2002年釣行 第五章 6月第一回目


雨の予定でした。

週間天気予報では雨でした。

ところが2〜3日前の予報では曇りに、そして当日は(作者の苦手な)快晴です。

朝4時起きでいつものところにとばします。昨日の週末の疲れが残ってますが、

釣りの日の朝はシャキッとしてます。

4時40分にいつもの餌屋で「イ貝と渡船」で¥1,900 支払いを済ませ渡船場へ。

5時出船ですので悠々と間に合います。

6月ともなると朝5時にはすっかり辺りも明るくなって人の顔もはっきりくっきりと。

道具を抱えて船に乗ったとたんに話しかけられました。

「久しぶりやなぁ!1年ぶりぐらいとちゃうか?」

ええっと、どなたでしたっけ?すっかり忘れてて思い出せません。

ここで「どなたでしたっけ?」なんて聞いてはいけません。

"袖スリ合うも多生の縁"じゃなかった"竿出し合うも多生の縁"

同じ"落とし込み同志"で同じ船に偶然乗り合わせた者同士ですので・・・・・

ここは、一番知ったかぶりをしてにやにや笑っていました。
(向こうの出方を待ってます)

「どぅ、釣れてる?今日は何処行く(何処で降りる)の?」

「ここ2ヶ月ほど頑張ってるけど全然ダメ。ボウズの連続で・・

大好きなのポイントにチヌ(黒鯛)が見えないんだもの。

今日は●●で降りようかなって思って」
(どうやら、会話になりそうです)

「●●か!あそこは、低いからこっちが丸見えや!チヌが警戒してるし難しいで!

いつもの○○で降りるんじゃあないの?」

作者の事よく知ってるなぁ!

あちらの方は、しっかりとこちらの顔を見て、話しかけてこられます。

人間違いではないようで・・・・・でもこちらは焦ります。えっと誰だっけ???

同じ会社の人じゃあないし・・・・・っと!ここで諦めました。

あんまり悩んで会話がぎこちなくなっても何ですので、完全に調子を合わせるために

こっちから攻勢にでます。

「先月○○に行ったんですけど、チヌの姿が全く見えなくて、アタリも全くなし!

それに、イ貝が落ちてたんで・・・・!●●はストリンガ−が沢山あったもんで

良いかな?と思って・・」

「そうか。今日は、○○で降りるんやけど人が多かったらどうにもならん。

あの前の軍団(船の舳先に乗ってる4〜5人の黒服軍団)が一緒やったら、

今日はダメや!」

「あぁ!あの軍団は、落とし込みじゃないみたいだけど?」

「そうか、良かった。まぁもう少し経って8月になると"夕間づめ"にデカいのがくるよ。

午後3時から午後6時半の3時間半の勝負で、フジツボが餌に出回る頃に大きいのがくる。

2匹も釣れれば充分。2匹も一度に食えないしね」

何とか、疑われずに会話になりました。

船が●●に近づいた頃「じゃあ・・行ってきます。お先に!」

「何時まで?12時までか?」

「12時に上がります。熱いし!」

「そうやろ。こっちも12時や。帰りにな!」

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無事に船から脱出して、ポイントへ。

道具を用意している間に、さっきの事は何処へやら。気分はすっかり"釣り志"です。

同じポイントで5人降りました。

でもここは、長く(広く)20人くらい降りても何とか釣りになります。

前回のバラシに懲りて、今日は「憑いている竿」

(霊が乗り移っている訳ではありません)を使用します。

前回は海面まで低いので、あまり使用しない短い竿の方を使いました。

(そのためか釣れた時の力のかけ方が合わなかった様でバラしたと勝手に思っています)

