THE DEVIL'S FEATHER
アフリカ、シエラレオネ共和国で5人の女性が殺害された。元少年兵3人が起訴されるが、主人公のロイター特派員コニー(女性記者)はイギリス人の傭兵マッケンジーが真犯人であると疑う。そして2年後、バグダッドで彼に遭遇したコニーは、彼を疑っていることへの逆恨みから拉致・監禁されてしまう。しかし、不思議にも数日後に無傷のまま解放されるのである。でも、彼女は監禁中の出来事を警察に詳細に話そうとしない。それよりも、再度襲われるのではないかという恐怖心から、事件の全貌を公にしないまま、イギリスの片田舎に古い一軒家を借りて身を隠す。監禁中に女性としては口に出せない屈辱を味合わされたらしいことが、少しほのめかされるし、容疑者マッケンジーの過去の足跡をたどると、数々の性的倒錯事件を引き起こしていること、肉体が超人的であること等も含めて、異常精神病質者であることも明らかにされるから、彼の追跡と彼女がどのように対決するのかについて、興味が湧いてくる展開ではある。
しかし、期待はずれに終わる。文字通りの竜頭蛇尾。ここからテーマが2つに分かれて、どちらの話に注力すればばよいのか、気が削がれる。
身を隠した借家の管理人ジェスとそのジェスを取り巻く近隣住人との複雑な関わりの物語が、新たに延々と始まるのである。従ってコニーとマッケンジーの対決は一時休眠状態になってしまう。新たに、ジェスの家族とコニーが借りている家の家主との確執の歴史、家主の娘が、家主である年老いた母親の面倒をジェスに任せたまま、遠くロンドンに離れて暮らしていて、できるだけ早く遺産相続を手に入れることを望んでいる。そして、相続実現のため、早く母が亡くなればとの思いから、殺人まで企わだてているのではと疑う確証をジェスがつかむ。
そのようなところへ、恐れていたマッケンジーが突如借家に侵入してくる。この不法侵入の経緯・手段が曖昧で唐突であるから、読み手は不満である。ジェスの協力を得て、彼女が飼育する獰猛な番犬4匹に絶えず守られ、すべての扉や窓の施錠は完璧に防御しているのに、気づかれずに突如侵入してきた。しかし、それはそれとして、今回はコニーは勇敢に戦って、侵入者を打ち負かすのであるが、警察が到着する前の僅かな隙に侵入者は何処かへ逃亡してしまう。読み手はまた欲求不満に陥る。
もう一方のテーマ、母親殺人未遂事件の方も、証拠を得ることに成功するが、ジェスと家主親娘のあいだに複雑に絡む家系を白日に晒したくないとの理由から、これも警察へは届けないまま、闇に葬ることで終焉するから、読み手に不満が残る終わり方である。
どちらのテーマも異常精神病質者を犯人に仕立てて、この厄介な犯人を、物理的手段によらず、いかに心理的に追い詰めていくかを描こうとしているようだが、ロジックとの整合性が完璧にとれないまま、読み手に消化不良の思いを残す結果になったのは残念である。凡作
推薦度3.0