かみ合う歯車
やっとかみ合ったね
でも自分で回ってるのは一つだけだよ
それで良いんだよ
どうしてなの
彼らは歯車だから
一つだけはぐれてる・・・
第2章 ーその名はオセロットー
一月某日土曜日
「あ、あの城上先生?」
品の良さそうなメガネをかけた女教師時林優子が楽しそうな笑みを浮かべて話しかけてきた。
「何をさっきから右手をじっと見つめてらっしゃるんですか?」
・・・どうもこの十字の傷が見えないらしい。
「昨日ですね、電話をしていて静電気か何かで調子がおかしいもので」
間違ってはいない、ただ傷のことを言ってないだけだ。
「そうなんですか。実は別のお話がありまして」
話の内容はこうだった。
彼女の友人の折原知美さんが「彼氏に会わせろ!」と五月蠅いので
今度一緒に何処かへ行こうという話だった。
「優子、学校ではそんな話はしない約束だっただろう?」
まわりに聞こえないように小声で言ってやった。
すると彼女は少し寂しそうな顔をしながら唇をとがらせた。
「だって、最近なかなか外であってくれないから・・・」
可愛いやつめと思ったが学校にばれるとやばい
「そんな事言っても学校にばれたらやばいんだよ」
わかってるといったかんじで首を縦に振って自分の机の方を向いた。
そう言えば最近あんまりかまってなかったな今度の給料日あたりに何処か連れてってやろう。
予鈴がなった、HRの時間らしい。
「それでは、HRがありますので」
「城上先生、また後で連絡いたします」
今夜電話するという意味の合い言葉だ
最近つくづく思う俺にはできすぎな女だなと・・・
同日放課後
今日もたまたま城上先生と同じ時刻に帰途についた。
身長の差があるのでボクよりかなり歩くのが速い、たしか大阪出身らしい。
友人の話によると大阪人は世界最速の歩行速度を誇る民族らしい。
「城上先生時間あるかな?」
いつもとは違う真剣な眼差しで見つめてきた。
「デートのお誘いではないようだな」
ふざけた言葉だが顔はにこりともしていない。
「そこの、喫茶店で良いか?」
ボクは無言でうなずいた。
入ると城上は壁際の椅子を二人分占領して私は向かいの席に座り
ウエイトレスが注文を取りに来るまで無言で待った。
「俺は、ストレートティーをホットでこちらはアメリカンをホットで」
二人分の注文をして表情のないまま話しかけてきた。
「静桜の事か?」
ボクは無言でうなずいた。
「たぶんお前の思ってるとおりだ・・・」
何も言わないボクに城上はそう言った。
「ちゃんと責任とるんだよね?」
しばらく沈黙、何も答えない城上ボクのいらだちはだんだん我慢できないほどこみ上げてきた。
「お前は、何様のつもりでここにいるんだ?」
突然はなした城上の目線が冷たい。
「友達だからか?それとも自分の主義に反すると思ったからか?」
自分があまりに感情的に行動しているただの子供だった事に気が付いたが、
城上のあまりに淡々とした口調に腹が立ってきた。
「じゃあ、どういうつもりであんな事をしたの・・・」
「あんな事?お前直接聞いたのか、静桜は何も言ってないだろう」
城上の表情がだんだん険しくなってくる。
「彼女は過去にひどい目にあってそこにつけ込むような・・・」
「静桜はそう言ったのか、少なくとも俺は彼女の嫌がるような事はして無いつもりだが。むしろ・・・」
そう言って途中でやめた城上に催促した
「むしろなによ」
ふとテーブルを見るとコーヒーと紅茶が並んでいた。
「彼女の望むようにしたつもりだが」
その言葉緒聞いた瞬間頭の中が真っ白になった。
気が付くと私はホットコーヒーを城上にかけ更にカップをぶつけていた。
城上はそれを避ける気は全くなかったようだ。
「あなた教師でしょ?自分のした事、彼女のこともボクより理解してるんでしょ。なら何故?」
目に涙を浮かべてボクは怒鳴ってしまった。
「彼女には、あの時それが必要だった・・・ただそれだけだ。」
そう言うと、きたばかりの熱い紅茶を一口で飲み干し伝票を持ってレジに向かった。
「待って・・」
城上先生を呼び止めて、ハンカチを渡した。
「額から血が出てるよ」
ボクのせいなのだが・・・
「いい奴だなお前は、静桜と仲良くしてやってくれよ」
レジに1万円札を一枚おいて何事もなかったように店から出ていった。
ボクも、居場所がないので足早に店を出た。
真冬の風が雫の軌跡をやさしく冷やしていった。
心地いい・・・
「涙なんて流すの久しぶりだな」
