足りない歯車 足りない歯車
ねえ、どうしてはぐれてるの?
足りないんだよ
なにが足りないの?
歯車が一つ足りないんだよ
せっかく動き出したのに
大丈夫、足りない物は足せば良いんだよ
どうすれば、手にはいるのかな?
第3章 ーあゆみー
某ビルの一室
気がつくとボクは見たことのない部屋にいた
・・・ここは何処だろう?
壁には流行のロックグループのポスターなんかが貼ってある
こんなやさおとこの何処が良いんだろう?
城上先生ほどいかついのも問題だが・・・
色々部屋を物色してみるとどうやら同じくらいの年代の
女の子の部屋のようだ
日記があり少し呼んでみるとここの部屋の住人は体が弱くて
あまり外に出れない生活をしていたようだ
「おっ!写真発見」
なんて言いながらアルバムを覗いてみた
・・・ボクが映っている
しかも行ったことのない場所に見たこともない人と・・・
おかしいな?何処か違う
透き通るような白い肌・・・
はかなげな表情・・・
しかも大きい・・・何処かは秘密!
きっとここの部屋の住人なんだわ
ボクと間違えたのかな?
もう一度日記に目を通す
日付を見てみると2ヶ月前で止まっている
それまでは、一日も欠かさずに付けているのに・・・
嫌な予感が走る、もしかしてこの日記の書いていた人は・・・
その時にドアをノックする音が響く
「亜由美、お腹がすかないかい?御飯を持ってきたんだ入って良いかい?」
歩?確か最近ボクのところに”あゆみ”と連呼するイタズラ電話が多かったな?
もしかしてこいつが犯人なのかな?
「亜由美大丈夫かい?入るよ」
この声・・・ホテルのオーナー・・・たしか伊藤なんとか・・
ドアノブがまわる音が静かに響く
「だめ、今入ってきたら私お父さんのこと嫌いになっちゃうよ」
こんな場面で、一度も仕事で使ったことのない演技が役に立つとは・・
「あ・亜由美ごめんよ、父さん強引だったかな?御飯だけはおいていくよ」
そう言って、扉の下から美味しそうな食事だけが差し出された
ぐ〜
お腹が鳴った時計を見ると12時近いそう言えば夕方から何も食べてないな
美味しそうな御飯をいただくことにした
・・・?
・・・あれ?
御飯を食べ終わってしばらくすると眠気が襲ってきた
睡眠薬か?
ドアが開くそのドアの影からホテルのオーナが入ってくる
「亜由美、何処か悪いんだね?すぐに元の亜由美に戻してあげるからね」
こ、この男狂っている
目が正気ではない・・・元にって胸が大きくなるのかな?
まどろみの中、危機感の無い自分が少しだけ凄いと思った・・・
11時頃ドラッケン号内
「ここ数ヶ月の間に同じ様な殺人事件が相次ぎました。これです」
抑揚のない声でエリオンと名乗る女性・・・少女か?
その、エリオンが新聞の切り抜きをテーブルの上に置いた
その切り抜きの内容は、若い女性一人とと男性二人が火にまかれ死亡
それだけならおかしくないのだが、男性はどうやら火にやられる前に
撲殺されていたようなのだそれも信じられないような力で・・・
まるで、あの時のようだな?
そんな事を考えていると再びエリオンが話し始めた
「先ほど申し上げた魔導書オセロットの第一節なのです
この魔導書は劇のシーンを実際に行うことによって
目的を達成します。
第一幕は、炎の中から姫を助け出す騎士
しかし、魔物によって姫は連れ去られてしまう
そんなシーンなのです。
騎士の人数は違いますが、第一幕は完了と言うことになりますね」
まじめに聞いてると頭がおかしくなりそうだしかし、否定はできない
見てしまったのだから、魔物を・・・
「ところでエリオン、その魔導書の内容は?」
軽く頭を下げ、お話ししましょうという感じだ
「死者の復活です、この事件の首謀者は何らかの方法でこの魔導書を手に入れた
そして、その使い方を知った。」
太田さんが突然重い口を開いた
「犯人は分かっている、問題は御神楽綾香をどう助け出すかだ」
「俺達は、明日○○美術館に呼び出されているだが、魔導書や化け物なんか出されて
一般人の俺達に何かできるのか?あの化け物と戦うのは遠慮したいのだが・・・」
エリオンは、ぎこちない笑みを浮かべてこう言った
「私は、その為にあなた方をここへお呼びしたのですから」
そう言って、一本のナイフを取り出した
「このナイフがあれば何とかなるでしょう」
あの化け物にこの小さなナイフ一本・・・
本気なのか?
