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ショスタコーヴィチ作曲 交響曲第5番ニ短調 作品47


 1937年に作曲されたこの曲を語るには、当時のソヴィエトの社会状況が大きな問題となる。
ロシア革命ご誕生したソヴィエト連邦が、独自の社会主義体制を歩む上で紆余曲折を経験するが、芸術の上でも1933年に<社会主義リアリズム>が確立され、「簡潔・明確・真実」あるいは、「形式において民族的・内容において社会主義的」という観点からショスタコーヴィチの作品も見直され、順調にソヴィエト社会で認められていた彼の作品が、「音楽でないごたまぜもの」というレッテルを貼られ、プラウダ紙でオペラやバレー作品が槍玉に挙げられるようになった。
ショスタコーヴィチはそのことにショックを受け、自ら強く反省しその結果として、ベートーヴェンの<苦悩を通して歓喜にいたる>音楽を苦心して創り上げ当局にも認められた、それがこの曲だと言われている。
一方で、彼のその後の作品などから判断して、表向きは当局に迎合した形をとってるが事実はそうじゃなく、ショスタコーヴィチ一流のアイロニカルな作品であると言う見方もある。

どちらが正しいのかわからないが、20世紀の交響曲の中でも最もよく演奏される曲の一つであり、聴き応えのある音楽だと言える。

作曲時期 1937年秋に完成(第三楽章は3日で書いたという)
初演 1937年11月21日(ソヴィエト革命20周年記念日)
ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル
演奏時間 40〜45分
曲の特徴 オーソドックスな四楽章構成で、ソ連の批評家の言葉を借りれば、第一楽章は「自問、または幼時の想い出」第二楽章は「再び帰りこぬ過去への皮肉な微笑」、第三楽章は「涙の苦しみにあふれる」、そして終楽章は「これまでの課せられたあらゆる疑問に対する回答」ということになる。
<苦悩を通して歓喜に至る>音楽と捕えるのが一般的。
ショスタコーヴィチの一番よく知られた曲で、特に終楽章のマーチ風主題はテレビの主題曲として使われたこともある。

第一楽章 モデラート−アレグロ・ノン・トロッポ
低音の弦と高音弦がカノン風に答え合うような第一主題と、ヴァイオリンが低音から高音に跳躍するようなメロディーを静かに提示。
展開部はこの第二主題で始まり、曲は高揚して行って勇壮なマーチ風の音楽になる。
そしてもう一度音楽が高揚し、第一主題で盛り上がるとそのまま再現部に入る。
最後はチェレスタの印象的な弱音で静かに終わる。
第二楽章 アレグレット(スケルツォ)
ユーモラスでおどけたような主題が低弦で出てくる。
中間部のトリオは、ヴァイオリン独奏でこれもユーモラスな雰囲気をかもしだす。
スケルツォの再現部に弦のピッツィカートを使うのは、ベートーヴェンの第5と同じ手法。
全体におどけたような調子がいっぱいの曲。
第三楽章 ラルゴ
苦渋に満ちたような音楽が展開される楽章で、この曲の中心になる部分と考えた方がいいかもしれない。
楽器構成がそれまでとは違い、弦楽器が中心でそこに木管楽器とホルン(その他の金管はない)が加わったという形。
さらにその弦楽器群は、ヴァイオリン−三部、ヴィオラ・チェロ−二部、コントラバス−一部という構成で、弦楽器が独特のハーモニーを作る。
弦楽器群がもの悲しい旋律を奏で、次々と歌い続けてゆく。
中間部では、これも静かでメランコリックな旋律をフルートが聴かせる。この旋律は明らかに第一楽章の主題から来たもの。
再現部では主題が盛り上がって行き、苦悩もその頂点を迎える。木琴の音が耳につく。
そして最後はチェレスタと弦楽器ががため息をつくように消えてゆく。
第四楽章 アレグロ・ノン・トロッポ
マーチ風の勇壮な主題とその展開、そして静かに落ち着いた部分が来て、最後に勇壮なコーダで終わる。
まず金管のテーマが行進曲風に高らかにうたわれる。
トランペット、トロンボーンなどが中心になってこのテーマを次々に展開。
第二主題は落ち着いたトランペットがコラール風の旋律を吹く。
静かな展開部が終わると再現部、始めは静かだが徐々に高揚して行く。
そしてコーダは勇壮なマーチが大きなクライマックスを創る。

