1.グラン・サン・ベルナール峠、シュボー峠、バスチヨン峠からラ・プール小屋
(Col du Gd St. Bernard、Col des Chevaux, Col du Bastillon, La Peule)

参考地図は「@シュボー峠・バスチヨン峠、及び大フェレ峠・小フェレ峠」のページにあります 



 歩いた日;2010年7月17日
 コース;Col du Gd St.Bernardー(1h05min)Col des Chevaux(10min休み)ー(45min)2409m分岐(20min昼食)ー(1h)Col des Bastillon(20min休み)ー(35min)Lac de Fenetre(10min休み)ー(40min)Plan de la Chauxー(20min)橋1996m(10min休み)ー(40min)2200m (10min休み)−(25min)La Peule
合計時間:5h30min (総合計時間:6h50min)  標高差: 登り合計 840m 下り合計 1,230m  最高標高:,2,754m 


マルティニ(Martigny)からグラン・サン・ベルナール峠(Col du Gd St.Bernard 2469m)に行くには、電車でサンブランシェ(Sembrancher)で乗り換え終点のオリシエル(Orsieres)でバスに乗り換える方法と、マルティニ発でグラン・サン・ベルナール峠行きのバスに乗る方法とがある。電車で行く方法はオルシエルでマルティニから来るバスに乗り換えることになるので到着時間は一緒です。ということで乗り換え無しのバスを利用することにした。マルティニのグラン・サン・ベルナール行きのバス乗り場は駅の直ぐ横の小さな広場に有ります。駅の近くの道路の左右にずらりと並んだ行き先表示板のあるバス乗り場ではありません。バスの出発場所が分からず暫くウロウロさせられました。
始発が8時16分で、アントルモン谷(Val d'Entremont)のヘアピンカーブを経てグラン・サン・ベルナール峠に到着したのは10時少し前、結構時間がかかります。

バスを下りて、宿泊所のホスピス(Hospice)の建物の間を進むと目の前に湖が広がります。湖の先はイタリアとの国境線で検問所の建物が見えます。ローマ時代からの交通の要所で難所だった歴史的な峠なので、もっと賑やかでお店も沢山有るのかと思っていましたが、静かな佇まいでした。

サン・ベルナール峠、ホスピス前のバス停 サン・ベルナール峠の湖、
正面右の建物がイタリア国境の検問所


犬舎に入るセント・バーナード犬

犬が吠える声がします。峠の遭難者救助で有名なセント・バーナード犬の犬舎がホスピスに隣接してあります。有料で入れるようですが、バスで隣同士になった日本人のご婦人から「犬だけなら山側の斜面の上から見えますよ」とのアドバイスがあり、上がってみました。下に大きな檻があり何頭かのセント・バーナード犬が見えます。タダで見ようとする私と同類の見物客が沢山おりました。





右の山はモン・ヴェラン(3727m)、
中央は雲がかかるグラン・コンバン(4314m)、
下はバスで通ってきた道路

グラン・サン・ベルナールの雰囲気を味わっていよいよ出発。シュボー峠(Col des Chevaux 2714m)とバスチヨン峠( Col du Bastillon 2754m)を通りフネートル湖(Lacs de Fenetre)に出るコースをとります。
道路をスイス側に100m程戻ると道路左に登山口がありシュボー峠への標識が立っている。上りになるが、さほど急ではない。少し上ると右手にモン・ヴェラン(Mont Valan 3727m)とその左に雲がかかっているがグラン・コンバン(Grand Combin 4314m)が見え出した。グラン・コンバンがこんなに早く姿を現すとは思わなかった。




正面にシュボー峠(2714m)が見え出す(一番低い所)

30分ほど登ると地図上の2572mの緩い尾根に出ます。シュボー峠が正面に見え出し、斜面をトラバース気味に登るとシュボー峠です。




シュボー峠に立つと前がパッと開け、モン・テリエ(Monts Telliers 2951m)の山の左に次に越えるバスチヨン峠が目に飛び込んでくる。その向うにフランス国境沿いの4000m峰群の山が見える。バスチヨン峠の上の白い山ははスイス・イタリア・フランスの国境にあるモン・ドラン(Mont Dolent 3820m)。明日歩く大フェレ峠はこの山の下辺りになるので先は長い。

後ろを振り返ると山しか見えず、出発したグラン・サン・ベルナール峠がどの辺りだったか分からない。地図を見るとはモン・モール(Mt Mort 2867m)の山の手前に有ることになるが、山が連なったように見え、そこにベルナール峠があるとはとても思えない。

東の方角には、モン・ヴェラン(3727m)とグラン・コンバン(4314m)がもっとはっきりと見え出した
シュボー峠(2714m)から見るバスチヨン峠(2754m)、
右の山はモン・テリエ(2,951m)

