@ 1日目
マディー・クリーク駐車場 から シェルター・ロック・ハット
(Muddy Creek car parak to Shelter Rock Hut)


出発前日

昼過ぎに、DOCビジター・センターにリース・ダート・トラックのコンディションを聞きに行く。たまたま日本人のスタッフ(レンジャー)がおられて、「天気予報では、明日は前線が通過し雨になる。もしかすると警報が出るかもしれない、大雨だと25マイル・クリークが増水し渡れなくなる。増水した川はこんな感じです」と言って川の写真を見せてくれた。とても渡れる雰囲気ではない。

延期するか迷ったが、レンジャーのアドバイスもあり、結局、トランピングの用意を全てして明日バスの中継点のグレノーキー(Glenorchy)まで行き、着いた頃にはクイーンズタウンのDOCのオフィースが開いているので、警報が出ていないか電話で確認することにした。悪天候なら 1日遅らせるか、それでも駄目ならグレノキー近辺のデイ・ハイクでもする、ということにした。無駄にならないことを祈り4泊(1泊1人$15)2人分のハット・チケットを購入した。

バスの予約と食料の買出しをし、レンタカーを返して、夜にはザックのパッキングも終え、リース・ダート・トラックへの全ての準備はできた。今日1日はましな天気だったのに、なんで明日は前線の通過なんだと雨の程度を気にしながら眠りについた。


歩き出す迄:

グレノーキーの
インフォメーションセンター
右横がバスの駐車場
(インフォメーション・センター紹介の写真より転載)

朝起きると予報どおり雨。バスは8時発、乗り合わせたのは、我々含めて4グループ。45分ほどでグレノーキーのインフォメーション・センター横に着いた。早速インフォメーション・センター内にある掲示板の天気予報を見る。警報は出ていないようだが予報は雨、前線通過後明日は回復方向とある。
インフォメーション・センターの奥にクイーンズタウンのDOCビジター・センターに直接繋がる電話が設置してある。受話器を取ると、DOCに繋がった。確認すると、やはり「警報は出ていないが1日中雨」とのこと。「25マイル・クリークは渡れるか? 出発すべきか?」と聞くと、「今の状態なら渡れると思うが、天候はどう変わるか分からない。自分で判断して決めてもらうしかない」というもっともな返事だった。
万一25マイル・クリークが渡れなければ、川の手前にある25マイル・ハット(25 Mile Hut)に避難し、そこで泊まることに決め、出発することにした。


入山届け(Intention Card)用紙をもらい、記入し、インフォメーション・センターの女性(おばちゃん)に渡し下山時に渡す半券を受け取った。女性は行先を見て、「DOCは電話でどのように言っていたか?」と聞くので、説明すると「25マイル・クリークは沢山の川が集まっているので、直ぐ大水になる。男の貴方が渡れると思っても、貴方のワイフが尻込みしたら、渡っては駄目だ。渡るか渡らないかを決めるのはあんたのワイフだ」と言い、家内に向かっては「渡る時は足を広げてこのように」と身振り手振りで教えてくれた。



コース
Muddy Creek Car Park-(2h15min)25mile Creek-(15min)Rock Bivvy(岩屋 Lunch Time 35min)-(1h 15min)Mt Aspiring National Park-(10min)Swing Bridge-(1h 40min)Wood Bridge-(1h 30min)Swing Bridge,Shelter Rock Hut
Total:7h 05min(休憩を含んで7h50min)
標高差:460m
最高標高:960m

マディー・クリーク駐車場のリース・トラック入り口の表示


9時15分発のマディー・クリーク(Muddy Creek)行きの小型バスに乗る。客は我々2人のみ。他の3グループはグリーンストーン・トラックとルートバーン・トラックに行くとのこと。今日1日2人だけの山歩きになるのを覚悟した。

運転手は若い女性。雨の中、車は細い砂利道を突っ走り、途中小川をジャブジャブと渡り約30分でマディー・クリークの駐車場に着き、我々2人を下して戻っていった。



強くはないが休みなく雨が降る。雨具を着けスパッツを着け10時に出発。4WDの道路を進み、すぐにリース川(Rees River)沿いの広い草地に出る。素晴らしいはずの山は完全に雨雲の中。踏み跡が湿地で残っておらず、目印のオレンジ色のポールが頼りだが、かなり広い間隔で立っているので、雨の中、次のポールが見えにくい。草地は水が浮き、所々川のような水の流れになっていて、靴が水没しないよう場所を探しながら歩く。

途中、マディー・クリークとアーサー・クリーク(Arthur Cr)の小川を渡ったが、スパッツのお陰で靴の中が多少濡れる程度で済んだ。
この後、トレイルは右側の山裾になり、暫くは湿地帯から離れ、ほっとするが、再び平らな湿地に下りる。

