High Stakes
競馬に関連する推理小説シリーズで有名なディック・フランシスの作品。 競馬界では馬主が調教師を解雇するというのは滅多に無いことであるが、本作品の主人公スコットは持ち馬を預けている調教師のジョディから虚偽の大金を請求されたことを知り、彼を突然解雇したのである。逆にジョディの方ではこの突然の解雇宣告に腹を立て、エナジャイズというスコットの持ち馬を駄馬とすり替える悪質な仕返しに出た。馬主は調教師に馬を預けっ放しにしていて、普段からよーくその姿を観察していないから、外見ではなかなか他の類似の馬との区別が付かないものである。こうした馬主の盲点をつかれたのである。しかし、スコットの場合はその持ち馬の極端な変貌振りから、替え玉疑惑に気付きこれを密かに暴き返そうとする。ジョディと賭け屋が共謀して名馬エナジャイズを他のよく似た駄馬と取り替えて仕組んだ八百長レースを見抜き、逆にスコットの方が仲間と仕組んで、エナジャイズと駄馬を取り替える作戦に出る。ここまでは、ひょっとして現実にもあり得る話ではと思わせる、ディック・フランシスらしい迫真の展開であるが、スコットが密かにエナジャイズを取り戻して再度駄馬とすり替える展開部は、物語としては痛快であるが、余りに現実離れした筋立てであるため、多数ある他のフランシスの作品と比べてみて、残念ながら駄作と言わざるを得ない。 推薦度‐3.5