アーサーズ・パス(Arthur’s Pass)周辺


 アーサーズ・パス(Arthur's Pass)は太平洋側のクライストチャーチ (Christchurch) と タズマン海側 のウェスト・コースト(West Coast)の中間にあり、列車や定期バスが運行していて、交通の便が良いが、アーサーズ・パスを素通りする人が多いようだ。降り立つと、そこは、連なる山の真っ只中で、アルプスの雰囲気を充分楽しむことができる。多くのトランピング(Trammping) コース、デイ・ウォーク(Day Walk),ショート・ウォーク (Short Walk)のコース があり、村から直ぐ登山道に入ることができる。麓に近い所は整備されたトラックになっているが、険しい山のため道のはっきりしないルートもあるので、コースの選定には注意が必要。
アーサーズ・パスは小さな村だが、食料も手に入るし、レストランもある。歩いたDay Walk と Short Walk のコースを紹介します。



@デビルス・パンチボウル・フォールス・ アンド ・ブライダル・ヴェール・ウォーク
"Devils Punchbowl Falls and Bridal Vail Walk


Aスコッツ・トラック (アバランチェ・ピーク、途中まで
  (Scotts Track (Avalanche Peak)


Bドブソン・ネイチャー・ウォーク・ アンド ・オティラ・バレー・トラック・アンド・ルート
 (Dobson Nature Walk and Otira Valley Track & Route


Cビューリー・バレー・トラックBealey Valley Track

← 教会 と マウント・ビューリー(Mt Bealey),スケッチ

クライストチャーチからアーサーズ・パスへ車で来る途中にあるキャッスル・ヒル(Castle Hill)も末尾に少し紹介します。

インターネット情報
リンク
・Arthur's Pass の情報(英): DOC, Waimakariri area

                         
現地で入手する情報DOCで ・ウォークス・イン・アーサーズ・パス・ナショナル・パーク(Walks in Arthur's
  Pass National Park )のガイドが$1.00 ・アーサーズ・パス・ヴィレッジ・ヒストリック・ウォーク(Arthur's Pass Village
  Historic Walk) のガイドが $1.00で手に入る。デイ・ウォーク(Day Walk)には必要ないと思うが、5万分の一でアーサーズ・パスが入った地図は番号が260-K33 で $13.00 。


Arthur's Passまでの交通
リンク
   ・列車:The Tranz Alpine
   ・バス:Atomic Shuttles
      


@デビルス・パンチボール・フォールス・ アンド ・ブライダル・ヴェイル・ウォーク    
Devils Punchbowl Falls and Bridal Vail Walk

コースの状況 どちらも1h〜1.5h 程度で歩ける良く整備されたコース。午前中に着く列車から降りて、OCに立ち寄り、コースガイドを入手してから、両方のコースをゆっくり歩いても、帰りの列車に充分間に合う。落差131mの豪快な滝と、静かな苔むすブナ林を堪能できる。


歩いた日: 2002年11月23日

コースDevils Punchibowl Falls 入口 -(1h) 滝を往復し Bridal Vale Walk 入口 -(1h)国道73-(30min) Arthur's Pass Village./ Total 2.5h (スケッチの時間は含まず)  クライストチャーチから列車で着いた日なので、半日をゆっくり過ごすのに、デビルス・パンチボール・フォールス・ウォーク(Devils Punchbowl Falls Walk) とブライダル・ベイル・ウォーク(Bridal Vale Walk)を歩くことにした。 国道73号線沿いに、村から少し北に行くと右に駐車場があり、これを通り、奥に進むと、ビアリー・リバー(Bealey River)を跨ぐ橋に出る。渡った所の左に、ブライダル・ベイル・ウォークに入る分岐があるが、真っ直ぐ進む。ここから早くも滝が見える。後ろを振り向くと、マウント・ロレッソン(MtRolleston)から伸びるローム・リッジ (Rome Ridge:尾根)が雪を被り美しい姿を見せる。道端でスケッチをする。


 
Devils Punchbowl Falls のTrack 入口付近からのRome Ridge,
スケッチ
もう1つ橋を渡ると林に入り、登りになる。少し平になった所で、目の前に大きな音とともに、滝が現れる。天空から大量の水が落下する。大迫力。滝の水飛沫を被る近くまで行ける。天候に関係無く1時間ほどで村から行ける。
Devils Punchbowl Falls の滝

