白雪姫in木の葉
〜中編〜
「む・・・・・・」
サスケ、近づいてくる足音に目を覚ました。
生れたときから教育を完璧に施されたサスケにとって、2km先の人間の気配を感じ取るなど、造作も無い。
王家の人間が何故そんな教育が必要だったのかは知らないが。
(一説によるとサスケが一般教養をいやがったので、武術を教えるしかなかった)
「(ちっ・・・人の睡眠を邪魔しやがって。一体誰だよ・・・・・・?まぁ、狸寝入りでもしとくか)」
危険な人物でもあるまい、と判断したサスケは、そのまま寝続けることに。
寝ていれば王家の人間を起こすものなどいないだろう、と考えた上での行動だ。
王家は抜け出したのではなかったのか。
こんなところにも残る王家の体質か、はたまた生来のジャイアニズムか。
小さな小さな小屋でも、住み着けば愛しいマイホーム。
そんなマイホームへの突然の不法侵入者に最初に大声をあげたのは、ナルトだった。
「だれだってばよ、コイツ!」
残り6人、サクラ・シノ・キバ・ヒナタ・シカマル・いのも、驚いた顔で、自分たちのベッドの一つに横たわる人間を凝視。
大体にして、こんな森の奥の山小屋なんかに入る客なんて、冬の遭難者くらいしかいない。
「っつーか、これ俺のベッドだってば」
不法侵入者が自分のベッドを勝手に使っていたことに、少々不快感を感じた模様のナルト。
が、他の4名はそんなナルト本人よりも更に不快感を感じていたことは、否定できない。
(どこの誰か知らないが・・・・・・)
(この男の人、一体・・・・・・)
(誰に断って)
(ナルトのベッドに進入なんかしてやがんだ、コラ・・・)
一方サスケ。
突然入ってきた、この家の持ち主らしき人物からの
『誰だってばよ、コイツ!』
と言うセリフに、やはりこれまた不快感を感じていた。
「(誰だってばよ、コイツ・・・だと?誰に向かってこいつなんてほざいてんだ、このガキ・・・・・・俺を誰だと思ってやがる?)」
未だに王家感覚が抜け切れない、サスケ元姫。
彼は気付いていないようだが、どっちにしろココは国の外の森なのだから、王家の権力は通じるはずも無い。
じろじろと観察されるのも嫌なので、寝たふりを止めることにする。
サスケは、緩慢な動きでムクリと起き上がった。
「あっ、起きたってば」
ナルトが一番に声を出した。
直後、女性3人中2人が息を呑む音がする。
(ちょっとぉ、めちゃくちゃかっこよくないーー?)
(っしゃあっっ!王子様ゲットォーっしゃーんなろ!!)
実際は王子ではなく姫なのだが、彼女の心の叫びに突っ込みを入れられるものなどいない。
もともと目つきの悪いサスケは、不機嫌で更に悪人面になっていた。
(が、それも彼女たちには『クール』だという風に取れてしまうようだが)
「・・・・・・だれだ、お前ら?」
「それはこっちのセリフだってばよ!」
なんともジャイアニズムな第一声に、ナルトがすばやく突っ込みを入れる。
「!!」
サスケの視線が、ナルトのところで止まる。
(金髪なので目を引きやすかったということもあるだろうが)
しばらく、サスケ体内(?)時計は、電池切れでもしたかのように時を刻むのを止めた。
「・・・・・・?な、なんなんだってば・・・?」
なにやら自分をえらい形相で睨んでくる(第3者から見て、見つめているような目つきではなかった)サスケに、さすがのナルトも腰が引ける。
「(・・・・・・・・・こ、好みだvv)」
サスケ姫、初恋の予感。(っつーか決定)
が、そんな2人の様子を許さないものたちが(たくさん)いた。
4人揃って、ナルトとサスケの間に割り込んで。
「何じろじろと人のこと見てんだよ・・・・・・?」
そう言葉を発したのは、いつも頭上や懐に愛犬赤丸を忍ばせている、キバ。
それってば俺のセリフ・・・、と思いながらも、ナルトは4人のなにやらただならぬ様子に、首を突っ込むことは出来なかった。
「つーかてめー、不法侵入者じゃんかよ?」
サスケに負けず劣らず(と言うか別の意味で)目つきの悪いシカマルが、適切な批判。
7人の中で一番背の高いシノが
「何故この家にはいりこんでいるのか、理由を聞かせてもらう必要があるな・・・」
と冷静に続ける。
「大体、あなた一体誰ですか?」
引っ込み思案な様子で、しかし目つきだけは鋭いヒナタ。
当然サスケは、その対応にむっとする。
「(なんなんだ、こいつら・・・・・・・邪魔しやがって)」
・・・ああ、そういうこと。
とりあえず、自己紹介でもしておかなければならない。
「俺はサスケだ。空き小屋かと思ったので、少々休むのに邪魔させてもらった」
嘘吐け、お前はこの小屋に人が住んでいることくらい分かっていたはずだろう。
