作に比べるとやや地味な感じがする。
しかし、様々な要素が複雑に絡み合い、手に汗握る展開が待ち構えている。
 海堂氏はこのシリーズの中で、現状の日本の医療における様々な問題点に対して問題提起をしているが、本作でも救命医療における問題点、特に事業(金儲けの手段)としての医療と人を助けるための医療の対立が赤裸々に語られている。 小説としても非常に面白かったが、医療現場における問題点の指摘についても考えさせられた。
(書評作成:2012年9月15日)
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イノセント・ゲリラの祝祭

イノセント・ゲリラの祝祭

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税(上・下とも)
発行所  :宝島社
発行日  :2010年1月22日
形態   :文庫・252ページ(上)、239ページ(下)

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
第一部 回廊の迷い人
第二部 イノセント・ゲリラの咆哮
 内容
 厚生労働省の白鳥圭輔から医療事故調査委員会への出席要請を受けた東城大学医学部付属病院の田口公平は、厚生労働省のある霞ヶ関に乗り込む。 そこで田口が見たものは崩壊の一途をたどる医療現場の現実であった。

 感想
 様々な医療用語、法律用語などが多数出るため、ちょっと読みすすめる上で難解な部分もあったが、それらを読み飛ばしても十分に話の面白さを理解することができる。
 ここで語られているのは、もちろんフィクションであるが、限りなくノンフィクションに近い、まさに今ある日本の医療現場の危機である。 医療と司法との対立、官公庁の自己防衛など、まさに日本の抱えている大きな闇の部分が語られている。 小説としても面白いが、医療現場の危機を知るという上でも非常に有益な小説であると思う。
 私がこの本で特に感銘を受けたのは、序章で語られている「賢人と街人」の寓話である。
(書評作成:2012年9月23日)
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ブラックペアン1988

ブラックペアン1988

おススメ度:(5点満点)

本体価格:419円+税(上・下とも)
発行所  :講談社
発行日  :2009年12月15日
形態   :文庫・204ページ(上)、206ページ(下)

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
序章 バブル・ピーク  1章 ストライカー五月
2章 ストレンジャー五月  3章 カンファレンス五月
4章 ビッグマウス五月  5章 ニューフェイス七月
6章 クラッシャー七月  7章 トラップ十月
8章 ミスファイヤー十月  9章 プレパレーション十一月
10章 ラストダンス十一月
 内容
 東城大学医学部付属病院の研修医となった世良雅志は、「神の手」を持つ佐伯教授が君臨する総合外科学教室に入局する。 そんな総合外科学教室に帝華大学から「ビッグマウス」・高階講師が否認してきた。 彼は食道癌の手術を画期的に行えるという新兵器「スナイプAZ1988」を引っ提げてきた。 彼は持ち前の「ビッグマウス」を遺憾なく発揮し手術の在り方、若手の育成などの面で周囲とぶつかり合っていく。
 そんな中、世良は高階やは「オペ室の悪魔」と呼ばれる万年ヒラ医局員の渡海とのかかわりを通じ、着実に医師として成長していく。

 感想
 「スナイプAZ1988」というデバイスがこのストーリーのひとつのキーとなるが、その姿をいまいち想像することができなかったのは残念であるが、その点を除けば割とリアリティのあるストーリーや、個性的な登場人物などが魅力的であり、楽しむことができた。
 特に他の海堂氏の物語に出てくる主要人物が登場しており、それら登場人物の過去の姿などをうかがい知ることができ、他の物語を読んでいるとさらに楽しむことができた。
 今回読んだ文庫は2巻に分けられているがそのトータルのページ数は400ページ強と少なく、ストーリーの面白さもあいまって一気に読みきってしまう。 1巻にまとめてしまって600円程度で販売してもよいのではないかと思った。
(書評作成:2013年8月15日)
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ジーン・ワルツ

ジーン・ワルツ

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税
発行所  :新潮社
発行日  :2008年7月1日
形態   :文庫・330ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、映画化された小説

