The Girl on the Train




 主人公レイチェルは、毎朝郊外のベッドタウンからロンドンへ通勤する途中、 通勤列車の窓から見える町並みを眺めるのが楽しみである。路線が古いためか、 必ず信号で停止する箇所がある。停車した眼の前の家の中を覗き込むことにとりわけ興味がある。 というのもその家から数軒離れたところに彼女もしばらく暮らしており、そこには離婚した 前の夫が以前同様にそのまま再婚した妻と生まれたばかりの赤ん坊と幸せに暮らしているのである。 そのことがやや悔しいし後悔するところではあるが、目の前に見える家も彼女の暮らした家と 同じ造りであるし、住人も彼女の新婚時代と同じ年代の夫婦のように窺えて、その幸せそうな 暮らしぶを想像して楽しんでいる。
 離婚の原因は、子供が出来ないことに落ち込んで、酒で気分を紛らわすうちに、アルコール 中毒になったからである。ある日、そんな幸せそうな家の彼女が、夫が出勤した後と思われる、 今まで見たことのない男との不倫現場を見てしまったのである。夫婦のどちらにも面識が あるわけではないが、妻の不倫は許せない。夫に知らせてやらねばならぬとの気持ちに駆られる。 かって暮らした街である。土曜日の休日であるが、列車で出かける。最寄り駅で途中下車した ところまでは覚えているが、翌日日曜日に目が覚めたとき、頭に怪我をしていることを知る。 前夜何があったのか思い出せない。そして、驚いたことに問題の不倫妻がゆく不明であるとの ニュースを知る。警察は夫に疑惑を向けるが、レイチェルは彼の疑惑を晴らすために目撃した 不倫相手を警察に知らせる。しかし、証拠が見つからぬまま日は過ぎる。遂に人里離れた森で 死体が見つかる。殺人事件の捜査は難航する。そして、レイチェルの記憶が甦るうちに、 真相が明らかになる。犯人は意外にもレイチェルが愛した、今も未練の残る前夫であることが わかる。犯人犯探しだけでなく、意外な犯人の殺人動機を犯人本人に語らせるところなどは、 男を想う女性心理とそれを嘘で固めて弄ぶ男の心理を緻密に描いている点が秀逸。
 推薦度 4.0



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