そして凝ったディティールはパーツにとどまらない。デザインで目を引くのは左
胸の五角形のポケットだ。変わった形だがペンやメガネなどを入れても、非常
に取り出しやすい。ウエアハウスで貰ったカタログによれば、このカバーオール
は30's modelだそうだが、このポケットが実際にあった形状なのか、ウエアハウ
スのオリジナルなのかはわからない。だが現代でも色褪せることのない機能的
なディティールと言える。

ボックス型のシルエットはタイトめなパンツと相性が良く、この秋には街に山に
と大活躍してくれたお気に入りのアイテムだ。
30's Wabash Stripe Coverall
WAREHOUSE
Y氏と共に出撃した『とある休日』で購入した、ウォーバッシュ・ストライプデニムのカバーオールだ。

この独特のストライプはこれはインディゴで原反を染め上げた後、抜染で白い点線を抜くといった独特の技法を用い、オハイオ州西部のウォバッシュリバー近郊で多く生産されていたことからウォーバッシュ・ストライプと呼ばれるようになった。

しかもこのカバーオール、マニア仕様はデニムだけにはとどまらない。

左の画像を見ての通り、ボタンもマニア心をくすぐる仕様になっている。ヴィンテージ、レプリカを問わず多くのブランドでは自社のブランドネームをボタンに刻んだモノが多いが、このカバーオールのボタンはご覧の通り『UNION MADE』と記されている。

UNION MADEとはその名の通り、衣類の労働組合に加入している会社(または工場が生産した製品であることを示している。だから右ポケットの内側には当然、『UNION TICKET』が縫いつけられている。

ブランドネームは唯一、袖口のスナップボタンとタグに『WAREHOUSE』と記されているだけだ。

ボタンやボタンホール付近のデニムにに付
着する錆。まるでこのカバーオールが時代
を経てきたような錯覚を与えてくれる。

ボタンに刻まれたブランドネームも非常に
凝ったつくりになっており、密かにオキニ
のデティールだ。

右ポケットの内側に取り付けられたユニオン
チケット。タグは別に加工した後に取り付けた
のか、ポケットの色残りとはギャップがある。

ラグランスリーブのカバーオールは肩の位置を
気にせずに着用できる。ヴィンテージのディティ
ールを踏襲したとは言え、36でも着れるアイテム
が限られるMSには嬉しい仕様だ。

かなり念入りなデニムのエイジング加工に加え、鉄製のSカンボタンには錆加工
が施されている。しかもこの錆加工はボタンにとどまらず、錆による「汚れ」が
デニムにも付着している。これがまたサラ着でありながらも、さながら古着の様
な時代の空気をユーザーに訴えかける。酸化デニムで時間の再現に挑んだ
ウエアハウスの復刻に賭ける姿勢は、見落としがちな小さなパーツにも強く表
れたと言えるだろう。

最近は手軽に色落ちが楽しめるエイジング加工が人気だが、MSは基本的に
デニムはリジッドから使い込んでいくアンチエイジング派だ。が、このカバー
オールは非常に気に入った。だから購入後、速攻で着て帰った(笑)
それにしてもアンチエイジングってまるでマダム世代の化粧品だな、こりゃ。

三本針でしっかり縫い上げられた部分
強力なウォッシュ加工が施されたこ
のカバーオールには、丁寧な仕事の
結果として、力強いアタリが生まれた。

肘関節下など、負担の加わりやすい部位
には念入りに手が加えられた。デニム以上
に色落ちの遅いカバーオールを自分で着込
んだ場合、この風合いになるま一体どれほ
どの時間がかかるのだろうか。