大阪クラシック2009

今年は公演数が100、すごい数になってきて同じ時間に重複することも多い。
4年目ともなるといろんな企画が出てくるのだろう。
ところが残念なことに今年はこちらのほうが体調不良で、どこまで付き合えるかわからない状態。

ということで今年は、<無理せず、行ける時に行こう>という気楽さで臨みました。

今年の特徴は、四重奏・五重奏などの定番室内楽が大変充実してたこと。
特に、佐久間聡一カルテットの充実した音楽が二度も聴けたこと!
このカルテット、大阪クラシックが始まってから出来たグループということで、アンサンブルは非常に充実したものになってきてる。
このメンバーで本格的な活動をしてほしいと思う。
佐久間クンの音楽性と岩井さんの統率力?でいい四重奏団にきっと成れると思う。
ハイドン・ベートーヴェンの2曲を聴いたが、もっともっとたくさん聴きたくなった。
そういえば昨年のスメタナも素晴らしかった。

もう一つは、ブラームスのピアノ四重奏曲が二曲、それぞれに特徴ある演奏で聴けたことが大変大きな収穫でした。
おかげで今、ブラームスの室内楽を集中的に聴きたいという欲求に駆られてます。

大植英次監督の体調はどうかと心配していたのですが、いくつかの会場で笑顔を見ることが出来ました。
シンフォニー・ホールでの演奏もしっかりしてたので、もう心配することもないと思います。

わたしの行った公演についてまとめてみます。
今年は、オープニングとフィナーレの公演の入場整理券の配布が、それぞれ当日の午前8時ということになり、その前から並んで確保するには、相当早い時間に行かなくてはならないので今回はどちらもパスすることにしました。
 (一説には、あきらめる人を増やす目的で時間を早めたらしい・・・・?)

第9公演 フルート四重奏
      飯島・井上・榎田・野津

フルート四重奏は初めて。
バス・フルートからピッコロまで種類の違う楽器の四重奏かと思いきや、同じフルートを持った4人のアンサンブル。
前半2楽章を野津さん、後半2楽章を榎田さんがトップを交代して吹いていた。
今年の大阪クラシックで最も活躍しそうなのが、ヴァイオリンの佐久間クンとフルートの井上クン。
この井上さんが全楽章でセカンドを吹いていて、アンサンブルの中心になってたよう。
ただ、同じ楽器4本の響きは、聞いていてそう楽しいものではないというのが正直な感想。
クーラウという作曲家のことが少しわかったという収穫はあった。

第11公演 M.Haydnのディベルティメント
       井上(Fl)・藤原(Hr)・吉田(Vla)・池内(Cb) 

ヴィオラとコントラバスという中低域の弦楽器にホルンまたはフルートという組み合わせ。
ホルンの加わった曲は、予想通り地味な響きで、最後まで馴染めなかった。
フルートと弦の演奏は、非常にバランスが取れていて安心して聴くことが出来た。
生き生きとした曲は楽しいもの。

やはりヴァイオリンとチェロの組み合わせのほうが音楽としてはまとまりが出るでしょう。


第13公演 ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番
       佐久間・浅井(Vn)・岩井(Vla)・松隈(Vc)

申し訳ないけど、「曲が生の音で聴けたらよし」と思って出かけました。
この演奏会が始まった途端、出てくる音にすごく驚きました。
聡一クン(佐久間)のつややかな音、引き締まったアンサンブルが若きベートーヴェンの弦楽四重奏曲を堂々と演奏している。
そういえば昨年のスメタナの第1番を大変印象深く演奏した彼ら、こんな素敵なベートーヴェンが聞こえてきても不思議じゃなかったんだ!
曲の解釈としては、もう少し歌いこんでほしいなと思う部分(第1楽章の第2テーマや第2楽章)がありましたがこれは小さな問題。
後半の二つの楽章の精気あふれる演奏が損な小さな不満を吹き飛ばしてくれました。
疲れも眠気も飛んでいってしまいました。