ベートーヴェン作曲 交響曲第3番変ホ長調 作品55
 “英雄”(Eroica)

1770年生まれノベートーヴェン33歳の作品。
その数年前に二つの交響曲を作曲しているが、この作品はその規模において、内容の充実度において、というよりすべての面で前二作を上回っている。
ベートーヴェンの生涯を考える上で切り離せないのが耳の障害。晩年はほとんど聴こえなかったのは周知の事実だが、実は若い頃からその兆候があり、絶望のあまり自殺を考えていたようで、1802年10月に、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いている。
そこからどう立ち直ったのか、いろいろ言われているが事実として、<自分の人生の行く手に立ちふさがる障害を闘争の末に克服する>という確固たる意思を持ったのである。
そんな状況で完成したのがこの交響曲で、若きベートーヴェンの渾身の作品になった。
このシンフォニーのもう一つの問題、それは副題の『英雄』という名前。
おりしも当時のヨーロッパは、フランス革命(1789年)を経て、ナポレオンが登場してきたという時代。
庶民の味方ナポレオンは新しい時代を作る偉大な英雄と考えられており、その考えに賛同するベートーヴェンがこの交響曲をナポレオンに献呈しようとしたが、1804年、フランスの皇帝になってしまったナポレオンに激怒し、献呈の文字を書いた表紙を破り捨てたと言う。その真偽はともかく、そのあとで楽譜の出版の際ベートーヴェンは、
   シンフォニア・エロイカ−一人の英雄の思い出を祭るために−
と書き添えている。

作曲時期 1803年
初演 1804年12月(公開演奏としては翌年4月、ベートーヴェン自身の指揮で)
演奏時間 約50分
曲の特徴 1.長大な作品になっている
2.ソナタ形式の拡大、特に展開部の充実
3.アダージョやアンダンテの優美な音楽が多い第二楽章が<葬送行進曲>
4.第三楽章が、メヌエットではなく<スケルツォ>
5.終楽章がソナタ形式やロンド形式ではなく、<変奏曲>


特に、ソナタ形式の展開部の充実振りは、音楽の質を変えてしまうくらい大きな意味を持つと思われる。
従来のパターンからすれば、提示部が中心で、展開部はその60%位の長さしかなかったが、このシンフォニーは提示部(151小節)に対し展開部(245小節)、再現部(154小節)のあとにコーダ(140小節)が続く。
展開部が提示部より遥かに長く、コーダ(終結部)の異様な長さも大きな特徴。
ベートーヴェンの執拗さ・突っ込みの鋭さをここに見る。

第一楽章 アレグロ・コン・ブリオ <ソナタ形式

全合奏で主和音が二度叩きつけるように出てくる。全く新しい音楽の始まりといっても過言ではない。
そのあと第一主題が続くが、これは最初の和音を分散しただけの単純な音型。この二つがこの楽章を支配しており、この単純なものを次々と発展させていくのである。
第二主題は木管で歌われるが、いくつものテーマが断片的に続いており、どこからが主題なのか判然としないが第1のテーマとは対照的に穏やか。
そしていよいよ展開部が始まる。これは二つの主題はもちろん、経過的なつなぎのメロディーを発展させ、ベートーヴェンの斬新さ、大胆さを発揮している。
再現部のあと、締めくくりの部分コーダに入るが、ここでも非常に長い展開をしてゆくので、<第二の展開部>と呼ばれることもある。当然この楽章の盛り上がりは圧倒的な力を感じさせる。
第二楽章 アダージョ・アッサイ <葬送行進曲

美しくやさしい音楽がくるはずの楽章にこんな性格の音楽を持ってくる……ベートーヴェンの並々ならぬ決意があるように思える。
まずヴァイオリンで主要主題が静かに演奏される。悲しくはかないメロディーで一度聴いたら忘れられない。その気分を助長させるようにコントラバスが小さく刻むような音型(三連音譜)で支える。
このてーまがオーボエで繰り返されると、切なさも極まる。
そのあとこれに対応するように優美な旋律が続き、この二つが展開。
中間部は、楽しいトリオの部分だがベートーヴェンはこの悲しみの音楽をティンパニーの強打や金管の咆哮に変える。
コーダでは音楽は遅くなり、葬送の雰囲気を持ったまま静かに終わる。
第三楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ <スケルツォ

