TO KILL A MOCKINGBIRD
ご存知映画「アラバマ物語(1962年:アメリカ)の原作である。アメリカでは中学・高等学校の教科書にも取り上げられるほどの名作である。1930年代、南部のメイコムと言う小さな街。弁護士一家を中心に繰り広げらる日常を小学1年生になったばかりの女の子の目を通して描いている。彼女スカウトはおてんば娘、何をするにもいつも4歳年上の兄ジェムと一緒である。母はスカウトの2歳のときに亡くなっていて、記憶には全く無い。そのような理由で男子まさりの腕白に成長しているから、近所や親戚の保守的な年配のミセス達からは、少しは女らしく振舞わねばと、非難の眼で見られるがその意味がわからない。近所には、随分前からブーと呼ばれる変人が幽閉されている家があって、その家に近付くと危険だと言われている。ならば確かめたくなるのが人情で、夏休みになると遠くミズリーから近所の親戚にやってくるディルとも仲良くなって、兄を先頭に三人でブーの存在を確かめようとするが、姿を見たことは無い。一方父は、町民たちの面倒な相続手続きなどを引き受けて細々と生計を立てている。家庭では何事も解決してくれる大好きな誇れる父である。ただ、少々歳を取りすぎていて、フットボールの相手をしてくれないのが兄のジェムには唯一の不満である。ある日、父には、白人女性をレイプしたとして、その父娘に訴えられた黒人への弁護依頼の仕事が舞い込む。公正無私の父は黒人贔屓との非難を浴びようとも、彼の冤罪を晴らすべく見事な弁護活動を展開する。スカウトも学友達から黒人贔屓の娘として苛められるが、父の仕事は正しいと教えられて成長していく。保守的で人種差別が激しかったこの時代の特に南部アメリカでは、黒人が無罪判決を勝ち取ることはあり得ないことであった。法廷での父の無罪証明の弁論は実に鮮やかで、街中が注視する中で、白人、黒人を問わず誰の眼にも無罪は明白であるものの、陪審は有罪とのやり切れない判決を下した。絶望した黒人は護送車から逃亡を試みて射殺されてしまう。一方、不合理な有罪判決にはなったが誰の眼にも冤罪は明白で、法廷で恥を掻かされた原告の父が、弁護士であるスカウトの父に恨みを抱いた。ハーロウィンの行事から家へ帰る夜道で兄妹は、恨みを抱く白人の原告から襲われるが、なんとその窮地を救ってくれたのが、危険であるからと幽閉されていたあの変人のブーであった。ブーもスカウトたちに好意を抱いて、いつも彼の家の中から外の3人に注視していたと思われる。変人のはずのブーが心優しい人とわかって、スカウトは身の回りに、いろいろな人の居ることを学ぶのである。推薦度−4.0