同日昼過ぎ西麻布興信所
昨晩あれから御神楽綾香の住むマンションを見張っているときに見かけた車のbあらっていた。
「太田さん、本宮さんという女性の方から電話です」
内線から外線に切り替えて電話に出た。
「はい、太田ですがどうしました?」
「お仕事の話なのですが、今晩5時にホテル・バシレイアーに正装できていただきたいのですが」
お嬢ちゃんのパーティーのお守りか
「わかりました、5時にホテル・バシレイアーですね?」
「お待ちしております、それでは」
短い電話を終えてため息を付いた。
「ふー、家に帰るのか」
憂鬱な顔で興信所をでた。
同じく昼過ぎ城上宅
「ひどいな、御神楽・・・あんなに強い奴が身辺警護本当にいるのか?」
額の傷をさすりながら思い出していた。
いろいろなことを考えながら家でごろごろしていたがする事がないので、車を洗うことにした。
愛車の赤いキャロルだ、俺の薄給ではこれが限界。
しかし、運転しているところが可愛いと優子は言ってくれる。
・・・ほんとかよ
アパートの前で車を洗い出したのは夕方に近い時刻・・・さむい。
「うっ、こんなに寒いのに車なんか洗うんじゃなかった」
しかし洗い始めたのだから仕方がない、覚悟を決めて最後まで洗うことにした。
どれぐらいたったかわからないが、また右手が痛み出した。
真冬に水を長時間触ったせいかと思ったが違うらしい。
手のひらの傷から血が流れ出してきた。
思わず声をだしそうになったが何とかこらえた。
手首のあたりを強く締めた見たが血が止まる気配はない。
おかしい?先ほどから何人も通行人がこちらを見たりしているが、
大量の血液を見てもんの反応も示さない。
血は、ゴボゴボと音を立て始めた、更にその音に混じって人の声が聞こえるような
気がしたので耳を当ててみる
「ゴボ・ホテル・・ゴボゴボ・・バシレ・ゴボ」
ホテル・バシレ?
「ホテル・バシレイアーにいけということか?」
そんな馬鹿なことが・・・
ゲームではあるまいしと思いながらもこの傷も血もその辺の連中に見えないのは事実行くしかないか?
「バウ!」
突然犬が横で吠えたので驚いた
黒い中型犬だ・・・あまりかわいくない
「何だ?乗せてほしいのか?」
「バウ!」
「悪いな、用事があるんだまた今度な」
そう言って運転席の扉を開けると黒い犬は俺の脇を抜けて後ろの席を占領した。
「下ろすにのも面倒だな・・・」
少し気になるがこのままホテルへと向かうことにした。
「大人しくしてろよ」
「バウ!」
同日ホテルバシレイアー5時前
慣れないノリの利いたワイシャツを着心地悪そうに着て太田さんはやってきた。
「どおも、お久しぶりですな」
このおじさんは、どうも馴染めない。
ボクの心でも見透かしているような気がするからだ。
いかにも、ガキの考えていることくらいわかるよ、と言わんばかりの感じがしたからだ。
それはボクの勝手な想像で実は人の良いおじさんのようなのだが・・・
そんな事を考えていると「とりあえずロビーでお茶でもしましょう」と歩さんが言い出した。
周りを見渡して太田さんがポツリとつぶやいた。
「妙に客が少ないな・・・」
そういわれてみればそんな気がしたのだがパーティーがあるので一般のお客さんが少ないのかな?
そんな事を考えながらロビーのソファーでくつろいでいるとそこにボーイさんが来た。
「御神楽様とそのお知り合いのかたですね?」
歩さんがボーイさんと話している。
「会場の準備ができるまで最上階のラウンジでお待ち下さいだって」
嫌がっていたはずの歩さんの頬はゆるんでいる。
「歩さん何か良いことあるの?」
「ここのラウンジ素敵なのよ、行ったこと無い?」
・・・ボクは未成年。
「長話せずにそろそろ行きましょうか?」
太田さんがいかにもマイペースといった感じで話に割り込んできた。
私たちの脇で待っていたボーイに連れられて最上階のラウンジに向かった。
同ホテル6時過ぎ
「いつ見ても豪華なホテルだな・・・」
場違いな軽自動車をホテルの地下駐車場に置き
車から出ようとしたとき犬が先に車から出た
「何だお前?ここに用事でもあるのか?」
「バウ!」
何を聞いても”バウ!”しか言わないので、
意志の疎通がなされているのかどうか不安だ
「でも、ここはペット持ち込み禁止だぞ」
俺の言葉を無視して犬は階段の方に走っていった
仕方がないのでその犬の後を追うことにした。
いったいここで何が起きるのだろう?