奥の山はフランス国境沿いの4000m峰群
・・・
シュボー峠から振り返る
左のピークはポワント・ド・バラソン(2963m)、
右はモン・モール(2866m)
シュボー峠から見るモン・ヴェラン(中)とグラン・コンバン(左)
 




ブール・サン・ベルナール(谷を下りる)の分岐、山はグラン・コンバン

シュボー峠からはガレ道のジグザグの急な下りを暫く進み、次にゆるい斜面を斜めに谷に下る。小川に出たところでブール・サン・ベルナール(Bourg St-Bernard)の分岐になる。
丁度昼時になり、グラン・コンバンや歩いてきたシュボー峠やこれから向かうバスチヨン峠を眺めながら昼食をとる。






バスチヨン峠を見上げる
 (峠は一番低い所ではなく、その右の平らな所)

小川を渡ると再び登りになる。最初少し急で、次いで穏やかな登りになる。絶えず正面にバスチヨン峠が見える。最初一番低い所が峠かと思ったがトレイルは次第に右に向かう。峠はモン・テリエの山側に寄った一段高い所のようだ。最後に急なジグザグを登るとバスチヨン峠(2754m)に着いた。

峠の横に聳えるモン・テリエ(2951m)に時間が有れば登ろうかと下調べはしてきたが、もう時計は1時半近くでとても無理。峠でゆっくり展望を楽しむことにした。





登ってきた東方向を振り返る。雲が多いが、それでもグラン・コンバンも何とか見えるし、歩いてきたシュボー峠も良く分かる。池が点在しているが登る時は気がつかなかった。草地の緑と残雪と池と山が美しい。

バスチヨン峠から振り返る(東方向)             
山は左から、雲がかかったグラン・コンバン(4314m)、モン・ヴェラン(3727m)、右三角の山はポワント・ド・バラソン(2963m)
中央の池はグラン・レ、右端の池はプティ・レ、ポワンド・ド・バラソン山の手前に見える凹みは超えてきたシュボー峠(2714m)


グラン・コンバンの拡大


南方向、ポワント・ド・ドローヌ(2950m)の山、左下がシュボー峠

南方向にはバスチヨン峠から続く尾根が伸びていて、その先にポワント・ド・ドローヌ(Pointe de Drone 2950m)の山が聳えています。その左下が歩いてきたシュボー峠ですが、谷に下りずにポワント・ド・ドローヌの山裾を伝ってバスチヨン峠に出る上級者ルートもあるようです。







そして、バスチヨン峠から西を見た景色も素晴らしい。雲が少し多いが概ね見える。目の前に標高以上に高く聳えて見えるのはグラン・ゴリア(Grand Golliat 3238m)で谷はフェレ谷(Val Ferret)に繋がる。グラン・ゴリアの正面の斜面にあるのは雪渓かと思ったが、地図ではアングロニェット氷河(Gl des Angroniettes)となっている。
この山の右奥にはフランスの国境沿いの山が並ぶ。モン・ブラン(Mont Blanc 4809m)の頭は残念ながら雲の中だが、それ以外の山々は何とか見えた。写真の中ほどに見える深い谷はこれから下りるフェレの谷。

バスチヨン峠から西方向を見る。 右にフランス国境の4000m峰が並ぶ。
山は左から、グラン・ゴリア(3238m)、中央付近の尖った山はグランド・ジョラス(420m)、モンブラン(4809m)はピークは雲の中、右手尖った山はトリオレ針峰(3870m)、その右はモン・ドラン(3820m)
グランド・ジョラスの拡大
左はモンブラン(4809m ピークは雲の中)、中央グランド・ジョラス(420m)、右はレショー針峰(3759m)
モン・ドランの拡大、 ドラン氷河が大きい
中央左はトリオレ針峰、中央右はモン・ドラン、
右の氷河はドラン氷河

大フェレ峠の拡大、右下にトレイルが見える




良く見ると、谷間にトレイルが見え、その先に明日歩く大フェレ峠が見える。丁度モン・ドグルヴェッタ(Mont de Greuvettax 3664m)のピーク下で、雪渓がマダラに残る平らな草地の辺りが大フェレ峠になる。





バスチヨン峠で少し北側に移動して南側を覗き込むとフネートル湖(Lacs de Fenetre)が見えます。グラン・ゴリアの山を背景にした美しい湖で思わず驚きの声が出ました。
眺めを充分堪能してバスチヨン峠を後にしました。岩場を右に斜めに下り、次に急なガレ道を下ります。下りの途中からフネートル湖を見るとその奥にフネートル・ダン・オー峠(Fenetre d'en Haut 2724m)とフネートル・ド・フェレ峠(Fenetre de Ferret 2698m)が見えます。この峠はグラン・サン・ベルナールから一旦イタリア側に出て登ってくる峠ですが、沢山の雪が残っているようなのでちょっとビックリです。