「また最悪の事態になれば、私も現地へ参ります」
行くしかないようだな・・・・
乗りかかった船か
「その魔導書の持ち主はいったい誰の復活を?」
エリオンは眉一つ動かさずに答えた
「そこまでは存じ上げません」
「そうですか・・・その辺明日の夕方までに何かわかりませんかね太田さん」
「んあ?ああ、首謀者はわかってるからな何とかなるでしょう」
急に話をふられて抜けた返事を返した来た
「それでは、ご健闘をお祈りいたしております」
まるで、台本の棒読みのようなありがたくない台詞を聞いて
ドラッケン号を去った
時間は11時を過ぎていた
12時過ぎ城上宅
日付の変わる頃やっと自分の部屋の前まで戻ってきた
すると部屋の前に見知った女性がたたずんでいる
「どうしたんだこんな夜遅くその様子じゃかなり待ったんだろう?」
美しい顔立ちの少女に話しかける
まるで人形のような顔に命が吹き込まれたかの如く
凍り付いていた表情に笑みがこぼれる
「あ、御兄様・・今来たところ・・なんて言う時間じゃないですね」
あまり顔色も良くない
急いでドアを開け中に入れ、部屋を暖める用意をする
「美由綺、何時から待ってたんだ?正直に答えるんだぞ」
そう言いながら中に入って暖房に火を入れシャワーの準備をした
「ついさっきって言おうとしたのに〜本当の時間言ったら御兄様きっと怒るから」
女性らしい仕草でコートを脱ぎながら話し続ける
「7時頃からですよ。ふふ、ずっとここで待ってました。」
7時から・・・こんな寒空の下をじっとか・・・
嬉しいような怖いような複雑な気持ちだ
「着替えの準備はするから早くシャワー浴びて暖まってこい」
はいと返事をしてシャワー室の方へ向う美由綺
美由綺の着替えの準備を終えた頃ふと思い出した
「そう言えば、優子電話すると言ってたな」
留守番電話をチェックすると2件入っている
2件とも優子で2件目には”12時まで起きています電話下さい”
という内容だった。
時計を見る12時15分かまだ間に合うかな?
とりあえず電話してみることにした
「はい、時林と申しますがどちら様でしょうか?」
やたらと丁寧な声で優子が電話に出てきた
「夜分すみません、城上と申しますが優子さんいらっしゃいますか?」
わかっているのだが、こちらも礼儀正しく電話の応対をしてみると・・
「わ、私ですよ、優子です・・・わかりませんでしたか?」
・・・からかって見るものだな
「わかってるよ優子。で、今日の用事は?」
用事がないと電話してくれないのなどと叱られてしまったが
話の内容は、来週の土曜日に折原さんと三人でお食事をしましょう
という内容だった
「かまないよ、場所と時間は折原さんにまかせるよ」
「うん、わかったわ。あっ、もう遅いから寝るねおやすみなさ〜い」
・・・二十歳を超えた社会人が土曜の晩に12時過ぎで夜遅いか・・・
そんな事を考えていると美由綺がシャワーから上がったようだ
「あ、御兄様お電話?もしかして優子さんかな?私も話したかったなー」
振り返ると美由綺がパジャマ姿でたっていた
透き通るような白い肌はほんのりと赤みを帯び
美しい顔立ちがさらに色っぽく映える
漆黒に光る黒髪を丁寧にふく仕草は妖艶で
シルクの生地が細いラインを強調するかのようだった
しかし、微かに開いた胸元はまだ少女の面影を残し居ている
そのアンバランスさが・・・
参ったな、何処でそんな仕草を覚えてくるのか
美由綺には、男を惑わす才能みたいな物があるのかな?
