コラム

社員の化学日記 −第81話 「無題」−

先日,孫たち(嫁いだ娘の子供)が遊びに来た。上は小4,下は幼稚園の年少組みの兄妹である。 当然お兄ちゃんの方が背は高いが,妹に比べるとか細くて頼りない。 孫たちが遊びに来る時はいつもおばあちゃんが牛乳を用意しておくのが恒例となっている。 その牛乳を妹はよく飲むが,お兄ちゃんはあまり飲まないようだ。 あくまでも個人的見解であるが,上の子は100%母乳で育ち,下の子はミルクと半々で育ったことも関係しているのかもしれない。

息子(孫たちからすると伯父)は甥っ子達が遊びに来ると牛乳を飲むよう勧めている。 息子も少年野球をやっていた子供の頃,体を大きくするために牛乳をよく飲んでいた。その経験からであろう。

息子や孫たちに触発されて,自分も飲んでいるかというと,飲むとしても1度に飲む量はごく少量であり,しかもチンしないと飲まない。 いや,飲めない。

そう,迂闊にキンキンに冷えた牛乳を腰に手をあててゴクゴクとやってしまうと,数分後にはお腹がゴロゴロといい始める。 そして,トイレに直行という顛末になるわけである。

子供は牛乳を飲んでも平気なのに,大人は何故ゴロゴロになる人が多いのか 。以下は聞いた話である。

牛乳中のタンパク質は「裸」の状態で溶けているのではなく,その周囲は脂肪の層に覆われた粒子として牛乳の液体に分散している。 溶けているのではなくで液体に「分散」している(コロイド)ので,牛乳は透明ではなく白く濁っている。

大人になって歳を重ねると腸内の消化酵素の活性度は徐々に低下し,牛乳の脂肪分を簡単に分解できなって消化不良を起こす。 特に牛乳中の乳糖(ラクトース)を分解する酵素(ラクターゼ)の活性度は,授乳期が最も活性度が高く,成長するにつれて活性度は減少する。 ラクターゼの活性度がなくなってしまうと,腸管内に乳糖が残ってしまうため,乳糖不耐症といわれる下痢などの症状を引き起こす。

一般に,母乳は牛乳に比べて栄養分を吸収しやすいといわれているのは,タンパク質の粒子が脂肪球の表面に出ているためというのを聞いたことがある。 また母乳には乳児の食欲をコントロールするカンナビノイドという物質も含まれているとのこと。孫の上の子が細いのもそのせいかもしれない。

また,牛乳といえばカルシウムなどのミネラル分。 カルシウムは人間の体内では骨や歯,血液中に存在し,血中カルシウムが減少すると,寝ている間に骨から溶け出していく。 よって骨粗しょう症の改善方法として就寝1,2時間前に牛乳を飲むといいらしい。 実際に骨年齢80歳代と診断された50代の女性が1週間牛乳を飲み続けただけで,改善の兆しが見え始めたという報告があるらしい。

でも,乳糖不耐症の人が骨粗しょう症を改善したいからと,いきなり牛乳をガブ飲みしては下痢で寝ている場合ではなくなってしまう。 「過ぎたるは及ばざるがごとし。」寝る前なので,程よく温めた牛乳のあくまでも少量ずつをゆっくり飲むことが肝要なようである。

【Y(ペンネーム)】

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