覗き見 街歩き


02 街路の景観

 街を歩きながら、きょろきょろと、あちこちに目をやるときに、どうにも目障りで我慢ならないのが、電力会社と通信会社が張り巡らしている空中のケーブルである。そしてこれには電柱が不可欠であるから、街はなんとも無様な枝のない街路樹もどきの並木通りの体をなしているのである。暑い日差しの日除けにも、寒風を防ぐ楯にもならない。狭い我が街の路幅を一層狭くしている障害物に過ぎないのである。ただ、往来する車から歩行中の身を守るときには僅かに役に立つかもしれない。また柱上には重そうな変圧器や増幅器を装備しているから、何かの衝撃で頭の上に落ちてこないかと気になって仕様がない。それでも我々の生活環境はすっかり高度化して、衣類と食器以外の生活用品は、なにもかもが電化製品になっているし、携帯電話があっても固定電話も手放せない。それに最近はインターネットやケーブルTVまでが普及しているから、「光ケーブル」なーんていうものも新たに出現している。といった具合だから。生活の利便性を優先するあまり、目の前に張り巡らされている「蜘蛛の巣」状の各種ケーブル類を邪険に出来ないのである。仕方がない存在と我慢している。むしろ必要不可欠なものと、その役割を甘受している始末である。でも、本当は何処かに苦情をぶつけたいのである。街からこれら電線、電柱が消えたらどれほどすっきりすることだろうか。市の都市計画担当課あたりでは、街の景観ということをどのように考えているのだろうか。電力会社や通信会社では架線の邪魔になるからと、街路樹を切り倒して欲しいと平気で言うことすらある。景観なんて配慮する気はさらさらないのである。家庭ではパソコンに繋いでいる諸々のケーブル類は仕方なく机の裏の壁側に隠すように這わせている。部屋の美観を大いに気にしているのである。街中のケーブルも地下埋設になれば一番良いのだが、それがかなわないなら、せめて家並みの裏側に敷設できないものかと、独り歩きしながらケーブル類のなくなった景観を想像するしかないのである。



緑陰のくつろぎ | HOME > WATCHING