弦楽器のざわめきのような音型で始まり、一つのメロディーに集約されていったものが主題となり、オーボエがおどけたようにこれを吹く。
前の楽章とは全く違う世界になる。
中間部のトリオはホルンの三重奏が狩の雰囲気を漂わせたテーマを吹く。
ホルン奏者の腕の見せ所でもある。
スケルツォの部分が再現され、フォルティッシモの和音で終わる。次の楽章になだれ込んでいくような終り方。
第四楽章 アレグロ・モルト <自由な変奏曲>

前の三つの大きな楽章を受ける終楽章に変奏曲というのは意表をついた形式。ソナタ形式でもロンド形式でもなく、ここでも彼の独創性がある。
この楽章のテーマは自作の主題で、バレー音楽「プロメテウスの創造物」で使った旋律である。
(このテーマ、ベート−ヴェン自身大変気に入ってたようで、ピアノ曲などにも転用しており、このシンフォニーへの転用は4回目となる。)
きょくはまず、弦楽器が激しく下降する音型で始まった後、ピッツィカートで主題の低音部分が提示される。
これが変奏されてゆき、第三変奏で初めて主題のメロディー部分がオーボエで歌われる。なんともいえず懐かしさを感じるテーマ。
この二つの要素が展開して行き、第7変奏が終わるとコーダに入る。
これも長大なもので、最後はテンポもプレストになり、執拗なくらいのフォルティシモの和音を繰り返しながら圧倒的な盛り上がりで終わる。
 

ブラームス作曲 交響曲第4番変ホ長調作品98


交響曲を書くのに大変慎重だったブラームスが最初のシンフォニーを書いたのが実に43歳の時で、完成するまでに20年を要している。その成功を受けて2番・3番は短期間で作った。
そのブラームスが次に書いたのがこの第4番で、これは前二作と性格の全く違う音楽。
晩年の作だからということでもないと思うが、全体に憂鬱な感じが支配している。メロディーがそういう性格のものと言うこともあるが、曲の作り方が古い時代を意識したものになってることが大きい。
第2楽章の序奏に古い教会旋法(フリギア旋法)を用いたり、終楽章にパッサカリア(固執低音の主題による変奏曲で、150年前のバッハの時代の音楽)を持ってきており、聴いた印象はやや暗い。
ロマン派の時代、拡大路線をとるブルックナーやワーグナーの音楽と違い、しっかりとした構成の凝縮した音楽は魅力的である。

作曲時期 1885年完成(52歳)
初演 同年12月ブラームス自身の指揮で
演奏時間 40〜45分
曲の特徴 四楽章構成で、第一楽章はソナタ形式の憂愁を帯びた音楽、次の第二楽章は古い教会音楽風の序奏を持つ緩やかな音楽でこれもやや暗い。
第三楽章はスケルツォで躍動的な音楽。トライアングルが使われており独特の効果を出す。
終楽章はパッサカリアの変奏曲。低音の単純な上昇音階が次々に変奏されながらクライマックスに達する。

第一楽章 アレグロ・ノン・トロッポ −ソナタ形式-
二つの音と休止を繰り返すだけの単純な音型が第一主題だが、これがヴァイオリンで演奏されると、むせび泣くようなため息をつくようななんとも切ない響きになる。
木管に出る第二主題を経て、チェロで演奏されるメロディーが非常に美しく胸打つ音楽。
割と短めの展開部ではあるが第一主題をもとに凝縮された音楽でもある。
展開部に続くコーダは堂々としたもので、ティンパニーの連打で終わる。
第二楽章 アンダンテ・モデラート −展開部のないソナタ形式−
ホルンと木管の序奏があるが、古めかしい響きがする。
その序奏に基づいた続いて第一主題が伸びやかに歌われ、チェロが低音で非常にメランコリックに歌う第二主題が続く。
展開部はなく再現部になるが、ここで二つの主題が少し展開され、オーボエやクラリネットの哀愁を帯びた響きがあってこの楽章を静かに終える。
第三楽章 アレグロ・ジョコーソ −スケルツォ−
全合奏で強烈な第一主題がでる。爆発的な歓喜のようでもあり不気味な音楽でもあり、前の二つの暗いイメージを一掃しようとするかのよう。
特徴的なのは、トライアングルの連打が用いられておりこれが華やかさを助長する。
そして決然とした終わりかたが、次の楽章との対比をより鮮やかにする。
第四楽章 アレグロ・エネルジコ・エ・パッショナート −パッサカリア(シャコンヌ)−
8小節(8つの音)の単純な主題がこの楽章のすべて。
このテーマを次々に変奏させてゆくだけだが、その変奏回数が32回!
その一つ一つの変奏がこの楽章の全体の強弱を作って行き、壮大なコーダで終わる。
同時代のブルックナーの終楽章が壮大に広がってゆく音楽なのとは対照的で、きちっと凝縮された味わいのある音楽である。