そんな事を考えてつい見つめてしまった・・
「お、御兄様そんなに見つめられると恥ずかしいです・・・」
そういった仕草もまた・・・いや駄目だ本題に戻そう
「すまんな、つい。優子はもう夜が遅いから寝るってさ
そういえば今日はどうした、何か用事でも?」
俺の横にちょんと座って悪戯っぽく言う
「用事がないときてはいけませんか?」
思わず笑ってしまった
「そんな台詞、本日2回目だよ。さっき優子にも言われたよ」
「駄目ですよ御兄様。女性はデリケートな生き物ですからもっと言葉に気を付けないとね」
妹にまで注意されるとはこれから気を付けないとな・・・
「あのね御兄様、こちらに来たのはね学校の下見なの。
御兄様、明日学校見学につき合ってもらえますか?」
そう言って美由綺は御願いモードに入った・・・
「んー・・・夕方までならな」
それを聞くと子供のように美由綺ははしゃいで喜んだ
明日は早そうなので早めに寝ることにしが
なかなか寝付けなくて明け方に聞いた美由綺の寝言が頭から離れなかった
「・・・御兄様」
肉親しか愛せないか・・・
不憫だな・・・
翌日夕方、喫茶ネームレス
「お、城上さん来ましたね」
太田さんが美味しそうに珈琲をすする
「よほどここの珈琲がお気に入りみたいですね
マスター、ストレーティーを」
すぐに紅茶を入れてくれたマスターが
「今度珈琲飲んでみて下さいよ」
と催促しながら微笑んでいる
「例の件なんですがね、わかりましたよ」
ホテルオーナー伊藤氏が誰を生き返らそうとしていたかだな
「娘がいましてね、病気がちでね。3ヶ月前ぐらいに病死しています」
そう言いながら懐から、一枚の写真を出して見せてくれる
「これ・・御神楽じゃないですか?」
はかなげな御神楽・・・妙な感じだな?
「そしてこれが一連の被害者ですよ」
さらに、写真を出してきた・・・
「こ、これは・・・」
何処か御神楽に似ている、しかも全員
「娘にそっくりな女の子を使っての儀式か・・・」
御神楽まだ生きてるかな?
「信じがたい話ですがね、事実のようですね。まだ傷が痛みますからね」
相変わらずとぼけた口調の太田さんの声
「そろそろ行きますか?化け物退治にね」
思ったより積極的な太田さんの態度に戸惑いを覚えたが
行くしかなんだな・・・
「行きますか、マスター勘定は?」
すると笑ってこう言う
「帰ってきたらいただきますよ」
・・・帰ってきたらか・・・
何処か嬉しそうな太田さんとは対象に
俺は、恐怖をかみ殺すので精一杯だった・・・
「何処で食い違ったんだろうな・・・」
たれにも聞こえない声で呟いた・・
午後7時頃綾香
気がつくとまた別の部屋に居るようだ
しかも丁寧に手には手錠・・・警戒されてるみたいだね〜
「また見たことのない部屋だ・・・何処だろう?」
タイミングを見計らったようにドアが開く
「あ、亜由美、目が覚めたんだね?亜由美を元の戻すために
ナイトがやってきたんだよ、一緒に見よう亜由美。」
やたらと亜由美と連呼するボクは亜由美じゃないのに・・・
しかしここで反発してまたクスリでぐーなんて事はさけたいので
話を合わせておこう
「戻す?連れ戻すじゃないのナイトなら・・」
焦点の合わないうつろな目でボクを見つめて
「大人しくして見ているんだよ、第二幕がまもなく開演だから・・」
??第二幕・・何のことだろう?
