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池井戸潤さんの本の書評

 

池井戸潤 (いけいど じゅん)

 
(プロフィール)
1963年岐阜県生まれ。慶応義塾大学卒。
98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞、2010年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、2011年『下町ロケット』で直木賞を受賞
 
【半沢直樹】 
オレたちバブル入行組  オレたち花のバブル組  ロスジェネの逆襲
【花咲舞】
銀行総務特命  不祥事
【下町ロケット】
下町ロケット
 
  
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オレたちバブル入行組

オレたちバブル入行組

おススメ度:(5点満点)

本体価格:657円+税
発行所  :文春文庫
発行日  :2007年12月10日
形態   :文庫・362ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説


目次
序章 就職戦線
第一章 無責任論
第二章 バブル入行組
第三章 コークス畑と庶務行員
第四章 非護送船団
第五章 黒花
第六章 銀行回路
第七章 水族館日和
終章 嘘と新型ネジ
 内容
 東京中央銀行大阪西支店の融資課長である半沢直樹は、支店長の浅野の命を受け西大阪スチールに対して5億円の融資の手続きをすすめた。 融資後、西大阪スチールの業績は急激に悪化、粉飾決算の疑いなどもあり倒産してしまった。 5億円の回収の見込みは薄く、行内で責任論の話が持ち上がるが、実質的に融資を進めた浅野はすべての責任を半沢になすりつけようとして奔走する。
 四面楚歌状態になった半沢は、同期入行の知人などの助けを借りながら、債権回収に奔走するとともに、自分を陥れたものたちへの”倍返し”の反逆に転じる。

 感想
 ドラマが非常に話題となっているということで、本書を手に取った。 とにかく面白く、痛快であり、一気に読みきってしまった。 会社という組織では、どうしても上への服従が絶対条件とされる中、自分と正義を信じ、たとえ上司であっても自らの信じるところに向かって突き進む半沢の行動は呼んでいても気持ちがよい。 ドラマも非常に好調であるが、それもひとえに今の現代社会ではなくなってしまった勧善懲悪のストーリーが貫かれているところにあると思う。
 半沢のような行動を取るということは実際の会社人生の中では難しいかもしれないが、このような心意気を持って仕事に取り組んでいきたいと思った。
(書評作成:2013年8月31日)
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オレたち花のバブル組

オレたち花のバブル組

おススメ度:(5点満点)

本体価格:657円+税
発行所  :文春文庫
発行日  :2010年12月10日
形態   :文庫・367ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説


目次
第一章 銀行入れ子構造
第二章 精神のコールタールな部分
第三章 金融庁検査対策
第四章 金融庁の嫌な奴
第五章 カレンダーと柱の釘
第六章 モアイの見た花
第七章 検査官と秘密の部屋
第八章 ディープスロートの憂鬱
 内容
 東京中央銀行の営業二部に異動した半沢直樹は、巨額損失を出した一族経営の老舗ホテル・伊勢島ホテルの再建を押し付けられる。 しかも今度は再建だけでなく、金融庁の検査をもしのがなければならない。 万が一、金融庁検査において”分類”という措置が下ると東京中央銀行に業績に対して深刻な影響が及ぶ可能性があった。
 一方、半沢と同期入社の近藤は銀行から中小企業への出向を命じられ、そこで執拗ないじめに苦しめられていた。 バブル期の同期入社の仲間はそれぞれに四面楚歌の状況に苦しめながらも活路を見出していく。

 感想
 前作の「オレたちバブル入行組」に比べるとスケールも、また面白さも上回っていて非常に楽しむ読み進めることができた。 見方も敵役もおのおのが独特の個性を発揮していているのがストーリーに深みを持たせている。 絶望的な状況に追い詰めながらも、一発逆転に向けてストーリーが進んでいくのは痛快そのものであった。 最後の最後まではらはらどきどきであった。
 一方最後のエンディングについては賛否両論あると思うが、次回作以後でのさらなる半沢の活躍が見れるかと思うと、このエンディングもありかと思った。
(書評作成:2013年10月26日)
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ロスジェネの逆襲

おススメ度:(5点満点)

本体価格:700円+税
発行所  :文春文庫
発行日  :2015年9月10日
形態   :文庫・421ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド

目次
第一章 椅子取りゲーム
第二章 奇襲攻撃
第三章 ホワイトナイト
第四章 舞台裏の道化師たち
第五章 コンゲーム
第六章 電脳人間の憂鬱
第七章 ガチンコ対決
第八章 伏兵の一撃
第九章 ロスジェネの逆襲
 内容
 東京中央銀行の子会社である東京セントラル証券に出向した半沢直樹のもとに、新興IT企業である電脳雑伎集団より同じく新興IT企業である東京スパイラルを買収したいという依頼が舞い込む。 この買収が成功すると東京セントラル証券には巨額の収益が見込まれたが、親会社である東京中央銀行により買収案件を横取りされてしまう。
 この買収劇の裏で、東京セントラル証券の内部事情が東京中央銀行側にリークしていたことを半沢は知る。 親会社に倍返しすべく、半沢は部下の森山とともに奮闘し、親会社と敵対する立場になるという奇策に打って出る。