先月、好調に釣れてた場所へ急ぎます。

イ貝は一つにしたり、ダンゴにしたり、色々組み合わせて落とし方も変えて頑張ります。

1時間ほど頑張ってた頃、後ろの方で誰かが、なにやらもぞもぞしています。

餌の交換かな?なんて、思ってた時ストリンガ−を持って立ち上がった。

「なんや、釣れてたのか」

焦ります、非常に焦ります。

隅々まで丁寧に探りますが、見放されてるようでアタリすらありません。

ポイントを移動する事にしました。

1Km程歩いた護岸に移動します。

ここは、始めた頃に来たきりです。潮の動き・ポイント・落とし方など手探り

状態みたいなものです。

「いつもの○○だったらなぁ」なんて考えますが、

「なにを言ってる!どんな状況でも釣らなきゃ。落とし込みの資格無し」って

自分を叱りつけ頑張りました。

日も高くなって来た頃、午前の8時前頃でしたか・・・

ここの護岸は水面下1mくらいのところに海藻が付いています。

その海藻を通過させてから、護岸にイ貝を近づける様に落とし、如何にも

「護岸からイ貝が落ちてきた」様に落とすのが基本です。

その基本通り、海藻を通過させたと思った頃、沈むのが止まりました。

こんな時は、最初から沈め直さないと海藻を超えられません。

「ここは海藻が濃いなぁ」と思って引き上げた時、海藻に引っかかったのか

ズンって手応えが・・・・こんな時は間違っても良いので強く合わせます。

ビシッ!と引いても浮き上がりません。

根掛かりか!と思ったのと、ビンビン手応えが有ったのと殆ど同時でした。

グッ−っと潜り始めます。「やった!掛けたぞ」と思いましたがここで気を緩めては、

前回バラシの二の舞です。竿に集中しチヌの顔をじっと待ちます。

竿が逆Uの字に曲がって竿先が水面近くになっても慌てず騒がず

「よしよし、大丈夫だ。上がってこい!上がってこい、もう少し・・

ラインは、絶対切れない、針は外れない」と信念と余裕で頑張ります。

さすがいつもの使い慣れた竿。(曲がり方なんかを見てほれぼれしてます)

やっとの事で顔を拝見する事ができました。

「ちょっと小さいかな」って欲張ってます。

タモを用意したとたんに横走りされました。

さっきからのファイトでバラす可能性は低いと判ってますので、

余裕でタモを水面につけたまま、片手で寄せてきます。

そして、無事にタモイン!

「うっしゃぁ!」良くやった感動した!おめでとう!
           
(小泉か?)

長かった、3月より何度ボウズを繰り返したか。

ゴ−ルデンウィ−クのノッコミを逃すわ、大好きなポイントはさっぱりで

「もう今年は、ダメか」と諦めかかってました。

それでもがんばり通して、ボウズを5〜6回乗り越えての"お初"でした。

35cmでしたが、ちょっと小さめでしたが「やった」

大切にストリンガ−に掛けてキ−プします。

そのすぐ後30分後くらいでしょうか。

イ貝を引き上げている時にガツンとなにやらヒットしました。

「おかしい。チヌは絶対にこんなアタリ方はしない」それに引きが弱く

横走りします。

上がってきたのを見てびっくり何とハネでした。

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(ハネ:スズキの小さいの。スズキは成長魚で大きくなるに従って 
    セイゴ→ハネ→スズキと名前が変わります。50cm近くありましたから
    立派なハネでしょう)
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イ貝にとびつくハネなんて初めてです。

でも、タモですくってから原因が分かりました。

[捕食魚であるハネは、イ貝を魚と思ってとびついた。
 とびついたは良いが、でっかい口を通ったイ貝はエラを通過し
 外へとびだした、そこを作者が引っかけたものだから
 そのまま引っかかったままタモイン]
。と言う次第。

当然タモ内で暴れるうちに針はイ貝ごと外れていましたが。

折角釣れたおいしそうなハネですので迷わずストリンガ−に確保します。

その後もあっちこっち探ったり、釣友達に「どうですか?アタリあります?」

何つって、広〜いポイントをあっちにこっちにう〜ろうろ。

とうとうくたびれました。熱かったのもありました。9時頃だったでしょうか。

やっとの釣果にほっとしたのかも、ぐったりしていましたので座り込んだら

疲れがどっと出てきて、横になって・・・グ〜っと伸びをしたら何と気持ちの良い事!

夕べ熟睡できなかった事、朝早かった事、緊張からの開放感から・・・と

理由は幾らでもありますが、しばし目を閉じて休憩です。

9時半頃に起きあがって再び釣行開始ですが・・・・・・ダメでした。

追加のチヌはゲットできずに、とうとう12時の納竿です。

船の中で"朝の人"と・・・・

「どや?釣れたか?」

「1匹だけ、小さいけど35cmくらいのを」

「そうか、1匹でも釣れたらええが。こっちはもっと小さいのを1匹だけや」

「それとハネを1匹。イ貝をあげてくる途中であたりよったんで。

おいしそうやから持って帰ろうと思って」

「持って帰り、持って帰り。折角やないか、ハネやったらおいしいで」

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とうとう名前は思い出せなかったけれど作者の気持ちにぴったりの"いい人"でした。

「また、お合いましょう」で別れしました。

帰宅後このお初チヌは、刺身とアラ炊きに、ハネは塩焼きに家族会議で決定しました。


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