THE LAST CHILD



   ノースカロライナの田舎町で一人の少女が誘拐され、その所在が不明のまま1年が経過している。その少女の双子の兄は僅か13歳の子供にもかかわらず、妹発見の手がかりを求めて、町中の不審者を一人で探り続けている。妹が誘拐された原因は、妹の帰りを迎えに行く約束を違えた父の所為だとする、母の激しい非難のため、父は家出したまま行方不明である。その母も事件後はすっかり身を持ち崩して、町の有力者の囲われ者になり果て、薬漬けの毎日である。事件を担当する警官は仕事熱心の余り、妻が離婚するまでに家庭崩壊状態であるが、そんな少年母子に気を配り、事件解決のために奔走し続けている。少年も独自に不審者をしらみつぶしに探っていくうち、何人かの怪しい犯人と思しき者たちに行き当たるが、そんななかで新しい少女誘拐事件がまた発生する。少年の活躍と警察の捜索でこの少女は無事に救出されるが、妹の発見に繋がる手がかりになる筈の犯人は射殺されてしまう。他にも何人の不審者や目撃情報を持つと思われる人物にたどり着くが、こちらも次々に殺されて、もう一歩というところでスリル溢れるどんでん返しが繰り返されていく。最後にある手がかりから、町外れに残る旧い鉱山の廃坑で漸く妹の遺体が見つかるが、その犯人は意外な人物と分かって、物語を読み続けてきた身にはやり切れない気分が漂う。アメリカ社会、いや日本でも現実にあり得るシチュエーションだろうなと思うと、一層重苦しい読後感に浸らされる。もっとも、現実なら迷宮入りするであろう事件を、ここでは「神の存在」を重要な軸にして、解決の糸口を展開したところは、アメリカらしい手法かなぁとの印象である。英語は平明で読み易いことを加味して、推薦度―4.0


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