The Shack
人が亡くなるということは神が生命を奪い取るからだと理解したうえで、「愛を唱える神様が、どうしてこうも意地悪なのか?」と、6歳半の少女が父に尋ねるところから物語は暗示的に始まる。その少女が突然誘拐され、警察の懸命の捜索の結果、今は滅多に人が行くこともない奥深き山中の廃屋に遺留品が発見される。しかし、少女の姿は見つからず行方不明のまま、犯人も捕まらないまま月日は流れる。最愛の娘を失った父は、この”The great Sadness”をもたらした神の存在を信じることが出来ず、恨みさえ抱きながら失意の日を過ごしているといったころからシリアスな物語が軽快なテンポで始まるが、やがてファンタジックな物語に変貌していくという変わった趣向のストーリーである。そんな父にある日、少女の遺留品が発見された小屋へ来るようにとの不思議な手紙が届く。差出人の不明なこの手紙に半信半疑ながらも、父は小屋へ向かう。ここから物語は幻想的な世界に一転していく。廃屋と思われた小屋は美しい庭園を持つ居心地のいいロッジと化していて、そこに待ち受けるのは擬人化された神とその神に仕えるイエスと巫女の化身たちであった。この小屋で父は神の化身たちと数日過ごすうちに、全ての人の罪は許され、神の愛は全ての人に等しく注がれていることを悟らされるといった宗教的な対話が延々と続く。人情の希薄化した現代社会において宗教(キリスト教)の存在を再認識させてくれる物語として、アメリカでこの1年近くの間ベストセラーを続けているのは、なるほどと頷ける。しかし。唯物論者の私にはこのような宗教論、精神論、哲学論は、はなはだ理解しがたく退屈であったと言うのが正直な感想。 推薦度−3.5