GONE GIRL

ニューヨークで裕福に育った女性Amyとミズリーの貧しい田舎育ちの男性Nickの幸せだった結婚生活は、夫Nickが雑誌記者としての職を不況のために失う頃から徐々に荒んでくる。二人の5年目の結婚記念日に妻Amyが突然失踪する。家出?誘拐?殺人?警察の捜査が進行しないまま話は始まる。難解な文章ではあるが、失踪の原因が知りたくて、早く先を読み進みたくなる面白い展開である。但し、抽象的(文学的?比喩的)な表現が多いので、読解力が未熟な私には語感からのイメージが沸き上がりにくく、解読に難渋した。横道に外れた過去や現状の冗長な解説も随所に出てくるから、話は必ずしもテンポ良く進まない。これが先へ読み進みたくなる効果になっているのかもしれない。
Nickが失業したのと、ミズリーの故郷にいる病弱の両親を介護する必要もあって、Amyは渋々ではあるが、夫婦でミズリーの田舎町に転居することになる。当面の生活はAmyの潤沢な蓄えから融通した資金で小さいバーを開店させ、Nickの双子の妹(彼女も失業して故郷に戻っていた)と一緒に運営することになる。
一方、Amyはニューヨ-クからミズリーに引っ越す頃から、既にNickの妻ではなく、廃棄物処分場かミシシッピー川にでも投げ捨てられるのではと、不安な気持ちになっていることを日記に書き残していた。Amyの失踪を調べていくうちに、幸せな結婚生活の破綻に失望して? 或いは誰かに脅かされて、身を守るためにか?Amyが拳銃を買おうとしていたらしいことを、廃墟の商店街に屯するホームレスから聞き出すことができた。Amyの日記には、いろいろなストレスの所為か、NickがAmyに暴力を振るうようになったので、万一に備えてピストルを買ったと記述が残されている。何処かで人知れず自殺をしているのでは?しかし一方で、Nickが後ろめたさを匂わせる秘密の疑惑を抱えていて、後悔しているような気持も漂わせるから、読み手にひょっとして彼がAmyを殺したのではと思わせる。
というのも、相変わらずAmyはNickのことで常に頭が一杯である。Nickに従いて渋々ミズリーの田舎に移ってからも、一生懸命にNickに尽くしているのに、NickのほうはAmyから心が離れているのではとAmyは心配でならない。実際、Nickに愛人がいたとことが発覚するからびっくりである。またAmyはNickの望まぬ妊娠をしていたことからNickの殺意を予感してるとも、日記に書き残している。このような状況から、警察の疑惑がNIckに向かい始めたようである???警察と街中が、そして一躍全米に拡がった報道でNickに殺人犯の嫌疑が振りかかる。それでも、彼は残された数々の証拠からAmyが彼を殺人犯であるかのように演出したうえで、何処かへ失踪したと確信して、彼にまだ好意的なTV局のニュース・ショーに出演して、懸命にAmyに帰ってきて欲しいと訴える。彼の無実を晴らすには、彼女が帰還するしか無いのである。・・・・・失踪するために必要な資金を失った彼女は、やむを得ず高校生時代に彼女に好意を寄せ、今も彼女に執着しているボーイフレンドに密かに庇護を求めて隠れるが、逆にその執心に囚われて逃げることもならず、NIckの懸命の呼びかけに応えようと、庇護してくれたボーイフレンドを今度は実際に殺して、誘拐から身を守るため命からがら逃げてきたと偽って現れる。Nickの潔白は証明され、Amyの言葉も信じられて事件はハッピーエンドとなるが、NickはAmyが殺人を犯していると確信し、Amyへの愛も元々失せていたこともあって、TVで訴えたほどには元の夫婦生活には戻れないまま、愛しあう夫婦を気取って悶々と過ごすことに悩むのだが、Amyがかって保存しておいたNickの精子を使って妊娠したことから、最後には生まれてくるベビーの良き父としてやっていく決意をすることになる。世の東西を問わず、結婚継続のための複雑な課題は普遍的に難解かそれとも単純なことなのかを示唆したもう一つのミステリー小説であった。
推薦度3.5