第14公演 長原幸太独奏会

バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータを最近聴いてないけど、幸太クンの演奏が始まった途端、「えっ、これ何?」という印象でした。
速いテンポで一気呵成に弾いて、聴いてると息が詰まりそうになってきました。
有名なガヴォットはさすがに落ち着いて聞けましたがそれでももっとゆったりした音楽が聴きたい。
その点次のイザイのソナタは素晴らしい技巧と華やかな音で、彼の本領を発揮してました。
興味深かったのは次の 松下功 作曲の「マントラ」
幸太クンの作曲の恩師の曲で、サンスクリット語「マントラ」は讃歌・呪文という意味のようですが、詳細はわかりません。
広島出身の彼が、被爆60周年記念演奏会で恩師松下さんのコンチェルトを演奏したようで、この広島−被爆−松下という関連で聞いたからか、「マントラ」の音楽は、まるでB29が飛来した時の音のように聞こえました。
舞台に5台の楽譜たてがなれべられ、数分間演奏しては次の譜面台に移って演奏し、最後にはその5つに囲まれた舞台中央で演奏して終わるという曲。
やや異様な音楽をヴァイオリンで弾きつづけ、鬼気迫る雰囲気をかもし出していました。
バッハでちょっと退いてしまった私ですが、これはちょっとほかでは聴けない種類の音楽でした。
最後の「パガニニアーナ」は、ヴァイオリンの技巧を見せ付けるようなショー・ピースで、彼のテクニックを披露するための曲であり、その意味では感心しましたが、必ずしも必要なものではありませんでした。

第17公演 ハイドン:弦楽四重奏曲「騎士」
       佐久間・浅井(Vn)・岩井(Vla)・松隈(Vc)

前日に続いて佐久間弦楽四重奏団(勝手に名前をつけました)がハイドン演奏するというので、お昼休みの時間をうまく使って聴きに行きました。
時間ぎりぎりだったので後ろのほうで立ち聞きです。
この日の演奏も素晴らしかった。
決して急がず、ゆったりした音楽が最後まで続き、古典派音楽の優雅さがよく出ていたと思います。
第2楽章は非常によく歌っていて、心地よくしてくれたし、終楽章ではきびきびとした部分が実にのびやかに響いてたし、不思議な響きを作り出すハイドンの転調がよくわかりました。

ビオラの岩井さんの説明では、この大阪クラシックがきっかけで出来たカルテットで今後も活動を続けたいということですが、これは是非とも続けてほしいもの。
大フィルの常設カルテットとして活動することを切に願います。
ウィーン・フィルのように、有名な弦楽四重奏団がいくつも存在する例と比較するのは無理としても、大フィルメンバーによるカルテットは何としても世に出てきてもらいたい。
東京カルテットならぬ、“大阪カルテット”を目指してくれないかな・・・?

第25公演 ファゴット四重奏
       久住・熊谷・宇賀神・中原

ファゴット四重奏という、普段絶対に聴くことのない集まりです。
当然こういう編成のための音楽は無く、いろんな有名曲の一部を編曲して楽しませてくれました。
なかでも、ベートーヴェンの第九の歓喜のメロディーが徐々に楽器を増やして繰り返していく部分のオブリガード、主旋律に纏わりつくような旋律を解説してくれたことが印象に残りました。

第40公演 林裕チェロ独奏会

チェロの名演を「松脂が飛び散るような」という言葉でたとえることがありますが、すぐ近くで聴いた林さんのチェロはそんな音に聞こえました。
会社のすぐ近くだったのでちょっと寄ってみようかなという軽い気持ちで行ったのですが、これは大変大きな収穫でした。
大フィルの元主席奏者で今はソロなどで活躍されてるようです。
曲がリゲティの無伴奏ソナタという現代曲なので、楽しめる演奏になるとは思ってなかったのですが、きびきびと歯切れのいい林さんの演奏は、この未知の曲を大変親しみの持てるものとして聞かせてくれました。
ケッペンという人の曲を何曲か聴きましたが、昔西部劇で見た、荒野の夜の静けさを思わせる懐かしいものがあったり、最後に演奏したバッハ風「古時計」を楽しみました。
いいチェリストの音は実にいいものですね。

