プレゼント


 悠美ちゃんにはパパがいませんでした。悠美ちゃんが生まれてすぐ、事故で亡くなってしまったのです。でもやさしいママとおばあちゃんがいたので、少しもさびしいと思ったことはありませんでした。
 十一月のある日、来年八歳になる悠美ちゃんは、こたつであったまっているおばあちゃんのとなりに座り、こう言いました。
「ねえねえ、あみものってむずかしいの?」
 おばあちゃんは悠美ちゃんのほうを向いて、にっこり笑いました。
「そうだねえ、あみ棒を使うあみものは、ちょっとむずかしいかもしれないねえ」
 そっかぁ、としょげかえる悠美ちゃんの両手を、おばあちゃんはやさしくにぎりました。
「大丈夫、悠美ちゃんにもできる『魔法のあみもの』を、おばあちゃんが教えてあげるよ」
『魔法の』と聞いて、悠美ちゃんの目はきらきらとかがやいています。おばあちゃんは押入れの奥から、もわもわの赤い毛糸玉を出してきました。毛糸玉はこたつの上で、小さな動物のようにころんころんとゆれています。
「悠美ね、マフラーを作りたいの」
 おばあちゃんはうんうんと笑って、悠美ちゃんの左手を開かせました。そして毛糸を指にまきつけたり、間を通したり、ひっかけたりしていると、毛糸がなくなるころには、悠美ちゃんの手と同じくらいのはばの帯ができていました。はしっこを結ぶと、それはりっぱなマフラーになっていました。
「でも、これじゃあんまりあったかくないかなぁ。もう少し太いのが作りたいなぁ」
するとおばあちゃんは新しい毛糸玉を出して、同じものを作ったら二つをつなげてあげるよ、と言ってくれました。
次の日から、おばあちゃんが買ってくれた毛糸を、悠美ちゃんは少しずつあみ続けました。そして同じくらいの長さのマフラーを六本作ると、それを二本ずつつなげてもらいます。両はしにおばあちゃんが白いぽんぽんのおかざりをつけてくれました。とてもおしゃれなマフラーが三本できあがり、悠美ちゃんは「すごい、すごーい!」と大はしゃぎです。
 クリスマスイブは、三人でお外にごはんを食べにいきました。そこで悠美ちゃんは、手作りのマフラーをママとおばあちゃんに一本ずつプレゼントしました。
こんなすてきなおくりものを用意していることを知らなかったママは、ぽろぽろ泣きながら何回も「ありがとう」と悠美ちゃんを抱きしめました。おばあちゃんは帰り道でさっそくマフラーをまいて、ほっぺたにあてながら「あったかいねえ」と笑っていました。
 その日の夜、大きなくつ下をベッドにつって、悠美ちゃんはそこに三本目のマフラーとお手紙を入れました。だれにもないしょで書いたお手紙には、こう書いてありました。
『サンタクロースさんへ
おばあちゃんにちょっとてつだってもらったけど、悠美ががんばって作りました。さむいからかぜをひかないでください』
 次の日、くつ下にはマフラーとお手紙の代わりに悠美ちゃんへのプレゼントが入っていました。かわいらしいセーターとぼうしのセットでした。クリスマスはそれを着て、友だちと遊んだり、おばあちゃんと駅までママのおむかえに行ったりしました。
 その夜のことです。マフラー気に入ってくれたかな、とにこにこしながらねむった悠美ちゃんは、夜中にそっと起こされて目をさましました。すると、ベッドの横にサンタさんが立っていたのでとてもびっくりしました。
『昨日はすてきなプレゼントをありがとう。今までたくさんの子どもにプレゼントを運んだけれど、私がもらったのは生まれて初めてだ。本当に、とてもとてもうれしかったよ』
 そう言ってサンタさんは、おひげを持ち上げてマフラーを見せました。サンタさんの服に赤いマフラーはとてもよく似合いました。
『心やさしい君のために、今年だけ特別にもう一つプレゼントを用意したよ。でも、このことはだれにも言っちゃだめだよ。私と君との、二人だけの秘密だからね』
 サンタさんが人差し指を口に当てたので、悠美ちゃんはにっこり笑ってうなずきました。サンタさんのあったかい手が頭をなでると、悠美ちゃんはすっと眠ってしまいました。
 年が明けてお正月になると、ママが知らない男の人を家につれてきました。
「悠美、あなたのパパになる人を紹介するわ」
 そう言って男の人に笑いかけるママは、とてもきれいだと悠美ちゃんは思いました。
男の人は「はじめまして」と言いながら悠美ちゃんの頭をなでました。
「サンタさんだ!」
 男の人は悠美ちゃんが急に大声を出したのできょとんとしています。ママもおばあちゃんもびっくりしています。悠美ちゃんだけが一人、サンタさんからのすてきなプレゼントを、とてもとても喜んでいました。


Go Back  To Home