コラム
社員の化学日記 −第10話 「生命と水」−
珍しいものを食べれる所は?という話から蛙と鷺(サギ)がメニューに載っている店があるということで連れて行ってもらいました。カエルは幾度か賞味したことがあったので珍しくないですが,期待していたサギが公魚(わかさぎ)のことだと知って一同ガックリ(ちゃんと調べとかんかい!) サギは空を飛ぶ鳥ですがワカサギは水中で泳いでいる魚です。冬に氷の張った湖の上での穴釣りが有名ですが,湖に張った氷と聞くと,水(化学式ではH2O)の特殊な性質のおかげで私達が今生きて地球上で生活できているんだということが思いつきます。
ということで水の性質について書こうと思ったけど,ちょっとまって。 「我々が存在してるもっともっとどでかい話が最近あったやろー」と言われそうなんで。 そのどでかい話とは,昨年私たち日本人に喜びと希望をもたらせてくれたノーベル物理学賞受賞。 物理学賞は3人しかもらえない,その3人とも日本人(正確には違うようですが出生は間違いなく日本ですよね)だったというのがすばらしい出来事。 この時に話題になった言葉が「対象性破れ発見」。うーんなんのこっちゃ?そもそも素粒子物理学って?破れ発見って? 「リンゴが落ちたのを見て重力を発見」とかいった事柄は現代の人には分かりやすい物理学やけど,この破れという話はなかなか理解できにくい。 僕が子供のころは障子の破れはしょっちゅう目にしてました,今でも傘をひらくとあちこちに穴が開いているときもありますがそういう話ではおまへん。
対象性の破れこそが人類の生まれる素? 生き物が生活していくために都合のいい水(氷)の性質を見る前に,この話を考えてみましょう。 コラムの趣旨である分かりやすい表現にしてるので専門家には「そこは違うよ…」って叱られそうですがお許しを。
私達はなぜ生きているのか?なぜ自然があるのか。 まず1946年にロシア生まれの物理学者がアメリカでビッグバンの考え方を提唱しました。 それによると137億年ほど前に大爆発が起こりそれによって宇宙ができたということです。 このときに対象性に破れがないと今の私たちは存在しないというのが今回の理論。これがそもそも分からへんねん。 むか〜し,昔この宇宙には何も無かった,あたりまえやけどそのころ生きていた人は誰もいてないんで推測やけど(今の理論では正論らしい)真っ暗闇やった,その真っ暗闇の中に何がどうしてどうなったかわからへんのやけど「この分からんわというのはいややね,でもほんまにわからへんねん」大爆発が起きました。(これがビッグバン) その時に,いろんなものが飛び散るんですが,これが必ず対になってた,あたりまえやけどツイというのは二つセットになったものです。それぞれに粒子と反粒子という名前が付けられている。 粒子と反粒子が引っ付くと光のエネルギーができ,ピカーと光って二つの粒子は消えてしまう。
(昔SFで言ってた反宇宙と宇宙の理論→こちらの我々は宇宙にいるけれどもまったく同じ宇宙が向こう側にあって,そこにはまったく同じ人間が生活している可能性がある,でもそのものたちは永遠に会うことが無い,というのは出会って触れ合った瞬間に光になって消えてしまうから。←「あほな事言うとんな」って思ってた。)
でも反粒子と名づけられた者(物?)はどういうわけか(又出ました,よく分からんこと)粒子に比べるとちょっとだけ寿命が短いことが分かってきた(これが対象性の破れ)。対の二つのうちのちょっと長生きする粒子が取り残される,他の仲良しが出会って幸せに?消えていく中で寿命の長い粒子が出会う相手のないまま残っている,一人ぼっちやなぁと思っているときに同じような出会う相手のない粒子が向こう側にいてる。一緒になろうよって寄って来るけど粒子どおしだから光にならない,二人?共消えることが無く残ってくる。
このように皆が光になって消えていっているのに取り残されたものが出てくる,この小さな物質の元になる基本粒子の一群を「クオーク」といい,第一世代の「アップ・ダウン」,第二世代の「チャーム・ストレンジ」第三世代の「トップ・ボトム」の6種類あるらしいがここでは割愛。
余談 → 僕たちは中学や高校の化学の授業では,原子核の中の陽子や中性子が最小でこれ以上分けられないと教えられてきた,でも今の考え方ではクオークが最小らしい。