第42公演 アンサンブル“B”
       長原・佐久間・松川(Vn)/篠崎(Tp)/川浪(Tb)/中村(Perc)

20代の若い大フィルメンバーが集まってみました!というグループで、コンサートマスターの幸太クン、セカンドヴァイオリン・トップの佐久間聡一クン、トランペットの篠崎クン、チューバの川浪クン、パーカッションの中村クン、ヴァイオリンの松川さんというフレッシュな顔ぶれ。
幸太クンや聡一クンがいるので人気抜群、相愛学園の講堂はいっぱい。
でもよく考えてみるとこういうアンサンブルっていったい何を演奏するのかな?という疑問がありました。
実際始まってみても、こういうメンバーを集めるというところに目的があったようで、内容はイマイチでした。
<見もの>は、幸太・聡一のヴァイオリン・デュオでモーツァルトの歌劇「魔笛」の中の夜の女王の有名なアリアを演奏。
超高音で歌うコロラトゥーラ・ソプラノのアリアをヴァイオリンが演奏!と思いきや、舞台後方に篠崎・川浪・中村の三人が登場してきて彼らが歌った!
おまけに、ヴァイオリンの二人までがそこに加わって、怪しいコーラースの披露!
会場大爆笑。
そういえば昨年も同じようなことを幸太・聡一のコンビでやってました・・・
クラシックの演奏ばかりでやや硬くなった聴衆に一服の清涼剤となったのでは?

第43公演 フルート四重奏
       井上(Fl)・今城(Vn)・吉田(Vla)・石田(Vc)

爆笑コンサートの帰り、道の反対側のカフェで行われていたのがこれ。
小さな会場にたくさんの聴衆がいてほとんど見えない。
ちょっとのぞいてみただけでした。

第70公演 ヴィオラ演奏会
       三木香奈(Vla)・三木麻帆(P)

シンフォニー・ホールの大フィル演奏会に行く前に立ち寄ってみました。
大フィル奏者じゃないヴィオラ奏者がシューマンの曲を演奏ということで、ちょっと興味がありました。
行ってみると予想と違って、童謡をヴィオラで聞かせるという内容で、シューマンの小品が一つだけ入ってました。
ヴァイオリンよりもややくすんだ音色は、曲によっては落ち着いた気分になれるもので、この楽器を聴く機会が少しでも増えてくればいいと思いました。

第71公演 大阪フィルハーモニー交響楽団演奏会
大植英次指揮大フィル
小林夏衣(ピアノ独奏)

大フィルとしてのこの期間唯一の演奏会。
モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の第2楽章とベートーヴェンの交響曲第5番「運命」ということで少し躊躇したけど、大阪クラシックで頑張るメンバーが一堂に会しての演奏は、一種独特の高揚感の中での演奏なので、毎年聞き応えのあるものになるので行くことに決定。
会場についてプログラムを見てびっくり、まず最初にマーラーが交響曲第1番の2楽章として書き、後に外してしまったという<花の章>があり、次のモーツァルトは第2楽章だけではなく第3楽章も入ってる。
マーラーのこの曲が演奏されるのは非常に珍しいけれど、大変美しく、まさに花の園を想わせる音楽です。
大植英次は昨年(?)の大阪国際フェスティバルでマーラーの交響曲第1番を取り上げたときにアンコールとしてこの「花の章」を演奏してます。
この日は若いトランペット奏者篠崎クンを二階のオルガン席の横に立たせていました。
もう少し透明で落ち着いた音だったらもっとよかったと思います。

