The Girl with the Dragon Tattoo



  雑誌の発行者であり編集記者でもあるBlomkvistは実業界のドンと言われる億万長者の金融疑惑に関する記事を掲載したことで、不本意ながら名誉毀損罪で3ヶ月の懲役と罰金刑の判決を受けて、自身が発行する雑誌の編集職も罷免されることになった。この失意から復讐の念に燃えて立ち上がるのかと思いきや、そうではなくて、かってスェーデン屈指の大企業を起こして、今はその経営を一族の後継者に任せて実業界を引退しているVangerと名乗る伝説の大立者から、思いがけずも一族に関わる過去の暗い事件を解明する調査依頼を引き受けることになるのである。30数年前にVangerの甥の娘で実の孫娘のように可愛がっていた当時16歳の少女が失踪し、行方不明になったままになっている事件の真相を調査して欲しいと依頼されるのである。アシスタントとして警備会社の女子調査員Salenderを得て、謎の真相に迫っていく物語の展開である。Salenderは身体的に発達障害を患っており、精神障害もあるとして、日常生活では成人であるにも関わらず裁判所で選任された公的後見人の保護即ち管理下に置かれている。そんなハンデに付け込んだ悪徳後見人から彼女は性的虐待を受けるが、これには彼女が独力で復讐を果たすが、Blomkvistにはそんな事実を秘密にしたまま行動を共にする自負心の強い女性であった。そんな彼女には膨大な資料を脳裏に一瞬の内に画像として記憶できる超能力と、他人に気付かれることなく簡単にコンピューター・ネットをハッカーしてしまう得意な才能があった。その才を縦横に駆使して、二人の推理はどんどんと解き明かされ、過去に迷宮入りしたままの事実とは別に、失踪事件の真相は一族に潜んでいた暗い影を、仲のいい一部の親族間で隠蔽していたことまで突き止めることとなり、遂にはオーストラリアで、今は、幸せに暮らす孫娘の所在を発見することになるのである。この異能の女性はBlomkvistと二人で働くうちに、彼に魅かれ、本来のアシスタント業務を離れて、ハッカーとしての才を存分に発揮して、物語冒頭で名誉毀損の刑に陥れた実業界のボスの悪行を完全にスクープして見せるのである。この結果、Blomkvistも、思いがけず復讐を果たしたうえに、ジャーナリストしての名誉も完全に復活させ、彼の雑誌発行者としての地位も戻って、大円団ということになるが、ただ一人、一番の功労者、この薄倖の女性の影での大活躍は彼女自身の意固地な意思もあって、世に知らされないまま終了する。ただ、悪行ボスが隠匿していた銀行口座から莫大な資金をチャッカリとネットを通して盗み出してはいる。国際警察の手配の網目を完璧に潜り抜けているようであるから、夢のように痛快な物語である。英語はスェーデン人の翻訳で平易。 推薦度:4.0



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