Punchbowl とはポンチ(ラムポンチ)などをいれる大型のお椀のことを言う。滝の上が、尾根に囲まれた大きなお椀状の形になっているので、恐らくそこから悪魔のパンチボールと呼ばれているものと思う。

 来た道を戻り、登る時に通りすぎたブライダル・ベイル・ウォーク(Bridal Veil Work)のトラックに入る。全体が比較的フラットで苔が生えたブナ林を歩く。さくさくと落ち葉を踏む感触がいい。15分ほど歩いた所に、村を見渡せるルックアウトがある。中間点で川を渡り、1時間弱で国道73に出て、トラックは終わる。
帰りは同じ道を戻るか、車道を歩いて村に戻る。このトラックは歩く人は少ないが、綺麗に整備されていて、安心して歩ける。




Aスコッツ・トラック (アバランチェ・ピーク)
   Scotts Track (Avalanche Peak


現地で入手する情報 DOCで ・ルート・ガイド・シリーズ(Arthur's Pass National Park, Route Guide Series) No13
  Avalanche Peak を入手。価格$0.50。


コースの状況 森林限界を超え、岩稜に入ると次第に険しくなり、自分でルートを確認しながら登る必要がある。山頂あたりの雲行きが怪しくなって来たのと、下る時のステップを家内が心配し始めたので、約1600〜1700mの地点で引き返した。従い、肝心のピーク近くの状況は分からないが、かなり痩せ尾根のようなので、細心の注意が必要。 登る前には必ずDOCで天候と山のコンディションを確認し、登山届け (Intention Card)に記入し出発しよう。アバランチェ・ピーク(Avalanche Peak)にはスコット・トラック(Scotts Track)を往復する方法と アバランチェ・トラック(Avalanche Track)から登りスコット・トラックを下りる2つの方法がある。

 歩いた日: 2002年11月24日

コース(途中から引き返す)DOC -(20min) 登山口 -(1h) 滝が見える潅木地 -(20min) 森林限界・2本のポール−(1h 30min ) 下山開始地点(休憩30min) -(1h)森林限界 -(1h) 登山口 -(20min) Doc / Total6h

 DOCに行き天気予報を聞く。所によりシャワーとのことで、大きくは崩れないようなので、インテンション・カード(Intention Card)に記入し、出発する。曇っているが東側のピークは見える。これから登る西側はピークが雲の中にあり、どんよりしている。悪くならないことを祈って国道73号を北に歩く。 
 暫く国道を行くと、左側に登山口の表示がある。ここで標高730m。歩き出すとすぐ、「Danger」と大きく書かれた表示があって、ドキッとさせられる。林の中のジグザグの急な登りを進む。途中、林の切れ目で滝が見える所があるが、森林限界の1300mまでは、ほとんど視界が利かない。しかし、これを抜けると素晴らしい景色が目に飛び込んでくる。登るに従い、デヴィルス・パンチボール・フォールス(Devils Punchbowl Falls )と、その上の山に囲まれたクリーク(Creek)の全景が見え、滝の音が反響して聞こえてくる。右下には、アーサーズ・パスの村が見え、丁度、昨日乗ってきた11時20分発の列車が駅を発車し、プーと警笛を鳴らしてトンネルの中に入るのが小さく見える
Scotts Track の尾根から
Devils Punchibowl Falls と、その上の Devils Punchbowl
Creek

 南の方向には、せり出した山に両側を挟まれ ビアリー・リバー (Bealey River)が延々と伸びていている。振り返るとアーサーズ・パスの峠を越える国道73号が見え、その奥に雪を乗せた白い山が続く。
 タソックの草原の稜線を登ると、ごつごつとした岩稜になり、尾根も痩せてくる。西側のマウント・ロレッソン(Mt Rolleston)辺り雲の動きが速くなってきた。南側から登ってくるアヴァランチェ・トラック(Avalanche Track)が見えるが、その上のアバランチェ・ピーク(Avalanche Peak)の頂上(1833m)辺りがはっきり見えない。家内が下りる時のステップを心配し始めたので、それ以上登るのを止めた。

少し寒いがせっかく登ってきたので、尾根のちょっとした岩陰に腰を落とし休憩し昼食をとる。なにやらパサッと音がするので振り向くと
キーア(Kea )のツガイが手の届く所にいる。どこで見ていたのか、パンの袋を開くのとほとんど同時に飛んできた。 
Scotts Track の尾根から北東方向、
中央は フィップス・ピーク (Phipps Peak、
1965m)
ScottsTrack の尾根から
北西のMt Rolleston(2275m)方向、

