2002年釣行 第三章 5月第一回目


昨日に引き続きがんばります。
ゴ−ルデンウイ−クは集中して釣行できますが。
厄年を超えた身体には堪えます。この落とし込みという釣法は足で稼ぎます。
目は竿先に集中し、手も竿の変化をとらえるため緊張し、心身共に疲れます。
釣行から帰った日なんぞ1時間ぐらいボ−ッとしてますし、
次の日にも疲れが残ります。
今日も全身がけだるく、朝起きるのに苦労しました。
天気は一番好きな雨です。
何故雨が好きかって?
それは、雨で海水が濁りチヌの活性が上がるからです。

「雨の日は良いことが多い」これ私のジンクスです。
それに、釣行する人も少ないし、第一に「エサ捲き軍団」が居ないから。
雨の日に釣行するのは、落とし込み志("師"はやめました)ぐらいでしょうか?
朝6時の船ですが、渡船は思った通り一人でした。
「雨が降るのに!(ホント物好きやなぁ)」って船長さんと二人で笑ってました。
昨日と同じポイントを探るつもりでした。
今日は、イソギンチャクがあるので気分一新です。

昨日のポイントに着いて

「帰りは何時や」と聞かれました。
あっ!そうか。今日は一応は平日だ。それで帰りの時間を確認してるんやな。
休日なら聞かずに、定期便みたいに決められた時間に迎えに来る。
それに、今日は一人だもんね。船長さんも一人のためにそんなに度々こられんやろ。

「3時か?」

「うん。3時ね、3時でいいよ!」
と気の弱い小生は逆らえずにうなずきました。
(本当は12時(正午)か3時か迷ってました。家内には了解を取ってましたので)

降りしきる雨は激しく、渡船から降りて目的のポイントに着くまでに、
もうカッパはビチャビチャで「しずくがしたたり落ちる」というより
滝のように流れ落ちていました。

「今日は、ホントに物好きしかおらんやろ」とポイントに着くと、
5時の船で渡ったのか
「物好き」の先客がもう三人ほど、落とし込みをしています。

小生も早々に用意をして探りにかかります。
竿先にも、ラインにも雨があたって、アタリがよく分かりません。
それでも「辛抱辛抱!」と探ります。

「おはようございます!どうですかアタリあります?」

「いえいえ、ぜ〜んぜん。だめですねぇ」

「エサは何ですか?」

「蟹とイソギンチャクですけど、そちらは?」

「イ貝です」
落とし込みの方とのおしゃべりは、大切な情報交換です。
今日のエサは何が良いか、今日のチヌはいったい何を食うのか。
この情報が大切で、全然食わない餌で探っていても、ボウズですから。

頑張って、辛抱して9時頃まで探っていました。
エサを変えたり、落とし方を変えたり、誘いをかけたりあらゆる事を試しますが
昨日と同じで、全くアタリ無し。

「おかしい。昨日と違って雨と風で濁りがはいっているのに何でや?」
ポイントを変える事にしました。ここから歩いて10分の自称第二ポイントです。
途中、先ほどの情報交換のお方たちを覗きましたが、
全くだめの様でストリンガ−はかかっていませんでした。
自称第二ポイントで、気分を一新し探り始めました。

気分は一新してもアタリは一新されません。焦ってます。
そのうちに、雨もやんで、薄日が差して来ました。
もうポイントを3周ぐらいしたでしょうか。
疲れ果てた頃、12時だったでしょうか携帯電話が・・・・

「今、何処ですか?」

「いま?僕の大好きポイント」

「はっは。車があったもんで・・・いまから行きます。釣れてます?」

「全然だめやがな。全然おらへんで。今年は魚の姿が見えん」

「ホントですか、何処へ渡ろうかなぁ・・・・何時までやりますの?」

「3時まで頑張るわ」

「釣れたら、電話下さい」

「OK」で切れた。
K君だ。これは小生の落とし込みの先輩格で、たいがいは釣果をあげてる。

「こりゃまけてられんわ」
しばし身体を休ませて焦った心を落ち着かせて、作戦を練り直します。

「一番好きな奥のポイントそれにここのバ−スのポイントもダメ(魚影が見えない)
 其処のテトラでも型は小さい。
 となると・・・・そうだ、ここの西歩いて15分はかかるかな。
其処にも小さなバ−スがある。あそこの支柱付近は探ったこと無い。
また、探ってる人も見たこと無い。ひょっとして・・・」
で勝負をかけた。
いま12時30分あと2時間30分だ。片道15分として往復に30分
釣ってる時間は2時間が限度。
其処へ歩いて行くには、テトラの上を延々と歩くか、テトラの上1mに幅30〜40cm程の
防波堤があり、その上を歩くか?
この防波堤はスリル満点で、西に向かって立つと左(南側)は1m下にテトラ、
右(北側)は4〜5m程下に工場のメンテ用道路がある。この道路は工場の敷地内で
釣り竿片手で歩いていたりすると叱られる。

