The Lock Artist
少年は8歳の時に悲惨な体験をした衝撃で、声が出なくなり話ができなくなってしまった。田舎で酒屋を営む伯父に育てられる。ある日、錠前の仕組みに異常な興味を持ち、古い鍵を開閉して遊ぶうちに。どのような鍵でも開く才能を身につけてしまう。長じて高校生になった彼は、鍵をなくした級友のロッカーを開けてやったところ、その友人たちの興味を引くこととなり、彼らにそそのかされて夜半にあるお屋敷のドアを解錠して忍びこむも捕まってしまう。罪として屋敷の主人から庭にプールを作るための穴掘りの労働を課せられる。毎日辛い労働に取り組むうちに、その屋敷の娘アメリアと恋仲になる。一方でプロの金庫破りから訓練を受けて、専門の金庫破り請負人に育て上げられる。彼の芸術的技能を頼って、見知らぬ犯罪者たちから、師匠の金庫破りから渡されたポケットベルを通して、様々な金庫破りの助っ人依頼が飛び込んでくる。犯罪者と違って金庫の中の大金には興味はないが、高度な技巧を要するスリリングな解錠要請は断りきれない日々を送るようになる。恋仲のアメリアとは、彼のもう一つの才能である巧みな描画を通じて心のなかの思いを語り合う仲になる。彼女は彼の失語症の原因と密かに取り組む行動を知りたがる。そんな彼の過去は打ち明けることが出来て、彼女の気を引くのであるが、金庫破りについては打ち明けられないまま、ある大仕事の中の仲間割れの混乱の中で警察に捕まり、刑務所生活を余儀なくされることになった。彼自身はどんな鍵でも開けるので、脱獄も可能であるが、この物語はその可能性に含みを持たせつつ、今は口で語れぬ彼の回想を、文章にして刑務所内でこの物語を綴っている形態になっている。
推薦度-3.5