 私達にとっては、このポイントが最高所なので、周りの山の写真を撮り、来た道を下りる。タソックから森林に入るトラック の入口には2本のオレンジポールが立っていて、林に入る道を間違えないようにしてある。 DOCに戻り インテンション・カードに下山の意味のOUTと記入し、1日が終わった。 ピークには立てなかったが、アーサーズ・パスの山の素晴らしさの一端を味わうことができた。連なる山の標高はどれも2000m前後なのに、互いに鋭く切り立ってそびえているため、どの山も裾野が小さい。少し歩くとすぐ山の姿が変り、次々と美しい山が現われ、変化のある景色を楽しむことができる。丁度北アルプスの標高1000mまでの部分を取り去って、残った2000m分の山をギュット寄せ集めた時の姿を想像してみると、少しイメージが合うような気がする。 





Bドブソン・ネイチャー・ウォーク・アンド・オティラ・バレー・トラック・アンド・ルート
(Dobson Nature Walk and Otira Valley Track & Route

コースの状況 車があれば別だが、国道73号を峠のアーサーズ・パスまで約1時間歩かなければならない。峠の駐車場の左からドブソン・ネイチャー・ウォーク(Dobson Nature Walk)が始まり、潅木と草原の高原を歩く。国道と高圧線が見えるのが感心しないが、気持ちの良いウォーキングができる。 ネイチャー・ウォークの北端からオティラ・ヴァレー(Otira Valley)のトラックが始まり、オティラ・リバー(Otira River)に懸かる小さな橋迄は整備された道が続く。
橋から先はケルンの石積みが目印になり、落石で大きな石がごろごろした川岸を源流まで歩く。私達は途中に残雪があり、スリップしそうなので源流まで行くのを途中で止めた。   



歩いた日: 2002年11月25日

コースYHA -(1h) Dobson Nature Walk 入口 -(1h) Otira Valley 入口 -(1h) Otira River の橋 -(25min)雪渓で引き返す -(25min) 橋 -(50min) Nature Walk -(2h) YHA / Total 6h 40 min (スケッチ時間除く) 


  国道73を北に1時間ほど歩かねばならない。通る車が少ないとは言え、バンバンスピードを出して走ってくるので、ちょっと怖い。しかし見える山の景色はなかなかのもので、退屈はしない。振り返ると、アバ゙ランチェ・ピーク(Avalanche Peak)の姿が良く見える。
Arthur's Pass の村と Artur's Pass の峠の間の
国道73。 右に Avalanche Peak が見える。

 アーサーズ・パスの峠の駐車場に出る前の国道73の左手に、ビアリー・バレー(Bealey Valley)と、マウント・ロレッソン(Mt Rolleston)の真っ白な姿を見ることができる。


国道73からのMt Rolleston。
3月始めにもう一度来て見ると、山頂の雪は大分少なくなっていた。
  国道を更に進むと林が無くなり、広く開けたところに出る。アーサーズ・パスの峠で、標高は900m を越えている。モニュメントの塔が見えるが、そこまで行く前に左に入ると、ネイチャー・ウォークの道になる。周囲を雪を乗せた山が囲み、白い大きな花のマウント・クック・リリー(MountCook Lily)が沢山咲き、小さな潅木と草原のなだらかな高原になっていて、気持ちのいいウォーキングを楽しめる。送電線の鉄塔と国道が見えるのが少し興ざめではある。


 ネイチャー・ウォークの北の端で自然にオティラ・バレー・トラック(Otira Valley Track)に入る。オティラ川(Otira River)は太平洋とは逆のタズマン海に流れ出る川で、アーサーズ・パスの峠が分水嶺であることが良く分かる。トラック に入って暫くはマウント・ロブソン(Mt Rolleston) から張り出したゴールドリー・リッジ(Goldley Ridge)の北側を歩く。そんなに登った感じは無いのに見晴らしが良い。
谷の向かい側の切り立った岩壁の上には、大きくはないが、氷河が見え、その上に マウント・フィリストン(MtPhilliston)が顔をだしている。振り向くと、アーサーズ・パス越しに フィップス・ピーク (Phipps Peak)が綺麗に見える。