次のモーツァルトを弾いた小林夏衣さん、いろんな意味で感動的な演奏でした。
大植英次さんが舞台準備のあいだに彼女のことを紹介してくれたのですが、びっくりしたのは、彼女が手に障害を持っており、何と左手の指が生まれた時から2本しかなかったということ。
いろいろ話があったけど、実際舞台に現れた小林さんは体も大きく、ドレスも華やかでひときわ目立つ存在。
決して高校生とは思えなくて、立派な大人の女性のいでたちでした。
演奏はどうか?
オーソドックスにしっかりした入り方で、思い入れたっぷりのものでないのが非常によかった。
そして中間部の速いパッセージもしっかり弾いていた。ややもすると手のほうばかり見てしまいがちで、耳より目のほうに神経が行きがちで困りましたが、いい演奏でした。
次の3楽章も、少しミスもあったようですがしっかり弾き終えました。
何よりも彼女のピアノは、音がしっかりしていて、決してなよなよとしてないことと音色が暖かいこと。
アンコールに得意のショパンのノクターンを弾いてくれましたが、技巧的に華やかという演奏ではなく、一つの詩を音にするようなショパンになっていたようです。
演奏が終わり、大植英次に抱きしめられた彼女の姿はまだまだ高校生の可愛さがありました。
ハンディを乗り越え、将来の夢である作曲家を目指して頑張ってほしいと思います。
彼女も大植英次の目にも、会場の大勢の聴衆の目にも涙が・・・・・

本当は、モーツァルトのこの曲を全曲通して演奏してもらいたかったなと思います。
第2楽章を聴くと、非常に優雅な音楽のように聞こえますが、第1楽章を聴くとまったく違うイメージなのです。
出だしから非常に暗く、モーツァルトの短調の曲(第40番の交響曲など)特有の非常に厳しい音楽です。
彼女にスポットの当たった演奏会だし、お祭り気分のときなので逆にこの方がよかったのかもしれませんが・・・・

最後のベートーヴェンも、みんなの神経が興奮した状態の中での演奏なので、十分楽しめました。
午後8:00からの演奏会で、時間的な制約もあったのか、第1楽章・第4楽章ともに提示部の繰り返しが無かったのはちょっと寂しかったけど、楽員の疲れを考えるとこういう選択も文句は言えませんね。

第73公演 二つのヴァイオリンとコントラバスによるトリオ・ソナタ
力武・横山(Vn)/松村(Cb)

ルーブル美術展が開催されてる国立美術館の一角での演奏。
たくさんの人が行き来する場所での演奏というハンデもあって、期待通りの演奏会とは行かなかった。
でも大変ユニークな曲が、大きな楽譜を見せながらの紹介され、非常に興味深かった。
一枚の楽譜を二人のヴァイオリン奏者が、一人は楽譜の頭から、もう一人は楽譜の最後から同時に演奏するというもの。
聴いていてしっかりとしたハーモニーが聞こえるというのだから、こんな楽譜を書いた人は大したもの。
音楽としては特に美しいものでもないけど、作曲家の道楽(?)と考えると、面白い試みだと感心しました。
ちなみに楽譜には MOZART という名前が書かれていましたが、実際には違うという話でした。

第75公演 ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番
       小林(Vn)・川元(Vla)・庄司(Vc)・藤井快哉(P)

中之島の国立美術館から本町の北御堂へ駆け足で行きました。昼食はまだです。
大きな会場はすでに満員で、横の壁にもたれながら立ち聞きです。
この大きな会場でブラームスの渋い室内楽がどう響くのか、興味深くその開始を待つ。
予想に反して(ごめんなさい)弦の音がしっかりしていて、ブラームスのやや暗い音色が静かに流れます。
何より驚いたのはピアノの音。
やわらかくまろやかな音がホールいっぱいに広がっていく。
フォルテになっても決してうるさくならず、それでいてしっかりアンサンブルに溶け込んでいく。
というよりも、このアンサンブルを後ろからやさしく、それでいてしっかりと支えていると言ったほうがいいでしょう。
第1楽章が終わったところですぐ横の人が席を立ったので、後はゆっくり座って聴きました。
演奏が終わったとき、非常にさわやかな気持ちで会場を後に出来ました。
弦楽四重奏の素敵な演奏を聴くことが出来た今回の大阪クラシック、大フィル・メンバーの室内楽がこんなに高い水準で聴けるようになってきたことにおどろきです。うれしい誤算?続きです。

