コラム

社員の化学日記 −第111話 「無題」−

吸湿性の物質は,時間が経つと共に吸湿した分だけ含量が低くなります。

このような場合は,含量を求める前に乾燥して,吸湿前の状態に戻しておきます。 通常は,乾燥器で加熱して乾燥を行いますが,熱を加えると分解してしまうものは,この方法を使うことができません。

そのため,加熱せずに乾燥するために乾燥剤を使いますが,一般によく知られているシリカゲルではなく,強酸性の液体である硫酸を使います。 意外に思われるかもしれませんが,硫酸は,強力な乾燥剤でもあります。 但し,取り扱いには注意が必要です。 デシケーターという密閉可能な容器に入れて使用しますが,移動させるときは,ゆっくり注意しながら動かさないと,跳ねて乾燥中のものに掛かってしまい,激しく反応して危険な状態となることがあります。

また,固体の乾燥だけでなく,液体の乾燥(脱水)にも使うことが出来る乾燥剤もあります。

モレキュラーシーブというもので,分子ふるいとも呼ばれています。

小さい孔が開いている結晶構造をしていて,その孔に入ることができる分子を吸着します。 孔の大きさが異なるものが存在するので,乾燥したい液体の分子より小さくて,水の分子より大きい孔を持つものを選ぶと,水だけが吸着されるため,効率よく液体の乾燥を行うことができます。

乾燥方法には,乾燥したい液体にモレキュラーシーブを加えて,時々混ぜながら放置する「静置法」,モレキュラーシーブを詰めたカラム(ガラス製の筒)に,乾燥したい液体を通す「カラム法」があります。

使用後は,洗浄してから加熱して吸着した水を除くことで,再使用が可能になります。

【三津和次郎(ペンネーム)】

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