あれこれ考えながら伊藤さんの後について部屋を出る事にした
部屋を出るとロビーのようになっていて出てきたところも含めて
扉は4つある奥にはエレベーターもあるようだが・・・
伊藤氏はゆっくりとした足取りで右側の部屋へ入っていった
今は怪しまれないようにその後に付いていく事にする
部屋にはいると色々な機械や沢山のモニターのある部屋だった
何かの監視用の警備室のようだが・・・
伊藤氏がモニターの一つを挿してボクに話しかける
「さあ、ナイトのお出ましだ・・・どちらが贄になるのかな」
・・・?
「ねえ?ニエって何?」
素朴な疑問だ
わからないことは、すぐに聞きましょうと教わったのだ
「亜由美を元に戻すために犠牲になる奴のことだよ、それで第2章は完成する」
・・・犠牲?ニエって生け贄のことなのか・・・
伊藤氏がモニターを見るように促す
・・・城上先生と太田探偵参上・・・最悪の事態だね〜
やばい状況なのにボクは興奮していることに気が付いた
待っていたのかな?
こんな世界を・・・
○○美術館7時過ぎ
「ここのようですね?」
太田さんは相変わらずのペースで話している
恐怖心が麻痺しているのか?
俺はこれから起こるであろう事に恐怖を感じ
膝ががくがくとだらしなく震えている
その震えを、体重と建て前でこらえるので精一杯だった
「ふー。とりあえず入りますか」
閉館時間7:00と書いてあるのに
まだ、扉に鍵もかかっていない
金持ちはやることが凄いね〜なんて考えながら
中にはいることにした
今はどうやら中世ヨーロッパの絵が中心に飾られているようだ
太田さんに目をやると手招きしている・・・何だろう?
「城上さん・・これーオセロットと読むのでは?」
その絵の注釈を見るとそこにはオセロット第二幕と書いてある
「太田さん、そうみたいですねしかも第二幕を書いた絵みたいですよ」
その絵の内容は・・・
姫を助けに来た二人の騎士は罠にはめられて閉じこめられることになる
そこに現れる怪物オセロット!・・・こないだの奴か
抵抗のかいなく一人の騎士はオセロットに殺されてしまう・・・
嫌な話だな・・・
「太田さん、やばいですよ」
震えが止まらない
自分のホテルに火を付けてまで目的を達成しようとするような男だぞ
俺達の内一人を殺すことなんか平気でやってのけるだろう・・・
「罠というなら始めから承知のことですが?」
年の功か?落ち着いているな
「下手すると今度はどちらかが確実に死にますよ」
そこまで言ったところで美術館のライト一斉に消えた・・・
再び綾香
伊藤さんが機械のスイッチをいじるとモニターの向こうの電気が消えた
太田さんは落ち着いた様子だが城上先生は動揺を隠せないようだ
・・・小心者め
何が起こるのかな?
「さあ第二幕の開演だ!」
伊藤氏は叫んだ
すると別のモニターに黒い影が映る・・・?
あっ!あの怪物だ・・・
するとあの化け物に先生達を襲わせるのか・・・まずいな
何とか伊藤氏を説得しなければ・・・
「やめてお父さん!私他の人を犠牲にしてまで元に戻りたくない」
こんな感じかな?
自分では結構うまくいったつもりなのだが・・・
「亜由美・・亜由美は優しいな〜でも大丈夫だよ
亜由美は何も悪くないんだからね」
話を聞いて、い・な・い!
こないだの野外ライブの時の最前列でいちゃついていた
カップルと同じくらいむ・か・つ・く〜!
・・・っく、ここは堪えなければ
話が通じないようなので、しばらく様子を見ながら次の策を考えよう
電気の消えた美術館
そこは異様な雰囲気に包まれる
「下手なお化け屋敷より怖いな?」
ポツリと呟いて太田さんを見た
まだ平気のようだ
その時2階の方からガラスの割れる音が響く
「・・・来る」
おかしいな?