第78公演 モーツァルト:シンフォニア・コンチェルタンテ
       鈴木・力武(Vn)/吉田・岩井(Vla)/石田(Vc)/松村(Cb)

この日2度目の国立美術館。
弦楽六重奏でモーツァルトのシンフォニー・コンチェルタンテ(協奏曲交響曲)をやるというので覗いてみました。
ヴァイオリンとヴィオラという二つの弦楽器が独奏するという協奏曲で、非常にポピュラーな曲。
やはり弦楽器の音が好きな私にとっては興味を持ってしまいます。
伴奏がオーケストラじゃないので、全体の響きがやや薄くなり、独奏楽器が目立ちにくいという面はありましたが、難しいことは考えずに楽しく聴けました。
大フィルの皆さんには、もっともっとモーツァルトを演奏してほしいと思います。
時々聴くモーツァルト演奏は、まだまだ経験が必要だと感じてるのはわたしだけでしょうか?

第80公演 フルート四重奏
       野津(Fl)・佐久間(Vn)・上野(Vla)・林口(Vc)

会場に着いたのが演奏開始直前で、舞台の周りは人でいっぱい。
大分疲れてきてるので立って聴くのはきついし腰にもよくないので、通路に座り込んで音を聴くだけにしました。
レーガーのセレナード、演奏する野津さんにとっては楽しそうでしたが聴いていてそう印象に残る音楽ではありませんでした。
後半のロッシーニは、ところどころで彼のオペラを思い出させるような部分が聞かれ、結構楽しめました。
疲れてくるとこういう耳障りのいい曲のほうがいいですね。

第81公演 フルート・ヴィオラ・ハープの演奏会
       邊見(Fl)・大槻(Vla)・今尾(Hp)

開始時間には間に合わないけど、この日最後に行きたい演奏会まで大分時間があるし、その会場のすぐ近くの関電ビルでのフルート演奏を聴いてみることにした。
ドビュッシーの「フルートとヴィオラとハープのためのソナタ」という珍しい曲、もちろん初めて聴くものでしたが、ドビュッシーの幻想的なイメージそのままの音楽でした。
フルートとハープという組み合わせは非常に合うように思います。
アンコールの「アルルの女」のメヌエットは一服の清涼剤になりました。

第83公演 ベートーヴェン:七重奏曲
       三瀬(Vn)・上野(Vla)・庄司(Vc)・林(Cb)・田本(Cl)・藤原(Hr)・久住(Fg)

今日一日の最後にどうしても聴いてみたかったのがこの演奏会。
若きベートーヴェンの七重奏曲は、弦楽器と複数の管楽器が独特の響きを響かせる楽しい曲です。
開演一時間前に行って、リハーサルをじっくり聞いてました。
出来てまだ数ヶ月という大きなビルの1F通路出の演奏、吹き抜けになってる部分なので音がしっかり響き、人通りさえなければこういう演奏にはうってつけなのに(でも人通りが絶えない)・・・
リハーサルでわかっていたことだが、ヴァイオリンの三瀬さんのヴァイオリンが実にいい音。
ソロの部分でしっかり自己主張してるしアンサンブルの一員としてもしっかり溶け込んでる。
クラリネットの田本さんのソロは始めて聞いたけど、華やかな部分で周りに押されること無くいい演奏家でした。
若きホルン奏者の藤原クンも、先日のカフェでの演奏よりもいい音でした。
通路に長時間座っていたので疲れたのは事実ですが、この演奏の素晴らしさに引き込まれて時間の経つのも忘れていました。
心地よい疲労感を持ったまま、中之島から梅田まで歩いて帰りました。

第86公演 モーツァルト:弦楽五重奏曲第3番 K.515
浅井・中西(Vn)/西内・吉田(Vla)/松隈(Vc)

