The Tombs of Atuan
有名なファンタジー小説「ゲド戦記」シリーズの第2作目である。物語は一人の幼女が5歳のときに、アチュアン(Atuan 国名? 地名? 島の名前)の”Namelss One(名前の無い聖職者)”墳墓の守護者に祀り上げられべく、神前に奉げられるところから始まる。この地では墳墓の守護神である最高位の女性聖職者(巫女)は、死亡するたびに生まれ変わると信じられていて、その死亡時に生まれた赤子が、国中を探して見つけ出され、次代の巫女Arha(アルハ)に仕立て上げられる。こうして誕生したアルハがその墳墓の守護者として、君主ではないが、神に仕える闇の世界の管理者として成長していく様子を描いている。ここでの権力は絶大であるが、闇の外界とは隔絶されていて、自由も奪われ他の世界は知るべくも無い。そんな人生を彼女は疑問視しつつも、半ば諦観の日々を過ごしていた。そんなある日、彼女が管理する墓所の地下深い迷路の奥にある宝物所に若き魔法使い”ゲド”が侵入していることに気が付く。昔からよく宝物所に侵入する盗賊はいたが、生きて生還したものはいなかった。迷路に迷って飢え死にするか、見つけられて死刑になる運命にあった。ゲドも二つに割かれた腕輪の片方を奪回することで世界の均衡を回復しようと、墓所に忍び込んだが、彼の魔術をしても迷路から抜け出せずに閉じ込められていた。ゲドを見つけたアルハは本来なら彼を死罪に処するところだが、彼に近付くたびにその誠実さに次第に惹かれてしまい、遂には彼を逃してやるだけでなく、彼女もゲドに救われて、闇の世界を脱出してしまった。幸い彼女に天罰の復讐は無かったが、ゲドが連れ出してくれた新しい光のある世界、未知の世界に対する不安とそれまで過ごした闇の世界での所業への悔悟で悩むことになる。闇(無知)の束縛を解かれて、自由に(知識を学んで)生きることの責任の大きさ、大切さを、ゲドが人々に献身的かつ誠実に対応する言動をアルハに示すことを通して、読者を啓発してくれる物語になっている。ファンタジックな世界を描きつつも、説教臭が感じられて、第1作に比べてやや迫力不足を否めない。 推薦度−3.5