第一回『ショートシナリオの制作心得』

学者みい
さて、それじゃあ授業を始めるわよ。
授業なんていったからって、固くならずにリラックスして聞いてよね。
リラックスしすぎて画面の前で寝ちゃうなんてのもなしよ。

ショートシナリオを作る

全シナリオの中でももっとも作りやすいシナリオが、これ。
一般的に、どういう訳か『お店シナリオ』が簡単に作れそうだからと最初の制作課題に選んじゃう人も多いけど……
あれはあれでいかにバランスを崩さないようにするのかとか頭を悩ませる要素が意外と多かったりするんだ。
みいは……ちょっぴり苦手分野かなぁ(製作という意味で)
そこで抜擢されるべきなのはやっぱりショートシナリオ。
このショートシナリオを作る上での心得をこれから教えるから、しっかり聞いておいてね。
ここでの授業を使うにせよ使わないにせよ、何らかの形で生きてくるとおもうからさ。

授業その1 まずは話の内容を考える
まぁ、必須項目じゃないかなぁ。
何しろお話がないと、シナリオなんて成り立たないんだもん。
でもここで言いたいのは……
『制作に入る前にきちっとしたあらすじを組み立てておく事』
……なんだよね。
単純にこんな話を作りたいなっていうだけで制作に入っちゃうと、後々凄い矛盾が
出てきちゃったりするんだよね。
そんな事にならないためには、最初にきちっと物語の概要を決めてしまう事。
まあここで決めた事は最後まで貫き通す必要はないんだけどね……。
でも作ってると作ってないとでは、作業効率に結構影響するんだよ。
面倒くさがらずに、まずは簡単に物語の流れを書いてしまうといいよ。

例:(人と妖魔と冒険者)
冒険者のお店で、親父さんと談笑

依頼人がやってくる(話を聞く/聞かない)
↓(聞かない場合は済印をつけずに終了)
依頼人に詳しい話を聞く(ゴブリン退治)

依頼を引き受けようか?(受ける/受けない)
↓(受けない場合は済印をつけて終了)
ゴブリンの洞窟へ向かう

見張りがいない、洞窟に足を踏み入れると罠に引っかかる
(強制イベント)

捕らわれる冒険者

目の前の別の牢屋にゴブリンロードがいて、彼が話しかけてくる

ロードの話を聞く(黒幕がいてそっちの方が本当の悪人だと言う)

ロードの協力を得て牢屋を出る。ロードを連れてく?
↓(つれていく場合はNPCに)
黒幕とバトル、倒してロードと別れる

依頼人に報告、報酬をもらう

冒険者の宿で親父さんと談笑……END

といった感じかな。
これだけまとまってれば、作っていきながら矛盾が出てくる事もないとおもうよ。

大体お話は頭の中でまとまってきたかな?
それじゃあ次にいこうね。
シナリオのどの系統にも言える事なんだけど、『みいが一番大事に思ってる事』は……
いかにプレイヤーさんに楽しんでもらえるか
……なんだね。
やっぱり『面白かったよ』と言ってもらえたときの作者の喜びって、凄いからね。
ちなみに『まず自分が楽しめるかどうか』っていうのも重要かなぁ。
やっぱり自分だって楽しみたいしね!

授業その2 ショートシナリオの生かし方
それじゃあ今度は、ショートシナリオってどういう風にすればプレイヤーさんに楽し
んでもらえるかを考えようね
授業その1で例に出されたあらすじをみながら考えてみようか。
方法その1 導入は分かりやすく
ショートシナリオっていうのは、その名の通り『短いお話』って事だよね。
そういう短いお話なんだから、あんまりにも凄いオープニングとかは結構不向きな
んだよ。
ちょっと気楽に遊べるような作品っていうのがショートシナリオの醍醐味。
オープニングやなにやらというのは『ロングシナリオで使用する』のが効果的。
今回の例の場合

冒険者のお店で、親父さんと談笑

依頼人がやってくる(話を聞く/聞かない)

という部分が導入に当たるかな。
それに依頼もゴブリン退治と気楽なものだから、結構ごく普通の冒険者の日常の
ような感じですんなり話に入ってこれると思うよ。
もちろんただ喋ってると言うだけよりも、一工夫欲しい所。
ちょっとイベントの一例を紹介しようかな。