「そういえば今日学校で御神楽がここのパーティーに出席するとか行ってたよな」
ガキのようにはしゃいで静桜に話していたな・・・いや、ガキか・・
そんな事を考えながら一気に階段を駆け上っていった。
あの黒い犬はあちこちで騒動を起こしているらしく追いかけるのには苦労しなかった。
・・・追い付きはしないが。
しかしおかしい?
客らしき人間の顔をまったく見ない・・・どう言うことだ?
しかも、従業員も何か帰る支度をしているようにも見える。
疑問に思ったが今はそれどころではない。
あの犬は、最上階でも目指しているかのように階段を駆け上っていった。
運動不足だな、最上階まで持つかな?
同ホテルのラウンジ
「どう?感じ良いでしょう?」
まるで自分の家でも自慢するようにはしゃいでいた
・・・一番楽しんでるじゃない歩さん。
「私は、一足先にお酒でもいただきましょうかね」
そういって、太田さんは高そうなお酒を注文していた。
「広いお店にボクたちだけって何か妙だね?」
期待していたとおり何か起きるのかな?
「そうですな、この時間になっても他の客がこないのはおかしい」
しかし、何も起きていないのだから大げさにするのもおかしいかな
しばらく時間がたった・・・何か妙だ、何だろう?
「従業員がいない・・妙な感じがするな」
太田さんがいかにも探偵らしく言った。
小柄なのだが、頼りにできそうに見える。
何か起きてほしいような、ほしくないような複雑な感じだった。
同ホテル階段
「冗談じゃないぜ、マジで最上階まで来ちまった」
周りを見渡したが犬がいない、やはり途中で見失ったか?
まずいな、と考えていると従業員がぞろぞろと下の階に向かっているのが見えた。
「おい!お前、今日はもう店じまいか?」
肩に掛けた手に力を込め少し睨みを利かせて気の弱そうなボーイ服の男に質問した。
「え、あ、いや、上からの命令で一時的にホテルから従業員は全て退去しろと言う話があったもので・・・」
今にも殴られるのではないか?という不安で歯をガチガチいわせている。
かわいそうなので、この辺で解放してやることにした。
ラウンジの方を見ると何か人影らしき物があったのでそちらに向かった。
ラウンジにはいるとそこには、予想通りの奴がいた。
御神楽綾香だ。
「芸能人はこんな良い所でお食事か?」
「そういう城上先生はこんな所までストーカー?」
さすがに口の悪さでは勝てそうにないな。
下らない言い合いをしていると、背の低い中年の男性がポツリとつぶやいた。
「はめられたな。見ろ、火だ」
淡々とした落ち着いた声で言ってくれる
火は、炎となりあっという間に私たちを取り囲んだ。
「おかしいな?こんな所のカーテンは不燃性のはずなのだが」
さらに、その男は冷静に状況を把握していった。
「やばいですね?早くでないと煙にやられる」
御神楽は少し楽しそうにしているその横の女性はパニック寸前だというのに・・・
「机で橋を造って一気にわたりきってしまいましょう」
準備に手こずってしまったために、歩と呼ばれた女性は煙にまかれて意識を無くしてしまったようだ。
「俺が背負っていく、二人は後から来てくれ」
そういって、その女性を背負って机の上をわたった。
思ったより火の勢いは強かったため服を焦がすハメになった。
準備には手こずったが脱出にはそれほど手こずらなくてよかった。
廊下に降りた太田と呼ばれた男性は下に行くための通路を調べたが、
どおやら防火戸が閉まって開かないらしい。
このままではやばいな、そんな事を考えていると自体は更に悪化することになった・・・。
同ホテル最上階7時過ぎ
何でこんな所に城上がいるの?
