THE RACKETEER
主人公マルコルム・バニスターは、田舎町の小さい法律事務所の弁護士であったが、知らないままに関与した不法な不動産取引の取引証書を作成したことから、他の無法者たちとの共謀の罪に問われ、いい加減な裁判の結果10年間の刑に服している。判決後、弁護士の資格は剥奪されているが、刑務所では法律の知識を駆使して、他の務所仲間の冤罪を解決する超人と崇められている。
一方で、自信の冤罪も晴らして、法曹界への復讐心を日夜たぎらせている。折から、連邦裁判所の判事とその愛人が殺害されて、過去の判決への恨みによる殺人との推測で、連邦政府の威信をかけての大掛かりな捜査が展開されるも、迷宮入りかとの新聞報道を目にしたバニスターは、真犯人を知っているとの情報と交換に、自身の刑期途中での釈放と証人保護プログラムをFBIに約束させる。真犯人と称する刑務所仲間もあっさりとその殺人を自白するが、公判寸前になっても自白と推測される動機以外に、物的証拠が何も出てこないため、検察は求刑に苦慮している。その間釈放されたバニスターは、証人保護プログラムを密かに抜けだして、彼自身が真犯人と思い描く人物を大掛かりな作戦によって、突き止めることに成功する。この辺りの犯人追跡劇には残忍な殺人や犯罪は全くなくて、喜劇的ドタバタの展開で茶番ではあるが、犯人が判明した後は、改めて再度の司法取引でバニスターの最初の司法取引に協力してくれた務所仲間の釈放にも成功して、大円団となる。
話は単純ではあるが、米国の犯罪法に、連邦や州の政府に重要な情報を提供する代わりに、刑を取り消したり減刑にできる「司法取引」の制度があるとのこと、新鮮な印象である。しかも情報提供者が報復を逃れるために、政府公認で氏名、仕事、ラシセンス、住居も含めて全て身分を別人に変更できるのは驚きである。この小説では整形手術で容貌までも変えてしまうし、生活費も生涯保障されるそうである。過去のマフィア撲滅の取り締まり強化の結果からできたせいどとのこと。びっくりである。
推薦度 ー 3.0