始まりと同じにランダムで1人眠り状態にしておいて彼(彼女)だけ寝坊していると
いう演出。

このイベントを使えば、PCの性格にそれ程深くは入りこまずにPCにスポットを当て
る事が出来るのが強みかな。
最初の親父さんとの談笑の時に起き出してきてもいいし、依頼人との話しがまとま
った時に起きてくるなんていうのも、初めの軽いギャグのような感じで、良い掴みに
なってくれるよ。
とにかくどんなシナリオでも始めは結構肝心なんだ。
プレイヤーさんをさりげなく物語りに入り込ませちゃうような演出は効果的なテク
ニックだよ。
方法その2 予想外のハプニング!
ゴブリン退治っていうとやっぱりAsk様の『ゴブリンの洞窟』なんかがイメージにあ
るだろうし、なにより依頼の詳細も『ゴブリンの退治』だからね。
当然プレイヤーさんはゴブリンを倒すのがこのシナリオの目的だという風に認識し
てくれるはずね。
もちろんそのままゴブリン退治をメインにおいて、いろんな仕掛けをする方法もある
んだけど、今回の例では『予想外のハプニング』におちいらせてみたの。

見張りがいない、洞窟に足を踏み入れると罠に引っかかる
(強制イベント)

捕らわれる冒険者

という部分ね。
ここで注意しないといけないのは……
強制イベントとはいえ、出来る限り強引には見せない事
……かな。
あんまり強引過ぎると、プレイヤーさんがゲームを遊んでいるという認識がゲーム
を遊ばされているという認識に代わっちゃう可能性があるからね。
強引な展開を求める場合は、そうなっても仕方ないなとプレイヤーさんに納得して
もらえるための工夫が必要になるの。
それじゃあここでもイベントの一例を紹介するね。


まず冒険者が嫌な予感に気付くかどうか判定する(自動的)
判定に成功した場合のみ、洞窟の周囲を調べる事が出来る
ゴブリンが様子を見ている事に気付けるか判定する
気付いたなら戦うか放っておくか選択

戦う場合:
ゴブリンを倒した後、彼等が自分達を挟み撃ちにするつもりだったに違いないと冒
険者が意見を言って洞窟に足を踏み入れる。
奇襲を阻止した油断から罠にかかる、頭上からネット。

放っておく場合:
特に気付かなかった場合も同等。
洞窟に入った時に、挟み撃ちになる。
そしてゴブリンに気を取られているすきに頭上のネットが落ちてくる。

こんな感じでいいと思う。
奇襲を潰しての油断に、奇襲されてのパニック状態。
そのどちらでも、罠にかかる可能性はかなり大きいからね。
方法その3 依頼の二重取り
冒険者達が受けている依頼は『ゴブリン退治』。
でも前述で発生した予想外のハプニングの為につかまってしまった冒険者。
これが頭のいいゴブリンの巧みな罠っていう事にしてもいいんだけど、物語の意外
性を高める為に例では『もう1つ依頼を出す』事にしてるわ。
実はゴブリン達は、人間の邪悪な魔道士によって操られており、ロードは牢屋に押
し込められているというパターン。
ここでまず邪悪な魔道士について考えてみようか。
何故この魔道士はゴブリンを従えてるのかな?
例の魔道士の考えはこんな所

魔術の研究に人体実験が必要になった。
人をさらえば、王国や警備団に目をつけられる。
だから妖魔をかくれみのとして、退治にやってきた冒険者を捕える。
冒険者はたかがゴブリンと油断しているし、一般人にもゴブリンの事だけが話題に
上って自分の事は話題にならない。
ゴブリンにはほんの少し迷惑をかけさせる程度にしておけば、やってくる冒険者も
新米ばかり。
そんな新米冒険者がゴブリン退治に出て帰ってこなくても、誰もその死に疑問を持
つ事はしないだろう。
だから有意義に人体実験の材料を獲得出来る。