あんな事があったばかりじゃ居心地が悪いじゃない。
歩さんも心配だし・・・
その時、城上が何か言った
「窓の外に何かいる」
ん?馬鹿じゃないのここは地上・・・
「何?」
頭がおかしいんじゃないと、馬鹿にしようと外を見たとき
変なのが宙に舞っていた。
黒い大きなマントを頭からかぶって顔の当たりにお面を付けたような奴だった。
そいつが、私と目が合うと窓ガラスに体当たりを始めた。
「さすがアイドル変わったファンだな?」
城上が皮肉っぽく言っているが顔色がすぐれない・・・。
そんな事をしているうちにその化け物はホテル内まで入ってきた。
そいつは、一番近くにいる太田さんを片手で廊下の端まで吹っ飛ばす
死んだのかと思ったが微かにうめき声を上げている、何とか生きているみたい。
こんなのに殴られたらボク死んじゃうよ
しかし、戦う以外に道はないみたいだ・・・
私の横をすり抜けて城上が殴りかかった
その大きな拳はマントをかすめるだけでそのまま体勢を崩してしまった
そこに化け物の一撃が城上を襲う!
数メートル吹き飛ばされたがまだ立てるらしい
見かけによらず化け物は体が小さいようだ
・・・ならばいけるか?
ボクは、一瞬の隙をついてその化け物をホテルの外に投げ飛ばす
見た目よりやはり小さいようで軽々と投げることができたが・・・
窓の外で浮いている!
ホントに化け物のようだ。
それを見ている城上の顔が蒼白に変わる・・・結構臆病者ようだ。
しかし、投げることのできる相手なら勝ち目はある。
そう思って、化け物が入ってくるのを待ちかまえる
化け物は静かに音も立てずに中に入ってきた
次は、炎の中にでも投げ込んでやるか?
そう思って掴みかかろうとした時、ボクの横を黒い影が化け物に向かって
飛んでいた・・・黒い犬のようだ。
どこからいたのかと振り返ると右手をかざした城上がその場にくずれさた
?何が起きているのかさっぱりわからないが、犬は化け物を圧倒しているようだ
凄い
化け物はたまらなくなったのか窓から外に逃げていった。
「ふう。撃退できたのかな〜?」
そんな台詞をはいたとき突然スプリンクラーが動き出した。
ベルがうるさくなったいる。
どうやら、セキュリティーが回復したようだ。
ボクは歩さんが心配になって歩さんに駆け寄ったとき、防火戸が開いて沢山の人が入ってきた。
助けが着たようだ。
歩さん達は担架に乗せられて運ばれていく・・・その時
「動かないで下さい脅しではないですよ」
背中に何か押しつけられてそんな言葉がささやかれた。
「静かにしていただければ危害は加えませんよ、ただし・・・」
さすがに銃を相手はやばそうなので静かに質問をかえすことにした
「ただし何だい?」
「抵抗するなら彼らの命はないものと思ってもらいましょうか」
「ふう、わかりました」
運び出される、歩さん達を見送りながら私は別の所に運ばれた。
同日某病院
同じ部屋に運び込まれた歩さんが騒いでいる
「あ、綾香ちゃんがいないの!」
よほどこの女性に大切にされているらしいな
「落ち着いて下さい、歩さん予定外ですがまだ手はありますよ」
「どううこと?」
俺には関係ないといった顔の大男を見ながら答えた
「犯人の目星はつきましたから」
「だ、誰なの?ライバルのプロダクションとか?」
「あのホテルのオーナーですよ」
「本当なのか?」
今まで黙っていた大男が初めて口をきいた
「彼女をつけていた車のbェあのホテルのオーナーの物だった」
そこまで話していると、警察の人間が入ってきた
たぶん、こいつらは買収されているのだろう
話を聞いていると御神楽綾香という人間の痕跡すらない
しかも、化け物の話をするわけにも行けないからな。
今日は帰って良いらしいので3人で病院を出ることにした。
「独自で捜査してみますよ気を落とさないで歩さん」
ありがとうと言って歩さんは仕事があるので事務所に戻っていった
のこるは大男と俺だけか・・・
確か城上とか言ったな?