目次
序章 遺伝子のワルツ  1章 減数分裂
2章 受胎告知  3章 エンブリオ
4章 心音覚知  5章 托卵の技術
6章 双角の魔女  7章 借り腹の論理
8章 妊娠の現実と蹉跌  9章 魔女vs.アルマジロ
10章 啓示  11章 最終講義
12章 悲母観音  13章 メディア・スター
14章 セント・マリアクリニック
 内容
 帝華大学で助教として勤務する曽根崎理恵は、大学での研究のほかに、閉院間近のマリアクリニックで5人の妊婦を診察していた。 いずれの妊婦もそれぞれが問題を抱えていた。
 そんな中、理恵の同僚の准教授・清川吾郎は理恵が代理母出産に手を出したという不穏な噂を聞きつける。

 感想
 フィクションでありながら、毎回医療現場における問題点について鋭い指摘をするのが、海堂さんの特徴であるが、今回の作品で取り上げられているのは産婦人科の問題である。 この作品で取り上げられているように、現在の日本では産婦人科をやめる病院が相次いでおり、非常に問題である。 政府は少子化を問題視しながらも、産婦人科の問題になんら対策をとらないというのは、まさに本末転倒な話であると思った。
 医療の話は置いておいて、本作品をエンターテイメント作品として考えた場合、設定の不自然さ、ご都合主義などが見えてきてちょっと残念であった。 主人公の曽根崎が仕掛けるトリックは果たしてそんなにうまくいくものなのか、ちょっとリアリティがないと感じさせられた。
(書評作成:2013年12月22日)
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極北クレイマー

極北クレイマー

おススメ度:(5点満点)

本体価格:480円+税(上・下とも)
発行所  :朝日文庫
発行日  :2011年3月30日
形態   :文庫・239ページ(上)、237ページ(下)

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
第一部 雪の奈落
第二部 極北の光
 内容
 財政難にあえぐ極北市民病院に、非常勤外科医として着任することとなった今中。 ただ彼を待ち構えていたのは財政難だけでなく、やる気のない職員、さらには”医療事故”であった。

 感想
 「イノセント・ゲリラの祝祭」と時を同じくして進行しているストーリーである。 取り扱われているテーマは同じで、医療現場の崩壊と医療と司法の関係である。 さらにはこちらのほうでは財政難にあえぐ地方医療というテーマも加わっている。
 巻末の「解説」で述べられていたのであるが本ストーリーは「フィクションがノンフィクションになってしまった」ということであり、これがいまの日本の医療の現場であるかと思うと非常に不安な気持ちにさせられる。 医療現場の問題提起をより分かりやすい小説という形で衆人に知らしめている著者の功績は大きいと思う。
 本ストーリーだけ読んでいると結末にいまいちスッキリ感がないが、これもいまの医療現場の混沌としている状況をよくあらわしていると思う。
(書評作成:2013年1月27日)
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螺鈿迷宮

螺鈿迷宮

おススメ度:(5点満点)

本体価格:476円+税(上・下とも)
発行所  :角川文庫
発行日  :2008年11月25日
形態   :文庫・222ページ(上)、233ページ(下)

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド
 内容
 東城大学と同じ桜宮市にある碧翠院桜宮病院は、終末医療の最先端設備として注目を集めていた。 東城大学の落ちこぼれ医学生・天馬大吉は幼なじみの記者・別宮葉子から、桜宮病院にボランティアとして潜入して内情を報告して欲しいという奇妙な依頼を受ける。 仕方なしに潜入した天馬であったが、患者が次々と不自然な死を遂げるという事態に遭遇する。

 感想
 今回の小説では、「死」に対する問題提起が行われている。 終末医療という言葉自身は何かの映画で診て知っていたが、その医療現場はいまの日本ではあまりにも冷遇されているということがよく分かった。
 これまでの著者の小説と同様に医療現場における問題点や「闇」が、小説という形で分かりやすく紹介されている。 小説として読む文には非常に面白いが、これが今の日本の医療現場の話かと思うと、楽しんでばかりいられない。
 本作品でちょっと残念だったのは、白鳥圭輔に言動にいまいち切れがなく、爽快感という部分では他の作品に対して見劣りがしてしまうという点である。
(書評作成:2013年1月27日)
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