最後のデート


「ごめん、待った?」
「ちょっとだけ。最後まで、待ち合わせの時間にきっちり三分遅れだったね」
「面目ない……」
「じゃ、いつも通り、お昼おごってよね」
「へいへい、仰せのままに」

「ここのおうどん、よく食べに来たね」
「つゆがいい味出してるからなあ」
「何言ってるのよ、いつもざるそばしか頼まなかったくせに」

「あー、なんか目が疲れちゃった。映画なんて久しぶり」
「真っ赤だよ。そういえば、ハンカチ出してたっけ?」
「服の袖でほっぺた拭いてた人に言われたくありませんよーだ」
「げっ、見てたのか」
「くすくす」

「ふわあ、風が気持ちいいわ」
「この公園、よく二人で散歩したね」
「付き合い始めた頃、腕組むとすっごい照れてたっけ」
「随分昔の話を引っ張り出してくるなぁ……。今はもう大丈夫だよ」
「じゃ、試してみる?」

「むう、余は満腹じゃ」
「あはは。でもほんと美味しかったね!」
「今日ぐらい、普段入らないようなお店に行きたかったんだ」
「……そう、ね」

「もうこんな時間か……」
「早かったね」
「そろそろ帰らないと」
「うん……。今日は、ありがと。楽しかった」
「私も。……あのね」
「何?」
「今まで、ありがとう」
「……俺のほうこそ」
「うん……あれ、なんだろ……やだな……ごめんね、なんか、これが最後のデートだって思ったら、急に……」
「……」
「……一つ、お願いしていいかな」
「何?」
「キスして」

「それじゃ、帰るね。おやすみ」
「……うん、おやすみ」

「……ねえ」
「なぁに?」
「明日、遅れないようにね」
「その台詞、そっくりお返しするわ」




「それでは、きっちり三分遅れてきた新郎と、一時間も前から待ちぼうけだった新婦のご入場です。皆様、暖かいブーイングと盛大な拍手でお二人をお迎えください……」



――了――

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