シューマン作曲 交響曲第4番ニ短調 作品120

 女流ピアニスト、クララ・ヴィークと結婚したシューマンがその翌年、31歳の時に書いた。
当初第2番として演奏されたが、初演が不評で楽譜は出版されず、10年後に手を加え出版され、その時点で第4番目ということになる。
今でもシューマンの交響曲はオーケストレーションに問題があるとして、演奏する時に手を加える指揮者が多かったが、<原典版志向>の風潮が強くなってきた現在では、そのままの形で演奏する人が増えてきた。

作曲時期 1841年。第1交響曲と同じ年に書かれている。
初演が不評で出版はされず、1851年に改作される。
初演 1841年(改作のものは1853年)
演奏時間 約30分
曲の特徴 全曲が連続して演奏されるようになっており、形の上では単一楽章だが、その内容ははっきり区別できる四楽章から成る。
でも単一楽章の形をとることでもわかるように、第二・四楽章の中にも第一楽章のテーマが使われ、統一感を出す。

第一楽章 かなりおそく(序奏部)−生き生きと(主部) ソナタ形式
神秘的にうごめくような序奏で始まるが、やや重苦しい雰囲気を漂わせる。。
主部は一転して速く、律動的な第一主題がこの楽章の多くの部分を占める。
展開部に新しいリズムの動機(第四楽章のテーマに使われる)が木管楽器に出てきたり、歌謡風のメロディーがヴァイオリンで歌われる。
第二楽章 ロマンツェ(かなりおそく) 三部形式
オーボエとチェロ(独奏)がメランコリックな旋律を歌う。
中間部はヴァイオリン(独奏)が、第一楽章序奏部のメロディーを装飾してゆく。どちらも大変メランコリックな旋律。
第三楽章 スケルツォ(いきいきと)
躍動的な主題ではじまり、中間部のトリオでは前の楽章のヴァイオリン独奏の部分を思い起こさせるようなメロディーが木管に出てくる。
第四楽章 ゆっくと(序奏部)−生き生きと(主部) ソナタ形式
前の楽章からそのまま続いて序奏部に入り、大きく盛り上がったところで音楽は主部の速い部分に進んでゆく。
第一主題は、付点音譜のリズムの躍動感あふれるもので、これは第一主題の中間部に出てきたリズムを元にしている。
コーダはプレストになり、熱狂的な音楽として終わる。


ベートーヴェン作曲 交響曲第6番ヘ長調 作品68

ベートーヴェンの中期の代表作の一つで、交響曲第5番“運命”と時を同じくして生まれたというか、双生児のように作られた作品。
耳の障害などで絶望の淵をさまよった彼が、葛藤の末その苦難を克服して再び創作意欲に駆られた時期で、もっとも力強い作品群が生まれた。この二つの交響曲をはじめ、ピアノソナタでは“ワルトシュタイン”“熱情”、弦楽四重奏曲では“ラズモフスキー”四重奏曲の3曲、チェロソナタ第3番、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ協奏曲第4番など、ベートーヴェンを語る上で外すことの出来ない傑作が作曲された。
二つのシンフォニーについて言えば、5番は男性的、人間的、集中と凝縮という性格なのに比べこの6番は女性的、自然の描写、開放的で流麗という正反対な作品。
共通点がないわけではなくて、同じような単純な音型<タタタター>の形が中心的な動機として使われている。

作曲時期 1808年
初演 1808年12月
演奏時間 約45分
曲の特徴 作曲者自身がそれぞれの楽章に標題をつけていて、描写音楽のかたちをとっている。
4楽章制ではなく、五つの楽章という従来の枠にとらわれない自由な発想が見て取れる。
でも<嵐>をイメージさせる第四楽章を除けば従来のソナタ形式を中心とした、交響曲らしい構成の曲でもある。

