夏のさなか、都会では靴底に溶けたアスファルトが貼りつくような暑さになっているというのに、じりじりと照り付ける太陽の光から逃れるように木陰に座り、森を駆け抜けながら爽やかな彩りを添えた涼やかな風に髪をなびかせている僕。
小鳥の囀(さえず)りが頭の上で空へ抜けていくのが聞こえる。澄んだ水を湛えた大きな湖の水面を撫でていく風は、かすかな音と共に小さな波を立てる。
両手で窪みを作り、目の前に広がる水を少しだけすくって飲んでみる。美味い。向こうのほうで、魚がぱしゃっと跳ねた。
そして、僕の隣には彼女がいる。今はちょっと困ったような表情をしているけど、笑うととても可愛いんだ。
これだけのものが揃っているというのに、僕はどこか、何か足りないという気持ちが捨て切れないでいる。一体何が不足だというんだろう。
そうか、僕には、首から上がないんだった。
――了――