回り出す歯車
   
きっかけを見つけたね
これで回り出すのかな?
どうかな、だけどそれではまだ足りないよ
どうし、なにがたりないの?
一つでは存在する意味もないからね
でも回り出したよ


第一章 ーそして終わる日、それは始まりー

1999年1月某日御神楽綾香自宅

エレベーターを使わずに自分の住むフロアーまで一気に駆け上がった。音も立てずに。
「ふう、体を動かすとやなことわすれるな」
なんて事をつぶやきながら自分の部屋に向かうと不審な人物が自分の部屋の前にいる・・・
スーツを着たサラリーマン風の男だ。
気づかれないように背後までよると後ろから声をかけてみた。
「今晩わ、ぼくに何かようかな?」
さりげなく落ち着いた声で話しかけた。もちろん笑顔も絶やさない。
男の方はエレベーターの方に注意をしていたらしく階段で上ってきた
ボクには気がついていなかったらしい。
声をかけらられて、露骨に驚いた顔をする。
「いや、あの、し・新聞の勧誘なんですが・・・」
あ・や・し・い!
明らかに怪しい、ボクの直感がそう告げていた・・・。
「何処の、新聞社だい?」
機転を利かせて聞き返してやった。われながら頭の回転がよいと思う。
「そ、そうだ!きょ、今日はこれを渡しに」
そう言って、茶色の封筒を渡された。
「これはどおも・・・?そうじゃなくてボクは、」
ボクが言い終わる前に男は私の横をすり抜けて駆けていった。
追いかけようと思ったが、妙な変質者だったらいやなので、そっとしておくことにした。
とりあえず、中に入って茶封筒を開けてみることにした。
・・・まさかこの薄い封筒の中に爆弾はないよな?
何て馬鹿なことを考えながら封を切る・・・何枚かの紙が入っていた
「ふ〜ん、パーティーの招待券か」
その、パーティー会場を見て思わず息をのんだ
その理由とは・・・
その時、電話のベルが鳴った、幸せな気分を見事に壊す耳をつく電子音だった。
・・・私の家の電話だから聞き慣れているはずなのでわ?
とりあえず、電話をとってみるとマネージャーからだった。
「あ!綾香ちゃん?今日はちゃんと家にいるのね」
「毎日この時間ならボクは家にいるよ」
「そーお?こないだなんか、ガラの悪そうな高校生と乱闘中だったじゃない?」
静桜咲舞が絡まれていたときのことだ、あの時以来咲舞とは友人関係にいる。
3〜4人病院送りにしたらあれ以来絡んでこなくなったらしい。
「それは去年の夏のことでしょう、いつまでも昔のことを言ってると、おばさんになっちゃうよ」
「お・・おばさん?以後気を付けるわ。電話したのは仕事のことなんだけどね」
「そんな事より歩さん、今度の土曜日はスケジュール空いてたかな?」
「そんなこと?まあいいわ。土曜日は〜と・・残念ながら空いてるわね」
「実はね・・・」
さっきのいきさつと、パーティーの招待券の話を一気に話した。
パーティーの会場はなんと、日本でも1・2を争う高級ホテル
ホテル・バシレイアー何でもギリシャ語で王国という意味らしい。
ここで行われるパーティーは各界の超有名人ばかりこんなバーティーに招待されることは
もう無いだろう。しかも危険な香りがする・・・。
「どおかな?ボクは行ってみたいんだけどな〜」
「駄目よ綾香ちゃん、また危険な香りにでも誘われてるんでしょう?」
図星だった・・・半分だけね
「そ、そんな事無いよ、ボクも一回こんな大きなホテルのパーティーに出てみたいと思って」
「ん〜でもやっぱり駄目。ボディーガードでもついてたら別だけどね」
「実はさーこの招待券ね3人まで行けるの、歩ちゃんの彼氏でも連れていこうよ、お願い!」
「仕方ないわね、ボディーガードの件こっちで何とかするわ」
言い出したら仕方がないな、何て感じで折れてしまった歩さんだが・・
「それじゃお仕事の話ね。実は声優なんだけどね」
「そんなの出来るかな、ボク?」
「大丈夫よ。何とかなるって。番組のタイトルはね
「なに?ボクあまりアニメ見ないんだけど」
「それがね”絶対安静ナースマン!”ていうんだけど・・・」
「え!・・・。」
夜は更けていった。