Otira Valley Track から
Arthur's Pass 越しの Phipps Peak (1965m)

 次第にトラックは谷に下りていく。この辺り一面マウント・クック・リリー(Mount Cook Lily)が多い。丁度11月から12月にかけてが開花期のようで、大きい白い花を付けている。
 トラック は オティラ川にかかる小さな橋で終わる。川の両側とも山がせりだし、特に左岸は岩むき出しで、空を塞ぐほどの高い絶壁で、迫力がある。ここで昼食をとる。源流に向かってスケッチをする。 橋を渡るとケルンが目印のルート(Route)となる。絶壁から落ちてきた岩石の堆積の上を歩く。中には家ほどの大きさの石が何個かあり、これも落ちてきたのかと思うと気持ちが悪い。この場所を過ぎるとガレ場となり、次に斜面に雪渓が現われる。ここでMieは尻込み。谷合いにマウント・ロブソン 周辺の氷河が見え始めた所だったが、引き返す。 


Otira River に懸かる橋から、
Otira River の源流、スケッチ
 

 帰り道、橋を過ぎた所で、ゴーという音がするので振り返るが、何も変った所は見えない。雷かな―と歩き始めると、またゴーーと少し長い音がする。振り向くと絶壁の上から白煙をあげながらが筋状に雪が落ちて行くのが見えた。肉眼で見る始めての雪崩れで、少し興奮する。 帰りは来た道を引き返す。帰りの国道の歩きは、退屈でいささかこたえた。




Cビューリー・バレー・トラック
Bealey Valley Track

コースの状況
 Bealey Valley は Bealey River の源流流域で、Otira River がタズマン海に流れ出るのとは逆に、太平洋側に流れ出る。トラックは途中板敷きもあり良く整備されている。所々、石がごろごろした川岸を歩くが、マークはしっかりしている。トラック 終了ポイントに「Danger」 の表示があり、ここからはルート(Route)となり、ケルンを頼りに歩く。
歩いた日: 2002年11月26日
コース
YHA -(40min) Track 入口 -(1h) Track 終了ポイント -(30min ) 源流 -(1h50min) YHA / Total 4h

 Christchurch にバスで戻る日なので、半日程度で歩けるコースを選んだ。国道73を北に約40分ほど歩くと左に小さい駐車場があり、そこからTrackは始まる。始めはブナの林の中を下る。京都の苔寺のように苔が隙間無く綺麗に生えている。Track 入口から10分ほどでザ・チャスム (’The Chasm')と呼ぶ Bealey River を跨ぐ橋に出る。川は水量が多く水が綺麗だ。ここから所々板敷きの道があり、林を抜け、タソック地帯に入ると、一気に展望が広がる。正面にマウント・ロレッソン(Mt Rolleston、2275m) の真っ白な山頂が見え、谷の両側はごつごつとした岸壁が高くそびえたつ。振り向くとマウント・テムプル(Mt Temple)へ登るジグザグになった登山道が見え、その上に、雪を乗せたピークが見える。この川岸にもマウンティン・クック・リリー(Mountain Cook Lily)の花が沢山さいている。
川は既に大分細くなっていて、ごろごろとした岩と石の上を歩いて進むと、「Danger」 の表示が現われ、ここから先はマークが無くなるが、所々にケルンが積んである。大きな石の間を縫うように道を探して進む。間もなく雪に覆われた細い谷に出、先に進めなくなる。谷に落ちて積もった雪が残雪となったもので氷河ではない。見上げると、真っ白な山の山腹に輝いて見える氷河が望めた。しばらく周りの切り立った岸壁と真っ白な尾根とピークを眺め、スケッチをし、引き返した。
Bealey River 源流の残雪、 スケッチ




参考
キャッスル・ヒル(Castle Hill)

クライストチャーチ から国道73を車で来ると、ポータース・パス(Porters Pass )を過ぎて少し行った所の左手に、奇妙な形の岩が重なるように見える岡がある。週末の晴れた日には、道の両側の路肩に車が連なって止まっていて、車から降りた青年達が皆、背中に長方形のマットを背負って、岩の方に歩いて行く。
何かと思って、岩の方を見ると、素手で岩を登っている沢山のクライマーが見える。背中のマットは落ちた時の怪我防止のクッションだと分かった。近くに行ってみると、沢山の奇岩があり、岩を見て歩くだけで結構面白い。 



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