The Curse of Bambino

1903年に結成され、100年を越える歴史を有する、アメリカで最も人気のあるプロスポーツと言えば、メジャー・リーグ・ベースボール(MLB)野球であることに紛れは無い。その中でも名門中の名門チームは、ニューヨーク・ヤンキース(NYY)とボストン・レッド・ソックス(BOS)である。日本で言えば、巨人と阪神のような存在に当たる。両チーム特に阪神ファンの熱狂振りは広く日本中に知れわたっているところである。負けても負けても何十年もの間懲りずに応援し続ける熱意には頭が下がる。1985年の日本シリーズ制覇を最後に永らく低迷が続き、2003年に18年振りにセ・リーグ優勝を果たしたときの歓喜は語り尽くせぬ伝説となっている。そんな阪神によく似た名門チームがレッドソックスである。否、これは阪神以上の壮絶な歴史を有するチームの物語である。1903年のMLB創立期最強のチームで、'03年、'12年、'15年、'16年、'18年と5度のワールド・シリーズの覇者となっている。'18年には球聖ベーブ・ルース(愛称バンビーノ)を擁して優勝している。ボストンではもっとも人気のあるプレーヤーであった。しかし、その後のチームは低迷する。バンビーノは人気はあるが、我がままでチームワークを乱し、チームのためにならない。'20年にオーナーは本業の劇場経営の建て直しのためもあって、高給のバンビーノをヤンキースにトレードした。ボストンの熱狂的なファンはこのトレードに激怒したが、オーナーは団結力ある強いチームを作ると約束した。しかし、それから'46年まで実に28年間もリーグ優勝が果たせなかったのである。その後、'67年、'75年、'86年とリーグ優勝はするが、ワールド・シリーズ制覇には2004年までの実に86年間もの年月を要したのである。その間ヤンキースはなんとリーグ制覇を39回、ワールド・シリーズの制覇も26回成し遂げているのである。ボストンのファンはその間86年もの間、今年こそ今年こその期待を裏切られ続けてきたのである。ニューイングランドに生まれ育った者は、反抗期には親の言葉に逆らうが、レッドソックスを応援することのみは親の言うことを聞くという。そんな熱狂的ファンが生きている間に一度は優勝してくれと応援し続けているが、中々勝てない。もう少しのところまで行くが、信じられない負け方で最後には裏切られてしまう。こうして勝てないのは、全て'20年にレッドソックスを愛したバンビーノをヤンキースに売り渡したがための彼の恨みが地元フェンウェイ球場に取り付いていて、足を引っ張るとの伝説がいつの間にかまことしやかに出来てしまった。こんな伝説を証明するがごとき、不思議な、奇妙なゲームの展開を数々取り上げたのがこの物語である。 推薦度−3.5