第一楽章 「田舎に着いたときの愉快な気分」

アレグロ・マ・ノン・トロッポ  ソナタ形式
第5と同じで、いきなり第一主題がヴァイオリンで提示される。穏やかに流れるメロディーでこれがこの楽章だけでなく全体のイメージを決める。しかもこのテーマ、4小節からなるものでその最後の音はフェルマータで伸ばす。“運命”の動機と非常に似ている。
第一主題が大きく取り扱われ、第二主題もこれに似たような雰囲気のもの。
展開部もこの第一主題が中心。最後までこのテーマが支配する。
第二楽章 「小川のほとり」

アンダンテ・モルト・モッソ  ソナタ形式
小川のせせらぎのような弦の8分音譜の伴奏に乗って、第1ヴァイオリンがのどかで明るい第一主題を歌う。
第二主題ものどかな流れをそのまま受け継いでいる。小川は平和に満ち溢れ、人々はそんな気分を満喫する。
展開部・再現部が終わったあと、その平和な田園地帯にやってくる鳥たちの鳴き声が聞こえる。鶯をフルートが、うづらをオーボエが郭公をクラリネットがあらわす。実にのどかな音楽。
第三楽章 「田舎の人々の楽しいつどい」

アレグロ  スケルツォ
素朴でユーモラスなスケルツォ主題が弦でいきなり出てくる。田舎の踊りを思わせる。続くオーボエのひなびた旋律とファゴットのおどけたようなリズムは田舎そのもの。
トリオ(中間部)の主題も力強く足を踏み鳴らすような音楽で、熱くなってくる。
スケルツォに戻るが、すぐにプレストになり継の楽章になだれ込む。
第四楽章 「雷雨・嵐」

アレグロ  自由な形式
突如嵐が近づき、稲妻が光り雷が鳴る。そして強風・豪雨・・・・
ここで、ピッコロ・2本のトロンボーン・ティンパニーがはじめて加わり効果をあげる。
やがて嵐も収まり、フルートが鳥の飛ぶ様子を静かに表すとそのまま終楽章に。
第五楽章 「牧歌。嵐のあとの喜びと感謝」

アレグレット  ロンド・ソナタ形式(ロンド形式と言ったほうが近いかも)
短い序奏のあと第1ヴァイオリンが喜ばしい気分の第一主題を歌い次々にこのテーマを繰り返す。このテーマは、第一楽章のメインテーマと同じ気分に浸ろうとでも言うかのごとく平和でのびやかな気分をもたらす。
第二主題もこの気分を助長するような役目を果たしている。
曲は、きわめて穏やかな田園風景の広がりを感じさせて終わる。



ベートーヴェン作曲 交響曲第8番ヘ長調 作品93


健康を害した41歳のベートーヴェンは、テプリッツという温泉地に保養に出かける。その効果があったのか、非常に気分的にも明るくなってきて、「不滅の恋人への手紙」を書いている。そしてここで構想をまとめたのがこの曲。
ちなみにここでベートーヴェンはゲーテとはじめて知り合い、食事をしたあと、街を歩いているときに皇后の行列に出会う。道の端に下がり拝礼しようとするゲーテに対し、ベートーヴェンは、自分達に敬意を表するために向こうが道を譲るはずと言ってまっすぐ進む。結果はベートーヴェンの言った通りになったが、それを不快に感じたゲーテはそれ以降ベートーヴェンと会おうとはしなかった・・・・

作曲時期 1812年
初演 1814年に第7交響曲・「戦争交響曲」とともに演奏。
演奏時間 約25分
曲の特徴 体調・気分ともにすぐれた時に書かれたもので、非常に明るい音楽。
規模はやや小さいけれど、7番に負けるとも劣らぬ快活なリズムにあふれた音楽で、時にはコケティッシュな感じさえする佳曲!