しかしそんな事実を知る者も、ここにはどうやらいない。
「「どーぞどーぞっ、いっくらでも休んでくださぁいvv」」
某ファーストフードの0円スマイルを撒き散らしながら、2人の女性・・・・・・サクラといのが答えた。
「なっ、てめーら何勝手に決めて・・・・・・っ」
「「なんか文句あんの?」」
「・・・・・・イエ、ナンデモ」
絶対零度の睨みを利かせて振り向いた2人に、文句を言おうとしたキバも引っ込んだ。
何を隠そうこの2人、ある意味この家の絶対的支配者。
今は女性の強い時代・・・、とは誰の言った話だったか。
「では、しばらく休養のためにココに住ませてもらうとするか・・・・・・(そしてその間にそこのナルトやらと・・・クックック)」
「「きゃ〜〜〜っvvラッキー!」」
手を取り合って喜び合うサクラといの。
それを恨めしそうに見ている(しかし文句は言えない)ヒナタとシノとシカマルとキバ。
そして。
「ん〜・・・じゃ、8人と1匹分のご飯作らなきゃいけないってば」
1人で妙に抜けたことを考えているナルト。
「(ククク・・苦労せずしていい具合に話が進んでいるじゃねーか。俺を容姿端麗に生んでくれて感謝するぜ、母さん・・・(誰か分からんが)」
かくして、7人の小人たち(?)とサスケ姫と一匹の犬の同居生活が始まった・・・・・・。
それから数日後・・・・・・。
サスケ姫が見切りをつけた城では。
「鏡さん、鏡さん。世界で一番かっこいいのはだーれだ?」
本日もやはり、カカシ王女による日課が行われていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今日の鏡、実はいつもと違う答えを持っていた。
しかし、これを言えばカカシは怒る。
きっと怒る、確実に怒る、いや、怒り狂うに違いない。
しかし・・・・・・・・・・・・。
この鏡さんはまじめで素直、かつ正直者。
違う答えを言うことなど出来なかった。
「はぁ・・・、それは森の奥の7人の子供たちと暮らしているサスケ元姫です」
「は・・・・・・マジで?」
「いやー、恋をすると人間って美しくなるんですねぇ・・・。俺もいっちょいい人でも見つけて・・・・・・」
「うっさいよ、鏡さん。それよりもさ、サスケって死んだんじゃなかったの?生きてるわけ?」
確かにハヤテに頼んだはずだったのに・・・・・・、と驚きを隠せないカカシ。
「生きてますよ。見ますか?」
そう言って、鏡は生存中のサスケを映し出した。
そんなに近づかなくても見えるだろうに、カカシ王女、鏡にへばりつくようにして凝視。
「ホントに生きてんじゃん・・・ハヤテのやつ・・・。あー、でも今はサスケのほうがむかつく。本当に生きてんの〜〜?しかも俺よりかっこいいって?」
そう言いながら、カカシはもう1度鏡を覗き込んだ。
と、そこで。
ふと目にしたサスケの表情に、一瞬硬直を覚える。
「なにこれ・・・サスケが笑顔?(ちょっとだけど)げ〜〜っ、こんなん初めてみた」
あからさまに嫌そうな表情をしながら、その笑顔のサスケの視線の先にあるものを追う。
すると、その先にあるものは・・・・・・金髪。
「ちょっとちょっと、この金髪の子、ズームアップして」
「え?あ、はぁ・・・・・・」
便利な便利な鏡さん、自由自在に鏡の範囲を操って、話題の金髪の少年に焦点を合わせた。
もちろん移るのはナルトである。
「へ〜、この子がサスケの・・・ねぇ。可愛いじゃんvいいなー・・・って言うかサスケずるいなぁ・・・・・・」
「・・・・・・!!」
鏡であるイルカ、カカシのふざけたような笑顔が、よからぬことを考えているときの笑顔になっていくのをすばやく察知した。
「ちょっ、なに考えてるんですかっ?」
慌ててカカシが考えているらしいことを阻止しようとするイルカ。
しかし、所詮鏡に王女(しかもカカシ)を止めることが出来るわけもなく。
「なにって・・・、サスケを始末するついでにさっきの金髪の子にでもあってこようかと思ってね。・・・あ、逆か。その子に会いに行くついでに、サスケを始末すんの」
どっちでも大した違いは無い。
なんにしろ、張り切って、支度を始めようと部屋を出て行こうとするカカシの表情は、酷くご満悦。
イルカは、すでに止めることなど出来ないことを確信した。
「いや〜〜、楽しみだなぁ・・・・・・」
スキップでもせんかのような軽く御機嫌な足取りで、カカシは部屋から出て行った。
「あぁ・・・・・・サスケ姫もさっきの少年も、無事だといいんだが・・・・・・」
祈りながらイルカは、その望みは薄いことも十分承知だった・・・・・・。
続く