6号機 Model-Gatto MJ-C Type  Part;1

ブレイスの配置については微妙な変化をつけていますが基本的なXブレイシングを採用しています。
私は製作家の指導など一切受けていない独学製作者ですので一つ一つの構造や部材について
深く理解をしていません。ですので毎回微妙な変化をつけながら、その変化を体感することによって自分なりに理解
していこうと考えてこのような施工を繰り返しています。
タップトーンひとつにしてその内容は深く、恐らく多く数をこなして経験として理解していくしかないようです。
きらびやかで輪郭のはっきりした高音域に伸びやかで鳴りのいい低音。
これをなんとか表現したいなぁ〜と常々思い、製作しているのですが答えは深い霧の奥です。
しかし、微妙な変化は確かに感じていますので、この積み重ねによりいつか理想の音を出せるようになると信じています。
強度に関してもリペアの経験も多くありませんので表甲板のトラブルなどについて想像の範囲でしかリスクヘッジできません。
がこれも経験の積み重ねなんでしょうね。
ちなみにこの6号機では5号機からフィンガーブレイスの角度および形状を変更しました。
完成後の弾き比べが本当に楽しみです。

まず目に飛び込むのがトップ側、サウンドホール廻りの装飾です。
今回は最近特に気に入っているジリコテを使用します。
じっくり見ると浮き出てくるエキゾチックな杢目に吸い込まれそうになります。
このジリコテを中心に内外両側にアバロン貝をふんだんに散りばめます。
貝装飾は派手ではありますが沢山のルシアーが使用するデザインだけにオリジナリティには欠ける装飾とも言えます。
しかし、ここでMIWA GUITARSでは最近おなじみのカッタウェイ方向にパーフリングがはみ出ていくデザインが加わりますので
他にはないデザインといえるものとなります。

この考えを基軸に材量の加工を進めます。

インレイする材量の加工ができればトップ材に溝を加工して埋め込みます。
写真ではサウンドホール周りの主たる円形の埋め込みが完了したところです。
ここからカッタウェイ側に伸びる細いパーフリングは手掘りでインレイしていきます。
この先はいつも通りの矢じり的スポルテッドメイプル&アバロン貝のインレイを施します。
また、今回は6弦側にもデザインを施します。
厳密に言えば全く違う物ですが、イメージとしてはヌーノベッテンコートのN4からインスピレーションを受けたインレイです。
昔からのあこがれのギター、当然何度も弾いた事がありますので操作性からのデザインであることは承知しています。
今回のインレイはあくまで印象のみです。

サウンドの云々以前に、素直な意見ですが「見た目で気に入らないギターは演奏したくない」と私は思ってしまいます。
誤解のないように言い加えますが、この見た目とは第一印象ということを言っているわけではなく、弾いているうちに愛着を感じ気に入るといった2次的な要因も含みます。
後者の方がより深い愛着が持てるのかもしれませんね。
そして一番大切なサウンド。
この2つの要因が融合して始めてそのプレイヤーにとって「良いギター」の地位を得ることができると考えます。
その観点からデザインの有意性については重要この上ないことだと容易に察することができるわけですが・・・
ではどのようなデザインが良いのか?
多くのプレイヤーの方々から直接リスニングできるサウンドメッセなどの機会を利用して発展させていくのは言わずもがな、
現状としては製作者、つまり自分自身が気に入るものを作ることが絶対的要素として挙げられます。

住宅建築の設計施工に携わり学んだことの一つに次のことがあります。
『10組のお客様に対して全体的に70%の満足感を提供できる物づくりよりも、たった1組のお客様の100%の満足感』
これは全てにおいて正しい考え方とは言えません。がその物が高付加価値的であるならば後者の100%を目指すべきであると私は考えます。

トラディショナルなデザインが支持され続けるなか、私のデザインが万人受けする事はないでしょう。
であるならば1%の方に心から気に入って頂ける物づくりをコンセプトに製作するべきだと。
この1%は自分自身なのかもしれませんが(笑

ともかく、「MIWA GUITARSらしいデザイン」を探してデザインを考えます。

●デザインの考察

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ヘッドデザインについては初号機から気に入って採用しているデザインをメインのデザインとして採用しています。
手間をかけてバインディング、パーフリング加工する事が好きだったのですが5号機以降木目の美しいツキ板を
ヘッドプレートに採用してみて、メープルのツキ板と銘木ツキ板のラミネートで面取り仕上げといったぬくもりあるデザインに
魅力を感じて採用しています。インレイすら邪魔に感じるのでヘッドはノーインレイで仕上げます。
ボディがごちゃごちゃしているので丁度バランスが取れているのかもしれませんね(笑

2012年9月29日、30日の2日間、大阪ATCで開催されるサウンドメッセ大阪2012へ参加させて頂けることが決まり、<東京ハンドクラフトギターフェスクラフトギターフェス2012>で展示した3号機と、
サウンドメッセ大阪2012出展用に製作している5号機の2本で参加予定でしたが、せっかく参加させて頂くならもっと作りたい!と思い立ち、この6号機の製作を始めました。
私としてはこんな短期間で製作完成させたことがありませんので到底間に合わないかもしれませんが、多くの方にMIWA GUITARSのギターに触れて頂きたい一心で製作を進めています。

製作記としては毎度同じような内容ばかり掲載していますので、ここでは製作記ではなく、ブログ的進捗レポートとして掲載しようと考えています。
結局はいつもの製作記のようになるのかもしれませんが、私のこだわり(あまりありませんが)のポイントなどがご紹介できれば幸いです。

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はい、こんな感じに仕上がりました。
ジリコテの杢目は写真では判りにくいですが、全体的な印象としてはかなりの存在感だと思います。
難しいインレイ技術はまだありませんので今の私の精一杯、そんな作品になりました。
このままでは少々野暮ったいですが、カッタウェイ先端からネックにかけての局面にはさらにアバロン貝をインレイ、
そして指板が乗っかるとハワイアンカーリーコアのインレイ部分が引き締まって見えてくると思っています。
細かな点ではありますが質感の向上のため、サウンドホールの小口部分にはハワイアンコアでバインディング装飾を
施しています。一般よりもホール径をやや小さく設計して音のリバーブ感を出す設計なのですが
見た目も小さくなってしまうとバランスも悪いのでこのようなデザインとしました。
表甲板自体、最高級のシトカスプルースですので木目と直交するちじれ杢が多く、それらがさらにロゼッタを際立たせます。
自分的には気に入るデザインとなりました。