こんな感じかな。
人間の魔道士がボスと言う事は、わざわざゴブリンを従える何らかの理由があるは
ず。
その理由はあいまいにしちゃあだめだからね。
理由があんまりあいまいだったら、プレイヤーさんの疑問として残ってしまって、プレ
イヤーさんが消化不良を起こしちゃうかもしれないからね。
あと、この裏事情の明かし方も結構一工夫必要だよ。
魔道士が全部話しちゃうだけじゃあ、ただただ説明を聞かされただけみたいな印象し
かないからね。
ロードも少しは知っていて、これこれこんな感じの事をしていると、ロードなりの推測を
冒険者に語ってあげよう。
プレイヤーさんは、そこから魔道士の裏事情をいくらか推理できるはずだからね。
こうした謎のヒントを出して、プレイヤーさんが想像の羽を広げてくれたらしめた物。
それだけ物語に引き込まれてるって事だからね。
方法その4 おしまいは王道で
最後は物語の終りかたね。
ここはあんまり深く考えないほうがいい結果を生むと思うよ。
冒険者には冒険者の日常があるんだしね。
だから、ここでは冒険者達を日常に返してあげないといけない。

冒険者の宿で親父さんと談笑……END

これがその方法。
始まりと同じような方法で終らせてあげると、やれやれ、仕事も終ったなぁという雰囲
気を演出する事が出来るからね。
だからこの場合は、依頼のないようを親父さんに話す、で、親父さんが何か茶化して
冒険者がすねる。
後は宴会に持っていくなり、早めにやすませるなりすれば、終わりと言う感じが出せ
るはずだよ。
連作シナリオの途中ならとにかく、ショートシナリオの最後には依頼も終って平常に
戻る冒険者の図がいい感じかな

これで完成ね。
でも100%とはまだ言えないかな?
テストプレイしろっていうのはお約束だからこの際置いておくとしても(だからといっておざなりにしちゃあだめだよ)
出来るだけシナリオに『おまけ要素』を増やせるように心がけれれば最高かな。
例でいえば、ロードを連れて行くかどうかを選択出来る部分が、それかな。
連れて行くか連れて行かないかをプレイヤーさんが選択できて、かつそれで魔道士の反応や操られるゴブリンの反応が変わると
NPCが活き活きとして見えてくるわね。

学者みい
さて、と……
これでショートシナリオについてはおしまいかな。
全てのシナリオの基礎みたいなところもあるから、大事なところなのよ。
それと最後にちょっとだけ……
ショートシナリオを連作シナリオに変化させる
これは今回のショートシナリオを軸にして、連作シナリオにしてしまうための方法ね。
やり方はいくつかあるけど、簡単な所を紹介しようかな。

例1:(実は生きていた!)
今回倒した魔道士が実は生きていて、冒険者達に復讐してくるタイプのパターン。
あまり大きな事件に関連する可能性は低く、冒険者を再び罠にはめようとする魔道
士のお話といった感じ。
見所は、ねちっこい悪役を再度叩きのめせるという所かな。
でも実は大事件に発生する可能性もあるんだよね。
冒険者に叩きのめされて、躍起になった魔道士が街ぐるみを巻き込むような大事件
を起こす場合。
でもこのパターンは冒険者に『事件の引き金になった責任』がとわれたりするだろうし
みいとしては、好みのパターンじゃないかな。

例2:(実はバックがいた!)
今回倒した魔道士は実はただの小物で、その背後には大きな組織が動いていたとい
うもの。
自分達の組織に打撃を与えた冒険者に刺客を差し向けてもいいし、また別の事件で
同じ組織がらみの事件にまき込まれるっていうのもあり。
結構大きな話へ展開して行くのが見所だけど、シナリオはかなり細部まで練り込まな
いと満足してもらえないかもね。

例3:(上記二つの両方)
実は生きていた魔道士をみつけた組織が、魔道士の命を助けるかわりに研究を要求
するタイプ。
この場合のバックはただのパトロンにする事で例1の展開に、闇の組織にすれば例2
の展開にと柔軟な対応が出来るのが強みかな。

どうかな?
ショートシナリオはほんの少しだけ最後をいじるだけで連作シナリオにはやがわりし
ちゃうんだよね。
連作シナリオを最初から作りたいと思う事も多いと思うけど、こうしてまずショートシナ
リオを作ってみたら自然と連作になたなんていう事もよくあるはなしなんだよね……
でも出来ればショートシナリオはショートシナリオとして割りきった方が無難だと思うよ。

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