LIVE BY NIGHT
酒類の販売を禁止した米国禁酒法時代の末期1926〜1935年、10年間に渡るギャング抗争物語である。マフィアの資金源は一般に窃盗とギャンブルに限られていたが、この時代彼らがアルコールの密造、密輸、販売でいかに繁栄し、その違法行為をを取り締まる警察や税務当局を抱き込み買収することで社会秩序を腐敗・混乱に陥れた当時の米国社会の裏面を克明に描いた歴史社会派小説と捉えるだけでも価値ある物語である。
ボストンの裏町のチンピラであった主人公の少年ジョーが、ギャングの手下を経て、最後にはフロリダのタンパを中心に暗躍する大親分にのし上がっていく過程を見事に描きあげている。感傷や恐怖に流されない、冷酷非情、精神的・肉体的に強靭、妥協しらずのカリスマ的な人間性を存分に表したハードボイルド小説であるが、反面そんな非情なギャングであっても、ひとなみ以上の親子愛(特に父が息子、娘に注ぐ深い愛情)、友情(子分への信頼)、恋心の情愛の深さ、更には神への信仰心をも織りなすことで、ギャングの生きざまが決して悪だけではないと、賛美さえしているのである。昼間を生活する我々一般社会では法に従わねばならないが、「夜に生きる」ギャングには法などは通用しない、個々の掟に従って目的を果たす世界である。しかし、「欲望のためなら、無暗に殺人を犯すギャングと利益のためなら借金返済に困った善良な市民を合法的に路上に追い出す銀行経営者とでは、何処に違いあるというのか」と主人公に嘯かせているほどである。
推薦度 3.5