第26章 ポンセット2号機の追尾精度の向上対策--決定版?

VNSは2レール方式のポンセットマウントより優れた方式なのだろうか? 筆者は実際に両方の方式で製作、改善しながら星像で、確かめてきた。このあたりで結論としたい。

VNSといえどもただ機械加工しっぱなしでは精度が良くない、快適な運用をするためには、やはり手作業による精度の追い込みが不可欠だ。これまでいくつかの追尾精度の向上対策をおこなってきたが、それらすべては2レール式1号機でやったことばかりだ。この点ではVNSといえども2レール式となんら変わる所はないようだ。

VNS方式はスラストの問題が生じにくい利点があるのは確かだが全くないわけではないようだ。筆者のポンセット2号機ではVNSなのに現在では、1号機と同様、偏心カムによるスラスト受けを採用していてスラスト受け車輪を使っていない。スラスト受け車輪方式では、時にはカタッと小さな音がでることがあり、高倍率で惑星などを観望していると、なんとなく不安定で星像がふわついたりゆらゆらと動く。偏心カムによるスラスト受けではそれがまったくなく星像があきらかに安定している。

1号機(2レール式)でスラスト受け車輪のときも同様な現象に悩まされ、結局偏心カムでスラストをささえたところ劇的に改善されたという経験がある。VNS方式ならばこの現象は起こらないだろうと淡い期待をかけていたのだが、同様の現象が再現した。しかし程度は軽く、時たまにおこるだけなので、辛抱できないというわけではないが、やはり愉快なものではない。そこで思い切って偏心カム方式に変えてみたのだが、これは期待を裏切る?劇的な変化があった。明らかに星像がドッシリと安定して、至極快適な観察ができるようになったのである。
しいてVNSの有利な点をあげるとすれば、剛性面であろう。  同じ部材ならVNS方式は剛性面で有利である。これはとりもなおさず軽量化ができることを意味する。

筆者の偏心カム式スラスト受けを下に掲載しておいたので参考にして欲しい。カム機構は取り付けの容易さから可動フレームの上面とした

カムの回転中心は3次元的な動きとなるので、余ったユニバーサルジョイント(自作)を使用しているがそれほど高級なものでなくとも、伸縮調整機構さえあればピポットのようなものでもよいだろう。カム板は理論上は高次曲線だろうが、それほど神経質にならなくても円狐でも殆ど影響ないようだ。ガイドレールは直線としている。

偏心カム式スラスト受け
                                            


極軸の狂い(移動)
天候が不順で、星を観察しながらの長時間精度の検証ができていなかったが、やっと晴れ間が広がり、観察が終夜可能となったのでこれで追尾全行程精度の検証を行った。観察したところ、追尾中間点で上下左右、完全に星が移動しないように追尾速度を調整、極軸をあわせているのに、追尾始めでは徐々に視野を下方に移動する。その後、止まり、さらに追尾を続けると上方、さらに左方に移動、最後は、再度下方に移動する症状があらわれた。移動距離は10分で木星の視直径の3〜5倍。1.5時間の追尾でも100倍の視野から出ることはないが、少し大きすぎるように思われてならない。なぜこうなるのか。症状から考えられる原因は極軸の狂い、移動だ。しかしセクターレールは研磨ジグを使って習い加工をしているので充分な精度がでているはずだ。修正するにしてもどこをどうすればいいのか?

なぜ狂ったのだろうか?これは推測しかないが。何度かレールを付け外しをしたことがあり。取り付けボルトは少し”がた”+-0.5mmを設けているためもとどおりに組みつけられなかったのかもしれない。特に北側レールは2分割されているから狂い易いのだろう?それに、一旦、レールの加工の後、フォーク軸の取り付け、補強リブの増設、などで可動フレームに溶接を繰り返している。この溶接ひずみが原因かもしれない。

どのくらい狂っているのか確かめるにも、なんらかのジグがないことにはどうにもならない。結局、以前レール研削に使ったジグをひっぱりだして測定することにした。ところがその後の部品追加などで可動フレームに出っ張りがありジグに当たって取り付けられない。仕方なくジグの方を修正して何とか取り付けられるようにして測定した。その結果は?明らかに狂っている、なんと1〜2mmもの狂いがある。これが原因のようだ。再研磨修正、これで極軸の移動はほぼなくなるはずだ。

この対策の後、実際に星で効果を確認した。効果は明らかで、控えめにみても追尾全行程で10分間の追尾で誤差は±20”以下の精度がえられた。これなら満足できる。

教訓;ジグは捨てずに、最後まで残しておこう。セクターレールはすべての溶接や加工が終わったのち、再度仕上げ加工をするのがベストだ。

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