選んだのは、防波堤の上。テトラは長い距離を歩くと足首に負担がかかりすぎて
油断から落っこちそうになる。
熱くなってきたので、カッパを脱いで、ク−ラ−を置いて、必要な道具だけ持って
足下をしっかり見据えて「確実に、確実に」って言い聞かせて歩き初めます。

テトラへの転落なら打撲傷程度で済むかもしれませんが、右(北側)の4〜5m程下
の工場メンテ用道路への転落は、軽くて骨折。下手をすると・・考えただけでぞっとします。
その方が早く楽になれますが、そんなことは考えずにおきましょう

歩くこと15分、やっと目的のバ−スに着きました。
バ−スの上は、立ち入り禁止ですので手前のテトラから探ります。
ここでも頑張りました。
少しのアタリも見落とすまいと必死でした。
心が萎えそうになると「釣れるはず、釣れるはず」と奮い立たせます。
でもというか、やっぱりというか「
ダメ」でした。
時間は2時20分でしたが早々に諦めました。

帰りの防波堤の上は、本当に怖かった。
朝から頑張ってましたので精神的、肉体的疲労も限界に近づいていました。

途中で目眩がして防波堤の上でうずくまりました。
何と 4〜5m程下の道路が波打って流れています。
はっきりと見えました。

「これは大変な事になった」と自分でも思いました。

落ちないように、落ちないようにと集中して、しっかりと見つめてと思って歩いていた時
堤防の上と、下の道路が一緒に見えて、高低差が無くなって見える時がありその時
一瞬でしたが「ボ−ッ」としてました。ハッと気が付いて、うずくまった時の事です。
道路が波打って流れるのがはっきりと見えました。
当然、目の錯覚だと判っていますが、こんな調子ではいつ転落するか分かりません。
まだ、半分ほど残っています。

しばらくじっとしていて、体力の回復を待ちます。
そうっと立ってみて、確かめました。
もう、道路は波打って流れてません。
手に持った道具、釣り竿と蟹桶、背中のタモ網等を確認し、再び歩き始めました。
あとで判ったことですが、テトラに降りればよかったのです。 
 時間はかかりますが、確実に帰れました


歩く速度を落として、ゆっくりとゆっくりと。
目眩がしかけたら、すかさず立ち止まり休憩します。
何度かの休憩のあとやっと、いつものポイントまで
10mぐらいのところまでたどり着きました。
ここが一番危ないところです。だって言うでしょ

「百里の道を行かんとする時は、九十九里をもって半ばとせよ」って
これは、私の座右の銘みたいなものです。
仕事も同じですけどね!
単車で青森まで往復した時もこれでした。
帰ってきて兵庫県に入った時も「まだ半分だ」って言い聞かせてました。

オ−バ−な言い方ですが、最後の気力と体力を振り絞ってやっとたどり着きました。
2時50分でした。

ク−ラ−のところに戻ってしばし休憩し、3時近くになってk君に電話を入れます。
この電話が、疲れた私を更に打ちのめしてくれました。

「どう?釣れた?」

「はい、釣れました」
なぬ!聞き違いか?

「こっちは全然ダメや! 釣れたの?何処に降りたの?」

「○○○のテトラです。小さいけど35cmぐらいのを1匹。結構アタリがありますよ」って
こりゃあかなわん!さすがやなぁと感心しますが。

「何時まで頑張るの?」

「5時過ぎまで頑張ります」

「そぅ!こっちはもう帰るわ」
ホントに疲れました。「大山鳴動してネズミ一匹」どころかボウズですわ。

「あぁ、明日はゴ−ルデンウイ−ク中の休日出勤やのに。気持ちよく出勤したかった」
なんて嘆いて帰ってきました。


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