LABYRINTH
700頁の長編。中世フランス南部で使われたオック語(Occitan)が随所に出てくる。巻末に簡単な用語辞典が引用されてはいるが閉口した。
物語に出てくるフランス南部ピレネー付近の地図は巻頭に提示されているが、十分ではない。ウェブサイトからこの地域の地図をダウンロードしたのを参照しながら読んだので、臨場感が増大した。
ピレネーの山中、考古学の発掘現場で発掘作業のボランティアに携わる主人公アリスが中に入ることを禁じられている洞穴で二つの遺骨を発見する。遺跡の発見か、殺人事件の遺体発見かを巡って、地元警察を巻き込んだ捜査が始まる。その捜査の前にアリスが現場からこっそりと持ち出した謎の古文書は、アリスが気を失っている間に行方不明になる。
さてもう一人の主人公アライス、こちらは13世紀のフランス南部、ラングドック地方を支配する領主が重用する家臣を父に持つ若くて勇気ある女性の数奇な人生の物語である。、当時異教徒とされた教団は聖杯の在り処を3分冊にした書物に記した。3冊揃わないと在り処は判明しないことになっている。アリアスの父はその1冊を代々密かに守り継ぐようにとの命じられた隠者であったが、その身分を隠して異教徒にも寛大であった領主に仕えていた。しかし、十字軍の異教徒への弾圧は厳しく、やがて領主も父も十字軍との戦いに敗れる。主人公アリアスは父の遺志を継いで超人的な勇気でその書物を守リ抜くが、聖杯の秘密を知ろうとする姉との争奪戦に力尽きる。最後姉妹二人は書物を携えたまま現代のアリスが謎の古文書を見つけた洞窟内に閉じ込められて朽ち果てる。書物も永遠に洞窟内に眠ることとなる。
一方現代は、中世の主人公アライスが守り抜いた聖杯の在り処を顕した古文書の隠し場所を探し出して、聖杯を我が物にしようとする一味が、アリスが洞窟から持ち出した古文書に気付いてその所在を必死で突き止めようとする。対するアリスはその行方不明の書物を取り戻そうとして、両者がバトルを繰り広げる大活劇仕立てになっている。
現代と中世のストーリーが交互に繰り広げられて、長編を厭きさせずに読める仕組みになっている。中世の歴史に精通していれば更に興味が盛り上がるだろうと思う。―
推薦度4.0