さっきまでの震えが嘘のようだ
恐怖に怯えるのではなく・・
何かが充たされていくような、そんな妙な感じだった
これを・・・求めていたのか?
無意識に化け物の方に駆け寄る
二階に上がる階段を上ると・・・見えた
太田さんは遠巻きに眺めているだけの様だ
・・・当然といえば当然か
近くまで来ると化け物が襲ってくる
信じられないようなスピードで腕を振り回す
間一髪でかわすと後ろにあったブロンズ像の首が飛ぶ!
・・・や、やっぱりやばいな
勝ち目がなさそうなので戦うのはやめて逃げることにした
「まだ死にたくねえ!」
さっきの覚悟は何処へ・・・
階段を下りようと振り向くとそこに見知らぬ男がいる
「君たち何をしてるんだね?」
どうやら警備員のようだが・・・かわいそうに
そいつは俺の後ろの化け物を見ると凍り付いたように固まった
しかしかまってる暇はない、一気に階段を下りた
後ろでは、何か鈍い音が響いてうめき声が聞こえた
・・・不運な
下におりてで入口まで来る
鍵がかかっていて丁寧にシャッターまで閉まっている
「万事休すか」
後ろからゆっくりと近づいてくる・・・勝ち誇ったように
「ばうっ!」
突然足下で声がしたので驚いて思わず心臓が止まるかと思った
声の主を見ると例の黒い犬だ
「お前まで来ていたのか?」
犬はやはり”ばうっ!”と答える
・・・そんなやりとりをしている場合ではなかった
化け物は目の前まで迫っている・・どうする?
俺は錯乱して思わず近くの物を投げつけた
・・・毛の生えた物体だった
それはなま暖かく、化け物に当たることなく飛んでいき
何かの展示物にぶつかると”キャイン”と吠えた
キャイン?・・・あっ!
「い、犬投げちまった・・・」
化け物は、何事もなかったかの様に迫ってくる
・・・今度こそ覚悟を決めた!
このまま、なぶり殺しはごめんだからな
体当たりするかのような勢いで殴りかかる
「今度は外さねえ!」
ぎりぎりと歯を食いしばり踏み込む
全体重をかけ拳をたたき込む!
確かな手応えが伝わる
普通の人間ならこれでノックアウトなのだが・・・
化け物は何事もなかったように俺の腕を取り背後に回る
・・・やばい!
首を回して後ろを見ると化け物のマントから白い棒状の物がのびる
それは尖っており俺の想像なら・・・あばら骨か?
そいつは、勢いを付けるように一気にしなってひろがる
それまで見ていただけの太田さんもさすがにやばいと思ってこちらにかけてくる
・・・ついでに犬も
俺は必死でもがいてみたが、細い腕のくせにびくともにない
あばら骨が閉じようとしたとき
化け物はこの世の物とは思えないような悲鳴を上げる
渾身の力を込めてエリオンからもらったナイフを突き刺したのだ
突き刺さったナイフは化け物の中に吸い込まれていき完全に見えなくなると
ギンッ!と金属のしなる音がしてローブのあちこちから針金が飛び出す
たまらず化け物が唸る
「Kulululu!筋書きと違う!」
筋書き?
「筋書きだと?残念だな俺は他人の引いたレールの上は走らない主義でね
筋書きなんて物は自分の力で作るものだぜ!
他人の書いた筋書き通りに踊った時点でお前の負けなんだよ」
化け物は聞こえていたのかどうかわからないが奇妙な声を上げながら
二階に逃げていく
「逃がすか!」そう吠えて後を追う!
2階に上がるとその姿はすでになかった
「いや〜逃げられましたね〜」
太田さん・・あんた緊張感ないな・・・
痛っ!
足に激痛が走る!
足下にいたのか?
・・・犬が仕返しに足にかみついていた
その頃綾香は・・
結構やるもんだね城上先生
あの化け物を撃退するかね〜
そんな思考を遮るように伊藤氏が叫ぶ
「おのれ〜大事な体に傷を付けよって」
?大事な体〜何のことだろう?化け物の事かな〜
ん!