一昨年からはじめたモーツァルトの弦楽五重奏、今年はついに第3番K.515という聴き応えのある作品になりました。
昨年までの演奏、正直な印象を言えば、一生懸命まじめに演奏しているのはわかるけど聴いて楽しむというにはちょっと(?)という感じでした。
でも今年のこの演奏は、聴く側がしっかり耳をそばだてようという気にさせるものでした。
作品がすばらしいからといえばそれまでですが、奏者の意気込みが感じられて、モーツァルトの素敵な音楽が愉しく聴けました。
来年はK.516という、まったく性格の違う傑作なので、彼女たちが今から覚悟をして、じっくり仕上げてほしいもの。
会場の弁護士会館、縦長のスペースで音響的にはどうかなと思うようなところですが、実際の音を聞いてみると大変聴きやすくて、これくらいの編成にはちょうどいいのではないでしょうか。
この日は、子供が走り回ってましたが・・・・・

第89公演 ヴァイオリン・デュオ
       松川・瀧花(Vn)

これは本当は行くつもりのない公演でしたが、ブラームスのピアノ四重奏曲をいい席で聴くためには、その会場に早く行ってないとだめなので、その本命の公演までの待ち時間の範囲でこの演奏会をチョイスしました。
狭い空間での演奏で、ヴァイオリンの生の音が聴ければいいや、くらいの軽い気持ちで行った演奏会。
ヴァイオリンの音を近くで聴けたのはいい経験でしたが、結果的にはそれ以上でもそれ以下でもないというくらいの記憶しか残ってません。

第94公演 ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番
        佐久間(Vn)・吉田(Vla)・石田(Vc)・原田愛(P)

今年の大阪クラシック100公演のうち、私が最後に聴く演奏会となるもの。
先日聴いたブラームスのピアノ四重奏曲が素晴らしかったから、この公演だけはどうしても外せないと思い、早めに行って並んだ。
聡一クンがヴァイオリンを弾くのでなおさら期待が高まる。
1時間以上前に行ったのでまず会場の外、地下通路に並ばされること40分、やっと入場したのが開演40分くらい前。
聡一クン以外の3名でリハーサル中。
10分後に聡一クンが駆けつけ、最終確認が終わってから15分くらいで開演となりました。
ベートーヴェンやハイドンの曲と違って、ヴァイオリンだけが目立つという曲ではないので、ヴィオラとチェロが低音部をしっかり支えてる。
最初のフレーズから、このメンバーのただならぬ気迫が伝わってきて、すぐそばで聴いてると、弦楽器の三人が絡み合ったり離れてみたりという変化が耳と同様肌でも感じられるような音楽です。
もちろんピアノも活躍し、弦の3人同様、存在感のある演奏でしたが、先日の藤井さんのような柔らく包むような音ではなくて、ストレートに音楽に入り込むという感じ。
ピアノの大きな音を響かせるには狭すぎる会場なので、これ以上のものを求めるほうが間違いだと思います。
ブラームスの音楽にしてはリズミカルで明るい部分が結構ある曲なので、若い4人の奏者たちも丁々発止と刺激しあって、本当に素晴らしい音楽を聞かせてくれました。
この曲、以前NHK・FMで、オーケストラ用の編曲版を大植英次指揮北ドイツ放送響が放送され、そのときの録音を後で聴き直してみたのですが、この原曲通りの四重奏版の方がいいと思いました。

この大阪クラシックの期間中に27歳の誕生日を迎えていた聡一クンを、ほかのメンバーと会場の聴衆でお祝いするというハプニングもありました。



19公演を聴きました。
昨年より遥かに充実してたことが大変うれしかった。
特に聡一クンの活躍が昨年以上に目立ち、弦楽四重奏団としての活躍をぜひともお願いしたいとおもいます。
また、ブラームスの四重奏曲やモーツァルトの弦楽五重奏曲など、オーケストラ曲以外の音楽に身近で接する機会が増えたことは、音楽を聴く耳に幅を持たせてくれました。
来年は体調を整えて、いろんな会場に駆けつけたいと思います。