これほどまでに電子メールや携帯メールが普及したのには、もちろんインターネット環境の急速な整備が背景にあるのだけれど、その他にも理由がある。
それが十年ほど前から現れるようになった『手紙喰い』だ。
『手紙喰い』は、街角のポストや郵便配達夫の鞄などに姿を変え、葉書や手紙を食べてはどこへともなく消えていく。履歴書や事務的な書類は味気がないらしく、きちんと宛先に届けられる。『手紙喰い』の好物は甘いもので、とりわけ熱烈なラブレターなどは格好の餌食にされる。淡い恋心を伝えることもできず、切なく散った片思いはいくつあっただろうか、とまことしやかに噂されるようになった。
多分、僕が送った手紙は、すべて『手紙喰い』の糧になっているのだろう。十年以上、愛しいあのひとにほぼ毎日欠かさず送っている恋文の返事が一度も来ないのだから、きっとそうに違いない。『手紙喰い』に見つからない方法は何かないものだろうか。
そして僕は、今日も白い便箋に甘い愛の言葉を綴る。