草の湿地を進む しばし山裾を歩き湿地帯を離れる


渡った後、荷物を下した後の記念撮影
後が渡った25マイル・クリーク
その奥が歩いてきた草の湿地、右はリース川


ビシャビシャと進んで行くと、突然リース川に直角に流れ込む川が目の前に現れた。標識に25マイル・クリークとある。クイーンズタウンのDOCやグレノーキーで教えられた川だ。思っていたよりも川幅が広い。流れは分かるが深さが分からない。川底がどうなっているのかも分からない。先ず1人で川に入ってみることにした。

重いザックを背負って転倒しては大変なので靴のまま入り、ストックで深さを見ながら少しづつ進んだ。川の中央付近まで進んで深さは私のひざ上程度、急に深くなる所も無さそうと分かり、岸に戻ってMieに「行けるか?」と聞くとうなずく。
Mieを川下側に抱え、2人一緒に川の中を一歩一歩進んだ。川の流れで自然に少し斜めに渡ったが無事歩き通せた。

25マイル・ハットに避難することもなく25マイル・クリークを渡れたし、もう今日は心配する所は無いとホッとしたが、靴の中が水浸しで気持ちが悪い。靴下を絞って履きなおしたが、少しましになった程度。その内慣れて平気になった。
後で分かったが実はまだ先にも心配点が有った。



川を渡るとまた湿地から離れ山裾を登る。10分程で大きな岩屋の前に出る。岩の下の土が乾いていて、焚き火の跡もある。絶好の休憩場所でビバークも可能だ。ここで昼食にする。
この岩屋からはリース川を挟んで対岸の岩壁に大きな滝が見える。地図を見るとレノックス滝(Lennox Falls)とある。晴れていればこの滝のずっと上に氷河を抱いたアーンスロー山(Mt Earnslaw 2830m)が見えるはずだ。

岩屋で一息、ここで昼食 岩屋からの展望、 正面にレノックス滝

岩屋を後にして進むと、また湿原に出る。ずっと気になっていたことだが、湿原に車のわだちが時々現れる。帰って調べたら4WDでリース川を遡るツアーがあるようだ。

マウント・アスパイアリング国立公園に入って直ぐの吊橋 



長い湿原の後、マウント・アスパイアリング国立公園(Mt Aspiring National Park)の境界(標識あり)に出る。ここからはブナやシダの林になり、すぐ吊橋に出て、リース川の西側に渡る。ゆるい登りの綺麗に管理された林の中のトレイルで、今までの湿地帯歩きとは雲泥の差。

ポシェットのカメラが雨で壊れてしまってはまずいので、ザックにしまう(ここから写真は無い)。

雨は一向に止まないが、木道も現れて、さすが国立公園、整備が行届いていると言いながら歩いて行くと、Avalanche(雪崩)の注意表示。林は無くなり、クラーク山(Mt Clark)から崩れ落ちたクラーク・スリップ(Clark Slip)というガレ場の下を歩く。雨雲で頭上に見えるのは山腹まで。そこに幾つもの滝が流れ落ちているが、雪はついてないので大丈夫と進む。所が、ガレ場を削るように流れ落ちる沢(Gully:小渓谷)が次々と現れた。たしか5つはあったと思う。

その中の1つでは、渡るのにちょっと躊躇するほどの水流があったが、更に別のもう1つは谷も深く、石がゴロゴロと転がった急流で滝のようになって流れている。水際に下りてみた。川幅はさほど広くはないが、渡れるがどうか分からない。もっと渡れそうな所を探そうと崖上に戻ってみたが、谷が急で他からは下りられる所が見つからない。また同じ水際に下り、一番ましと思われる流れの中に入ってみることにした。もちろん靴のまま、流れがきつい上に私のひざ上を軽く越えるが流されるほどではないようだ。ここは2人並んでは石が邪魔になって歩けない。戻って「俺が先に行くが大丈夫か?」と聞くと「わかった!」と言う。先に渡り次はMieの番。「ゆっくり、ゆっくり」と声をかける中、ももに届く深さの流れをMieも無事渡り終えた。時間は午後5時近い。朝から長い間雨が降り続き、大分増水したようだ。警戒すべきは25マイル・クリークだけではなかった。
靴の中は水でずくずくだが、もうに気にはならない。慣れとは恐ろしい。

最後に再び林に入り、これを抜けると、リース川にかかる2本目の吊橋とシェルター・ロック・ハット(Shelter Rock Hut)とが見え、雨の中の長い初日が終わった。

小屋には誰もいないのかと思ったら、若い男女のペアーと高校生と大学生くらいの男の子を連れた家族4人と逆コースから来た4人連れの3グループがいた。同じ方向から来た2グループは、グレノーキーから我々のバスよりもっと早い時間に出て来たとのこと。別の輸送手段があるようだ。小屋は二棟有り、22のベッド数なので、余裕。

着替えて、濡れた衣類や靴をストーブの近くに干す。ワーデン(Warden:DOCの管理人、レンジャー)はいなかった。ハット・チケットはどうしたらよいか同宿者に聞いたら、持っていたら良いとのこと。そういうもんかと納得。
雨は夜半に止んだようだ。



2日目、 Shelter Rock Hut to Dart Hutへ進む