「お父さん・・・トイレに行きたいんだけど・・」
しおらしく話すのって疲れるな
「・・おおそうか、すまなかった今外すからね」
そう言って手錠を外してくれる
その足でトイレに向かう・・・トイレ何処だろう?
わからないのでしばらく見つめていると
伊藤氏が指をさした
「あの扉だよ、亜由美」
げっ!この部屋にあるのか
渋々そのトイレで用を足しながら次の作戦を考えた
・・・だめだ〜考えるのは得意じゃないぃぃ!
しばらく様子見かと思って部屋に戻ると
「亜由美、ちょっと用事があるのでここで大人しく待ってるんだよ
そこの機械には触っちゃ駄目だよいいね」
・・・あゆみ、あゆみって言うな!怒怒怒怒ぉぉ!
「はい、お父さん」
・・・ボク泣きたいよ〜
伊藤氏は何の疑いものくボクをこの部屋に残して部屋を出た
「ん〜釈然としないな〜こんなに簡単に信じるかな〜?
それより、先生達を何とかしなくちゃ」
機械の方に目をやる・・・
「ボタンがいっぱいだな〜たしかこの辺を・・
ぽちっとな・・・はっはっは馬鹿みたい」
なんて緊張感のない行動をとってみたが
モニターの向こうの明かりがついた
「やった〜ボクって天才かも!」
・・・運が良かっただけ
「今度はシャッターか?」
今度はなかなか開かない
「おかしいな〜たしかこの辺・・・」
モニターで確認しながら色々なボタンを押してみる
「くぅ〜ボクって凄いかも」
適当に押して開くのだからある種の才能かな?
「ん〜次は脱出か、何かわくわくするな」
この状況を楽しんでいる自分が少し怖いくらいだったが
こんなに、危険なことは滅多に味わえるわけではない
慎重かつ大胆に扉を開けた
・・・あっ
目の前に先ほどの化け物がいる
「・・・今晩は」
挨拶してみたが返事の代わりに右手が飛んできた
それをかわさずに距離を零まで一気に詰める!
間合いを外された腕はボクに捕まれ
化け物は自分の力で反対側の壁まで飛ぶことになる
その音に気が付いて伊藤氏が飛び出てくる
「亜由美何を・・・」
伊藤氏をにらみ付けて一言いった
「御神楽流合気柔術お気に召しましたか?」
・・・きまった〜
伊藤氏は無言で銃を抜いた
そのとたん銃声が響く
う゛?
「亜由美・・・最後まで一緒に来てもらうよ」
銃相手じゃ何もできない・・・ばんじきゅうううすぅぅ〜
「・・・・はい」
駄目じゃんボク
美術館入り口
「いやー明かりがついたと思ったらシャッターまで開きましたよ」
その声を聞いた瞬間全身の力が抜けた・・・
「後は、御神楽の身か・・」
さて何処にいるのかな?
「あのビルにいるんじゃないですかね〜 ここの管理もやってるらしいですから」
その言葉を聞いて目の前のビルの方に歩き始めた
「しかし何ですね〜本当にこんな事が有るんですね
昔若い頃ねわたしはヒーローになりたかったんですよ
それで探偵になったんですよ、おかしいでしょ」
・・・それでか、会ったときより生き生きしているのは
「夢ですよね・・素敵ですね。
俺には何もありませんでしたから恥ずかしいなんてとんでもない
うらやましい限りですよ」
昔の自分を思いだして目頭が熱くなる・・
「ん?車の音だ、ホテルのオーナーか?」
目をやると一台のベンツがビルの裏から走り去っていった
「あれにお嬢さんが乗ってるんですかね?」
確信があるくせにそれをほのめかさない口調だ
「可能性大だな、あの車を追わなければ・・・」
再び、ちいさな鐘に乗って移動することとなった。