第一楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・コン・ブリオ ソナタ形式
いきなりトゥッティ(総奏)ではじまるが、後半部分が管だけという非常に特徴的な第一主題がこの曲全体のイメージを決めてしまう。
明るく活発なこの主題が展開されると一小節のゲネラル・パウゼ(総休符)をおいて第二主題が歌われる。この“間”がなんとも言えない効果を出す。
展開部・再現部と、第一主題が中心に展開された後さいごはこの主題がピアニッシモでソッと演奏されて終わる。絶妙な終わり方!
第二楽章 アレグレット・スケルツァンド 展開部のないソナタ形式
メトロノームを発明したメルツェルを送るために作った「カノンWoO162」をもとにした主題が、メトロノームのように刻むリズムに乗って軽快に出てくる。
第二主題が終わると、そのまま繰り返すように再現部となる。
第三楽章 テンポ・ディ・メヌエット メヌエット
メヌエットの主題は単純な音型だが、スフォルツァンドが多用されて独特のリズムを生み出している。
中間部トリオは、ホルンが柔らかな旋律を歌い、のんびり・ほのぼの感が漂う。
第四楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ ソナタ形式
やや特異なソナタ形式で、二つの主題がロンドのように次々と出てくるのだが、中間部はこれらが展開されており、ロンドと言うよりもソナタの形式と言える。それよりもっと特異なのは、再現部が終わったあとのコーダ(終結部)が異様に長くて、ここに二つ目の展開部があるといえるくらい変化のある音楽になっている。
3連音によるピアニッシモで第一主題がで、その後トゥッティで繰り返し軽快な音楽が走るように始まる。7番の交響曲とは種類は違うが、同じようにリズミカルな音楽。
第二主題はすこしゆっくりしていて、ほっと息をつくようなメロディー。
コーダでの展開は息を呑む暇もないくらい次々と変化して行く。



ラフマニノフ作曲 交響曲第2番ホ短調 作品27

19世紀後半に生まれたロシアの作曲家・ピアニストであるラフマニノフは、1897年に初演された第1交響曲が痛烈に批判され、ショックで精神的に大きな打撃を受けてしまう。そして青年期を神経衰弱とともに生きてゆくことになる。
催眠療法などで徐々に回復してきた彼は、1902年結婚、そして1906年から1909年までドイツのドレスデンに住む。
このドレスデンで自信を回復したラフマニノフが作った大作がこの2番の交響曲。


作曲時期 1907年
初演 1908年ペテルスブルクのマリインスキー劇場
演奏時間 約48分
曲の特徴 古典的なソナタ形式を中心にした交響曲だが、ラフマニノフは息の長い叙情
的な旋律を中心としており、大きな波が押し寄せるような音楽になっている。
第一主題よりも第二主題のほうが聴き手には強く訴える音楽と言えるかもしれない。

第一楽章 ラルゴ−アレグロ・モデラート ソナタ形式
序奏はやや暗い音楽で、全曲で使われるいくつかの動機が散りばめられている。
その動機を使った第一主題がヴァイオリンで力強く歌われる。
クラリネットの優しい経過を経て、木管と弦で叙情的な第二主題に入る。憧れに満ち満ちた音楽である。
第一主題を中心に展開され、大きなクライマックスを経て再現部になる。
この再現部では第二主題が活躍し、序奏部の動機を用いたコーダは激しさと速度を増して締めくくる。
第二楽章 アレグロ・モルト スケルツォ
スケルツォ主部は、激しく躍動する部分とそれにつづくヴァイオリンの優しい旋律の部分の二つから成り、変化の大きな音楽。
中間部でそれが展開された後再びスケルツォ部分の音楽がつづき、最後に序奏動機が鮮やかに鳴って終わる。
第三楽章 アダージョ 三部形式
ここは、ラフマニノフらしさの一番よく出た楽章で、息の長い叙情的な旋律がスラブ風のはかない美しさをこれでもかと言わんばかりに繰り広げる。
まずヴァイオリンが美しいメロディーを奏でる第一主題が聴く人の胸に訴えかけてくる。
続くテーマは、クラリネットの独奏がモノローグ風にのんびりと奏でる。
中間部を経て部を経て、はじめのテーマが戻ってくるが、ここではホルンや独奏ヴァイオリンなどがメロディーを歌い、はかなさがより強く出てくる。
第四楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ ソナタ形式
エネルギッシュな第一主題が舞曲風に演奏された後、行進曲風の音楽に移る。
そして次に出てくる第二主題は甘美なメロディーで、そこに第三楽章のテーマの要素が絡んできて、大きなロマンの流れになってゆく。
展開部を経て再現部に入ると音楽は益々高揚して行き、第二主題で大きく盛り上がってゆき、この長大なロマンの流れが終わる。


ベートーヴェン作曲 交響曲第9番ニ短調 作品125


人間の一生のなかで大きな転機となる時があるように、時代の大きな流れの中でも、大きな転換点となる出来事がある。
ベートーヴェンにとってこの<第九>は大きな意味を持つ作品になったことは間違いないだろうが、音楽史の中でも一つの大きな山のような存在になった。
ハイドンやモーツァルトの交響曲といえば、4つの楽章全体で

作曲時期
初演
演奏時間
曲の特徴

第一楽章
第二楽章
第三楽章
第四楽章