ALIAS BASIL WILLING
ある夜、ウィリング博士が自宅近くのたばこ屋で見かけた男は、「私はベイジル・ウィリング博士だ」と名乗って、タクシーで走り去った。自分と同じ名前に驚いたウィリングは、
直ぐにその謎の男の後をタクシーで追跡するが、途中で見失ってしまう。
この辺りと見当をつけて潜り込んだ家ではパーティーが催されていて、
先ずは予定されていた招待客のひとりとして、快く受け入れられるが、謎の男は参加者の中にいなかった。
しかし、しばらくすると、その男がパーティ会場に現れて、矢張りウィリングだと名乗ったところで、
二人は、主催者のチンメル博士に怪しまれて、会場を追い出されてしまう。
パーティーは6組の男女、計12人で計画されていたが、番外のウィリングと偽のウィリングが飛び込んだせいで13人となり、ホストのチンメル博士が混乱したからである。
行くあてのないふたりは、取り敢えず近所の小さなバーに落ち着くが、
そこで謎の男がウィリングの目の前で突然、「鳴く鳥はいなかった」という謎の言葉を残して死んでしまう。
警察の検死の結果、薬物の過剰投与による殺人であるとわかる。
しかし、犯人は?動機は?事件発端の意外性に興味を呼び覚まされるが、
その謎解きが、まったく冗長、退屈でつまらぬストーリー展開である。
否、何も展開しないのである。
延々と12人のひととなり、夫婦であるとか、親子だとか、精神的健康障害があって、
チンメル博士の治療を受けているとかが、順に延々と説明されるだけで、
各人に殺人の動機になるような争いごとや恨み言があるわけではないのである。
殺された謎の男との関係も彼らには全く繋がりが無い。
一体誰がパーティ会場で、どのような手段で、薬を投与したかも判らない。
ただ、招待客のひとりで、偶然にパーティから帰宅後直ぐに急死した盲人の老人キャサリン・ショウ夫人が
雇っていた私立探偵であったことだけが判る。パーティには彼女のパートナーとして参加する旨
知らせてあったが。彼女が何のために私立探偵を雇い、パーティに同伴させたのかは判らない。ただ二人が同時に謎の死を遂げたことで、
疑惑だけが大きくなる。
こうして、最後にホストのチンメル博士が殺人犯であると説明されて物語は終了する。一応動機と殺人の手法は述べられるが、読者には全く推理するハラハラドキドキの楽しみは与えられていない。凡作である。
推薦度3.0