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思い出の映画

(第4回)影武者
今回紹介するのは、黒澤明監督の「影武者」です。劇場公開されたのは1980年の4月頃だったと
記憶しています。

この映画はこの年のカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得し、米アカデミー賞でも外国語映画賞に
ノミネートされた海外では評価の高い映画です。私がこの映画を見たのはちょうど「カンヌ国際映画
祭グランプリ受賞!」というニュースが報道された直後で、このニュースを聞いて興味が湧き、観て
みようと思ったわけです。
黒澤映画はTVで「7人の侍」を観たこともあり、嫌いではありませんでしたし。

あらすじは、無頼の盗人であった男が有名な戦国武将、武田信玄と瓜二つであったため、信玄の死
を隠すために影武者となり、武田軍が長篠の戦いで織田・徳川連合軍に敗れるまでの影武者の
生き様を描いたものです。

キャストは、主役の影武者と武田信玄の2役を仲代達也さん、信玄の弟、信廉を山崎努さん、信玄の
息子、勝頼を萩原健一さん、武田軍の武将、山県昌景を大滝秀治さんとそうそうたる顔ぶれが演じて
います。ちなみに織田信長を演じている隆大介さんはこの映画が役者デビュー作です。

で当時の感想なんですが、一言で言うと「後味の悪い映画」でした。(^^;;;
別に出来の悪い映画とかハズレ映画という意味ではなく、当時高校生だった私はもっと娯楽性の高い
観ていて胸がスカッとするような楽しい映画が好きで(今でもそうですが)、こういう「滅びの美学」
みたいなものを描いた映画はあまり私の嗜好に合わなかったというところでしょう。

映画自体はさすが黒澤映画というだけあって映像やカット割りは見事でしたし、脚本も良くできていた
と思います。でも、やはり最後には影武者は影武者であることがばれて武田家を追い出され、武田軍
も長篠の戦いで破れてしまうという結末は、虚しく寂しいもので後味の悪さを感じてしまいました。
黒澤映画って元々は「7人の侍」に代表されるように娯楽性の高い映画だったと思うのです。
それがいつ頃からか芸術性ばかりが先行してしまって、観ていて楽しい映画ではなくなってしまった
ような気がします。

蛇足ですが、この「影武者」、主役は当初勝新太郎さんが演じる予定でした。
しかし撮影途中で黒澤監督と対立し、主役を降板。代役として仲代達也さんが主役を演じることに
なったのは有名なお話です。勝新太郎さんは「影武者」がカンヌでグランプリを取った時も、TVの
インタビューでこの映画のことをケチョンケチョンにけなしていたのを今でも憶えています。(^^;;
歴史上に伝わる武田信玄の風貌を見ると、勝新太郎さんの方が外見だけならぴったりだと思うの
ですが、勝さんがもし演じていたらどんな影武者になったんでしょうか。想像するとおもしろいです。

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