話しかけようとしたとき一枚の封筒を渡された
中を見てみると一枚の紙が入っている
「明日、○○美術館で待つか・・・」
いつの間に?そう聞こうとして横を見ると城上さんは犬の相手をしている
「喫茶ネームレス・・・ここに行けということか?」
犬からうけとったかーどをみながら一人でつぶやいた。
「今から行きましょうか探偵さん」
俺はそう呼ばれるのが嫌いだったのですぐに言い返した
「太田と呼んで下さい」
城上さんはキザっぽく指を鳴らしてOKと答えた
怪事件の解決に犬のアドバイスか・・・・
「珈琲でも飲みたいな・・・」
二人でその喫茶に向かった
同日喫茶ネームレス10時前
その喫茶は目立たないところにあった
目印はあの黒い犬だ俺の手から飛び出したときは
本当に戦慄を感じた俺の精神はまともなのかと
「ここのようですね、入りましょうか?太田さん」
客が来るのを嫌っているのかな中にも店の主人くらいしかいない
「いらっしゃい、城上さんですね?」
ロシア系のしっかりした体格のマスターが初対面の私に話しかけた
「初めてなのに名前を呼ばれるのは良い気がしませんね」
「・・初めてでしてたね。気を悪くしたらすみません」
おかけになった下さいと言ってきたので席につくことにした。
「お詫びしるしに、おごりますよ」
そう言って入れ立ての珈琲を出してくれたのだが・・・
俺は、紅茶はのだがな・・・
隣に座っている、太田さんは旨いなどとほめているが
俺には、よくわからないな
「それで、ここに来れば何か解るのですか?」
おもむろに太田さんが話しかけてきた
「よくわからないのですが、マスター貴方がここに来るようにし向けたのですかね?」
マスターは”少々お待ちを”といって店の看板をクローズに変えて戻ってきた
「お待たせしました、先ほどの件ですが直接的には私ではございません」
少し遠回しな言い回しに少しいらだちをおぼえた
「エリオン・・スパンデクス・エリオンと呼ばれる女性が鍵を握っています」
「名前からすると外人ですかな?」
太田さんが探偵っぽい口調で聞いた
「そうですね、しかし彼女は素性をいっさい話しませんのでそれ以上のことは言いかねますが」
話すが進まないので俺が質問することにした
「何処に行けばあえる?」
マスターは用意してあったメモを俺に渡してこういう
「メモの通りの道順でそこに行って下さい」
メモに目をやるとでたらめに蛇行した道順が書いてあった。
「珈琲ごちそうさん、今から行きますよ」
そう言って足早に店を出た太田さんは珈琲に名残惜しそうだった
「また来るかな?」
太田さんは呟いた
午前0時頃某港倉庫街
「まるでコンピュータゲームだな」
思わず一人でつぶやいた
「ん?ゲームをなさるんですか、若いですな」
食えない感じの声で太田さんが話す
「メモによるとこの道を右に曲がると・・・・」
俺は思わず息をのんだ
「ほーこんな倉庫街に大きな帆船・・異常ですな?」
太田さんもやはり異常だと感じているようだ
「ますますゲームのようだな」
船を見つめながら思わず口からこぼれた
その船は大きな黒い帆船で遠い昔の軍艦のような容貌をし
先端には竜の彫り物船の横には名前らしき物が刻まれていた
「ド・ドラッケンか?」
船を警戒しながら二人で近づいていった
すると船から港のコンクリートのきわに木製のタラップが降りた
その先を見つめると一人の少女がたっていた
「初めまして、スパンデクス・エリオンともうします」
そう言って深々と頭を下げた
エリオンと名乗った女性は黒い腰まである長く美しい髪
漆黒のドレス、美しく整った顔、しかしそれは手入れされているのではなく
素材そのままと言った感じする
年齢には不釣り合いな落ち着いた表情・・・
いや、まるで面でも着けたような感じ
服装もそうだが美しいのだがなにか無機質な感じを全体的に漂わせている
しげしげと観察していると彼女はどうぞと船の中へと誘った
私と太田さんは無言のまま船のなかえたはいっていった。
船の中は綺麗に整頓されておりまったく人のいる気配を感じさせない
まるで、人形の世界にでも入ってしまったかのような錯覚すら感じる
彼女に誘われるままテーブルを挟んで椅子に座った
彼女はまるで、録音されていた声を再生するかの用に話し始めた
「城上さん、太田さん初めましてスパンデクス・エリオンともおします。エリーとお呼びください。」
表情に変化は全くない
「お二方は、魔導書というのをご存じですか?」
「ええ、ゲームをよくするのでね」
話のテンポを崩さない程度に返事をした
「そうですか遥か西方の地、英国にオセロットと言われる魔導書があります。これが今回の事件の鍵になります」
「オセロットですか・・・」
復唱するようにつぶやいた