 感想
 今回の舞台は企業買収劇である。出てくる言葉などと相まって、「フジテレビ買収劇」をほうふつとさせる内容であった。 今回の敵は、親会社であるという荒唐無稽な設定であったが、違和感なく受け入れることができた。
 詳しくは書かないが、途中まで圧倒的に不利な状況でありながらも、潮目が変わるのをうまくとらえ、一気に形勢逆転するのは前2作と同様であり、非常に痛快である。
 ちょっと残念だったのは、ロスジェネ世代とバブル世代の対立軸をもうちょっと描いてもよかったのではないかということ。 本作のテーマの一つが、親会社vs子会社の対立、さらにはバブル世代vsロスジェネ世代の対立、であるのでもう少し後者のほうの対立の深みを増してもよかったのではないかと感じた。
(書評作成:2016年1月31日)
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銀行総務特命

銀行総務特命

おススメ度:(5点満点)

本体価格:695円+税
発行所  :講談社
発行日  :2011年11月15日
形態   :文庫・429ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド


目次
漏洩  煉瓦のよう  官能銀行
灰の数だけ  ストーカー  特命対特命
遅延稟議  ペイオフの罠
 内容
 帝都銀行における行内の不祥事処理を一手に引き追うけるのが総務部企画グループの特命担当である。 その特命に持ち込まれるさまざまな事件を取り扱っている短編集である。
 特命に籍を置く指宿修平のもとに、顧客名簿流出、現役行員のAV出演疑惑、幹部の裏金づくりなど、銀行の根幹を揺るがしかねないスキャンダルが次々と持ち込まれる。 指宿は部下とともに、それらのスキャンダルに立ち向かう。

 感想
 半沢直樹とはキャラクターがまったく異なるが、指宿もまた正義感の塊として、銀行をよくしようと奮闘している姿が描かれており、非常に楽し句読むことができた。 銀行という閉ざされた空間の中で起こる小さな事件の数々が解決されていく様子は読んでいても痛快であった。
 短編集ということもあり、半沢直樹シリーズほどの話の広がり、スケールの大きさはない。 ただ短編集であるがゆえに話のテンポは非常によく、それが話の軽快さにつながっていると思った。
 特に面白く感じたのは、行員のAV出演疑惑を描いた”官能銀行”、さらには組織対組織の構図を描いた”特命対特命”である。
(書評作成:2014年4月8日)
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不祥事

不祥事

おススメ度:(5点満点)

本体価格:657円+税
発行所  :文春文庫
発行日  :2010年12月10日
形態   :文庫・367ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説

目次
激戦区  三番窓口  腐魚
主任検査官  荒磯の子  過払い
彼岸花  不祥事
 内容
 東京第一銀行本店事務部事務管理グループ調査役の相馬健とアシスタントの花咲舞が、支店の営業課の臨店指導を通して銀行に救う不祥事に立ち向かうというストーリーである。 一応は一話完結の短編集となっているが、すべてのストーリーがひとつの大きなストーリーを形成している。

 感想
 何より本作では登場人物のキャラクターがよいと思った。主人公となるのが有能だけれども突っ走りがちな花咲舞、そしてそんな花咲を支えるのがちょっと頼りなげだけれどもしっかりとしている上司の相馬。 そして彼らの敵となるのが、派閥という既得権益で銀行を支配しようとする執行役員の真藤。 半沢直樹のシリーズからするとちょっと小粒なキャラクターたちであるが、十分に魅力的に仕上がっていると思う。
 短編集ということで、一話一話が頭の中に入って来やすいのがよいと思う。 収録作品の中では、最後のどんでん返しが痛快な”腐魚”、”主任検査官”、”荒磯の子”、”不祥事”が特に面白いと思った。 ぜひとも続編を読んでみたいと思わせるキャラクターたちであった。
(書評作成:2014年4月8日)
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下町ロケット

おススメ度:(5点満点)

本体価格:720円+税
発行所  :小学館文庫
発行日  :2013年12月26日
形態   :文庫・493ページ

ジャンル:サスペンス・ハードボイルド、ドラマ化された小説

目次
第一章 カウントダウン
第二章 迷走スターダスト計画
第三章 下町ドリーム
第四章 揺れる心
第五章 佃プライド
第六章 品質の砦
第七章 リフト・オフ
 内容
 佃製作所を率いる佃航平には、過去にロケット打ち上げで失敗し研究職をあきらめたという過去があった。 順調に業績を伸ばしてきた佃製作所であったが、大手顧客から受注を打ち切られるという試練が舞い込む。 またそんな折、商売敵の大手メーカーからいわれのない特許侵害で訴えられてしまう。
 特許戦略に精通していない佃製作所は資金難も相まって徐々に不利な状況に追い込まれていく。 そんな中、佃製作所の持つある特許に対し、国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工が触手を伸ばしてきた。 その特許(技術)を売却すると、様々な窮地を一気に挽回することができるが、その技術には佃製作所の夢が詰まっていた。

 感想
 小さな町工場が、様々な試練を乗り越え、また通常であればとても太刀打ちできない超巨大企業を相手に一歩も引かず、自らの夢の実現に対して邁進していくという痛快なストーリーである。
 ストーリーの前半部分は、八方ふさがりで希望のかけらも見えない。 ストーリーの中盤囲碁、光明が差し込んで形勢逆転するというストーリーは半沢直樹シリーズと同様である。
 ただ半沢直樹が一人の超人的な頑張りによって苦難を乗り越えていくのに対し、本作品での主人公・佃航平は短所もある人間味のある設定である。 組織の力で苦難を乗り越えていくという点も併せて、より親近感がわくストーリーであった。
(書評作成:2016年1月31日)
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