話を戻しましょう。 出会って消滅することも無く寂しく残った粒子があちこちにでき,次第に粒子の塊となってくる, → 一定以上の粒子が集まって物質というものができてくる。 → 物質が寄って固まって大きくなり重さができ重力が発生(この重さの概念もいろいろ 言われているがこれも省略)その重力がさらにいろんなものをよんで集まってきて引 力ができてくる。 → その引力によってさらに集まってきて内部が押(圧)されて熱を持ってくる。 → 内側が熱で溶けて高温になってくるとその熱が外側にも出てきて全体が熱い物にな ってこれが太陽になる。 → この太陽が宇宙のあちこちででき,太陽と太陽が寄り集まってくると不思議に(またま た出てきました不可思議な現象,でもこの現象は説明がつくそうです,がここでも省 略)渦を巻いてくるようになって,銀河というものができる。 → このような銀河があちこちにでき,その中には太陽がありそのそばには惑星というも のができる。
こうして宇宙に太陽,惑星,銀河が誕生したというのが大まかな話です。 ここで,なぜ惑星が寄り集まらないか,太陽の引力にひきつけられないのか?という疑問が出てく人もいるでしょう。 でも無視して次にいきます。(物理の得意な人に聞いてください)
このような状態が続き90億年ほどたって地球が誕生したらしいです。 出来たての地球はただの粒子が集まったもので,その状態はインドの神話の「カオス(混沌とした状態)」,私たち日本の古事記の記述ではイザナキ・イザナミが天神より国を作れと命じられた時の「国土が漂っている様子」を想像すればいいでしょう。(余計に分かりにくくなったって?ごめんごめん,まあどろどろの状態を想像してください) そのどろどろの状態から物質が固まる時重い物質は核となって地球の内側へ,融点の低い物質は外側の地殻を作ったとされています。その状態が落ち着くのにおおよそ10億年,すなわち今から36億年ほど前(計算合うかな?137-90-10 = 37,よかった,一億年は誤差範囲)このころに生命が誕生したと考えられています。
ここから水の話になりますが,ちょうど紙面(コラムの場合はどういうの?)に限りが出てきました。続きは機会があるときにって言ったら怒られそうなので簡単に。
水(H2O)は水素と酸素の化合物です。(ここまでは分かるね) 酸素族(第�座押砲凌總撚醜臺�である硫化水素H2S,セレン化水素H2Se,テルル化水素H2Te などと比べてもH2Oは異端児のよう。 前化合物の性質から予測するとH2Oの沸点はマイナス100℃(-100℃)になるだろうと予測されます。でも実際はご存知のようにプラス100℃。(気圧がどうの,ボイルとシャルルがどうのという人がいるけど,ややこしいことは省略) 同じように見てみると水は蒸発熱が最も大きい,融点は飛びぬけて高い。《融点や沸点はなんとなく分かるけれど酸素族や蒸発熱という言葉を目にすると頭が痛くなると言われそう。ちょっと難しくなりました。》 要するに水によく似てるほかの物質とは全然違う,例えていえば我々素人の野球チームにイチローが入ってきたようなもんでしょうか。同じ人間でも全然違うもんね。
で,もうひとつ。 水は凍ると大きくなる。 冷凍庫で氷を作ると水の時よりかさが増えることは皆さん経験済みでしょう。 これは液体から固体になると膨張して密度が小さくなるということなんどすえ。 これも珍しく,普通の物質は固まると小さくなるのに水は反対に大きくなる。(理由はここでも書きません,知りたい人は「水素結合」を勉強) これがとても大事なことで,もし固体である氷が普通の物質と同じように液体の水より小さく(重たく,密度が高く)なると海,川,湖は底から凍って一度凍ればなかなか溶けない,又全体が凍ることも考えられます。しかし実際は上に浮くので下側は凍らずに水のままでいられます。表面だけが氷りになってその氷が熱をさえぎり湖の下部は水でいられ水中生物の存続が可能となります。
あーよかった,ワカサギも無事生きらえる事ができ,われわれ人類も誕生することができたのです。
※参考文献
- 石野 亨『金属の旅』小峰書店(2005.11).
- 瓜生 中『知っておきたい日本の神話』角川文庫(2007.11).
- 教育セミナー『NHK高校講座 化学』日本放送出版協会(2004.4).
- コーン・スタンプ『生化学 第5版』(田宮信雄・八木達彦 訳)東京化学同人(1994.2).
- 日本化学会『化学・意表を突かれる身近な疑問』講談社(2004.6).
- 山本 喜一,藤田 勲『よくわかる化学』日本実業出版社(2008.3).
【今田 美貴男】