同日深夜

事務所に電話だ・・
こんな時間に?
ソファーから身を起こしてめんどくさそうに電話をとる
「西麻布興信所ですが・・」
思わずこの台詞が出てしまう。
きっと家に帰ってもこんな台詞を言ってしまうんだろうな等と考えながら相手の返事を待った。
「あのー太田さん居られます?」
こんな時間に自分がいることを知っているとはやな客だ・・・
しかし何処かで聞いたことのある声だな?
「私が太田ですが、どちら様でしょうか?」
「この間、天野理の身辺調査を頼んだ事務所の者ですけど」
それで聞いたことがあるのか、2ヶ月ほど前、暴走族乱闘事件の張本人が天野理つまり、
本名御神楽綾香だった。
事件の後始末を穏便に済ませるため彼女と接触した暴走族を洗っていたのだ。
その後事件は暴走族同士の争いということで片付いた。
結局女一人にグループ全員が病院送りというのは男として恥ずかしかったのだろう。
「あ〜本宮さんでしたかどおもおひさしぶりです。で、また乱闘事件ですか?」
皮肉混じりにいってみた。
「実はそうならないために、彼女の身辺警護を頼みたいと思いまして」
あたらずしもとおからず・・・困った娘だな。
「でそれはいつから?」
「はい、今日すでに不信人物にあっているらしいので今からでも動いてほしいくらいです」
おいおい、今は夜中だぜ全く人使いの荒い女だな。
「わかりました、今夜一度マンションの周りを調べてみましょう」
「すみません、それではよろしくお願いいたします。住所はおわかりですね?」
「わかりますよ。本宮さんも気苦労が絶えませんなあ」
「申し訳ございません。では今日はこの辺で、報酬については後日」
電話を切って一息ついた。
ふー全く困ったお嬢さんだな。
重い腰を上げてスーツに着替えた。
またあの子のお守りか気が重いな
などといいながら事務所を後にした。

*ー*

同日同刻

あまり流行らない音楽を聴きながらゲームをしていた。
ゲームの方は最大手の作るシリーズ物のRPGだった、良くも悪くも無しと言った感じだ。
音楽の方は、”デッド・オア・アッシュ”という退廃的で一見救いのない様な世界観の中に
何処かしら暖かさと救いを感じさせる変わったグループでリーダーは詩人だそうだ。
そんな時間がどれくらい過ぎたか分からないが、もう寝ようとゲームの電源を切ったとき
何処かで何かがぶつかるような音を聞いた。
コーーン!
微かに響いたような気がしたが、都会では珍しくもないのだが何故か気になった。
しかし、その思考は電話のベルによって遮られてしまった。
こんな時間に電話か珍しいな、優子ならもう寝ている時間のはずだが・・・
「はい、城上ですがどちら様でしょうか?」
返事が無くその代わりに奇妙な男の声と何かノイズのような者が聞こえた。
「夜分申し訳ございません御神楽綾香のマネージャーですが」
どうして私の電話番号を?その疑問は霧のように消えてしまった
「御神楽さんのマネージャーさんですか?こんな夜遅くどういたしました?」
そんな、質問をしながら次々浮かんでくる疑問も外に吹く冷たい風にながされるように消えていった
「じつは、綾香ちゃんのことで相談なんですがあのこまた変なことに関わってるようなんですが」
「また・・・ですか?この前もあったということですか。いろいろ噂は聞いているんですけど事実は良く知らないもので」
そう言いながら暴走族乱闘事件の噂を思い出した。
「それでですね、あの子の身辺警護をお願いしたいんですが」
教師の俺にか?めんどくさいな断ってしまおうか・・・
そんな事を考えていると、催促するように声が響いた
「御願いできませんでしょうか?」
「かまいませんよ、お受けいたしましょう。これも仕事ですから」
自分の耳を疑った・・・なんて事を言ってるんだろう?
だいたい、あいつに身辺警護なんて必要なのだろうか?
その疑問を遮るように
「それではよろしく御願いいたします」
「はいわかりました」
電話を切る瞬間に手に電気のような痛みが走った
手のひらを見てみると十字に傷が付いていた。
何故こんな傷が?
しかし、その疑問は眠気によって断ち切られた。
これが彼にとっての始まりだった。

続く

戻る