フネートル湖が見える
右下はフェレの谷
バスチヨン峠の下りの途中から見るフネートル湖
山の左端はフネートル・ダン・オー峠、
その右のU字はフネートル・ド・フェレ峠


 

バスチヨン峠を振り返る
トレイルは左下から右上の低い所に斜めについている

ガレ道の下りの途中でトレイルから外れて踏み跡に入ってしまいガレ場をガラガラと真っ直ぐ下るハメになりましたが、危険ということでは有りませんでした。絶えず山側に目配りして歩けば間違うことはなかったと思います。

下りてきて峠を振り返ると、何処にトレイルがあるのかちょっと分からない感じですが、しっかり道はついています。
 



フネートル湖、大グループはフネートル・ド・フェレ峠方向に向かった

フネートル湖に着くと沢山のハイカーが集まっていて急に賑やかになりました。今までに一組のパーティーに出合っただけだったので、何となくほっとした気分なりましたが、彼等は1つのグループのようで、ガスが出てきたせいか間もなく召集がかかってフネートル・ド・フェレ峠方向に向かい、辺りは急に静かになってしまいました。






濃いガスに覆われたフェレの谷に向かって下る

明日は大フェレ峠に行くので今日の宿を何処にするか出発前に色々考えた。ラ・フーリ(La Fouly)の村にするかフェレ(Ferret)の村かその近くのラ・レッシール小屋(La Lechere)か、それとも牧畜農家のラ・プール小屋(La Peule)にするか。どれにしても一旦フェレの谷に下りるので、フネートル湖から7〜800mほども下だらなければならない。
地図を良く見るとフェレの谷で少し上流に戻り、アングロニェット針峰(Aig des Angroniettes 2885m)の山腹を廻りこんでラ・プールに出る道が書いてある。これなら少し登りがあるが下りのロスは少なく、次の日の登りも楽になりそうなので、ラ・プールの宿に予約した。


何時の間にか谷は濃いガスに覆われ、歩き出すと直ぐ完全な霧の中に入り、目の前以外に何も見えなくなった。




モン・テリエの山腹を斜めに下りているいるはずだが時々目に入る高山植物の花を楽しむだけで、ひたすら下る。40分少々下った所でプラン・ド・ラ・ショー(Plan de la Chaux 2041m)の牧畜農家に出る。標識がありラ・プールへの矢印が谷の上流を向いている。地図の通りだ。少しガスが薄くなったかと思ったら一瞬谷の向かいに建物が見えた。ラ・プールの農家に違いない。もし真っ直ぐ行ければ凄く近いのだが、しかしこれから大回りして行かねばならない。

草地の中の道を上流に向かって進むとトラック道に出て川の右岸を進み橋を渡る。この先にも牧畜農家があるようだ、ここにも標識がありトラック道と分かれて180度方向を変え川の左岸沿いの細い道に入る。上りになり、また濃いガスの中に入る。アングロニェット針峰の山腹をトラバース気味に登っているはずだが何も見えない。こんな登りはつらい。思った以上に登りが長いように感じて本当にラ・プールに出るのか心配になり何度も方角と高度を確認した。

ハイキングルートを示す表示板が立っている所で、近くが高台になっているようなので上がってみる。オー、何とガスが切れている。目指すラ・プールの小屋が下に見えている。やっと安心した。
この高台から川に向かって下りになる。最初はジグザグに、次に斜めに下り、川に架かる橋を渡ると広い道に出る。小屋まではゆるい登りだが思うように足が上がらない。朝は遅い出発で長時間の歩きではなかったが、アップダウンを繰り返したせいか疲れた。午後5時少し前に小屋に到着。
夕方7時頃から8時頃まで強い雨、ラッキーでした。

山腹を回りこんで(2200mポイント)ガスが切れ、
ラ・プールの小屋が下に見えた
川に架かる橋を渡り、登り返すとラ・プールの小屋



ラ・プールは牧畜農家の宿で、個室もありますがドミトリーに泊まりました。個室の方は家族連れなどの客が泊まっていましたが、ドミトリーは客1人、長屋のような建物だが広くて立派で新しく、温水シャワーもある。夕食はラクレット、野菜やキュウリ類の山盛りのピクルスが出て、見習いの女の子2人と女主人がヒーターにチーズをセットして、幾らでもお替りを持ってきてくれた。客1人で申し訳ない感じ。
ツール・ド・モンブランのルート上にある宿ですが、何故こんなに客がいなかったのか不思議です。


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