みーばい亭の
ヤドカリ話
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14.こぶしをギュッと!

マメコブシガニ
マメコブシガニ
私にとっては生まれてはじめて見た海のカニだからそれなりに思い入れがある
しかし60年代のあの頃は、海の生き物を自宅の水槽で飼うなんて夢の夢だった。
21世紀なんだなあ(しみじみ)


大型連休もほとんど仕事に明け暮れて、気がつけば風薫る5月も早や後半。
昔のように、海だ!山だ!飲み屋だ!ライブだ!と馬鹿騒ぎの週末を繰り返すことはなくなったし、この年になって同じことをやりたいとも思わないが、机に肘をついて職場の窓から街路樹の新緑を眺めていると、何ともいえない虚しさを感じることがある。
唯一の救いは仕事を終えた後のひと缶のビール。
5月のビールの味だけはあの頃と変わらない。
そうはいっても、まだまだ休日を家で寝転んで過ごすほど人生を達観しているわけではないので、5月の風の中、ちょっとだけ近場の浜で遊んできた。
当然、海水水槽にも新たな住人が加わることになったわけだ。
今回はそんな話など・・。

まずは、マメコブシガニ。
干潟を代表するカニで潮干狩りではおなじみだろう。
ただ最近は各地で数を減らしているとか。
確かに今回訪れた浜でも、昔は踏まずに歩くのが大変なほどウジャウジャいたものだが、今では探さないとなかなか見つからない。
それでも何匹か捕まえて遊んでいるうちに、つい懐かしくなって1匹だけバケツにキープしてしまった。
海無し県で育った私にとって、生まれて2番目に見たカニがこのマメコブシガニだったから、それなりに思い入れがあるのだ。(一番目はもちろんサワガニ)
その暴力的(?)な名前や立派な鋏脚に似合わず、触ると死んだふりをするようなおとなしいカニで、水槽でも他の生き物に干渉することもされることもなく、泰然と過ごしている。
普段はサンゴ砂に潜り込んでほとんど姿を見せないが、クリルの屑や配合飼料を撒いてやると、面倒くさそうに砂から出てきてゆっくりと食べる。
何とも穏やかでのんびりとしたコブシだ。
何の気なしに水槽のコブシと自分のコブシを見比べていたら、ふと10代の頃の記憶が蘇ってきた。
思えば、あの頃はいつも何かに腹を立てていた。
世の中のものすべてが気に入らなくて、前腕の筋がひきつるほどコブシを握り締めていたものだ。
もちろん今でも日々腹の立つことは多いが、すっかり筋力が衰えてしまって、前腕がひきつるほどの握力はすでにない。
否応なしに大人になったということか・・。
もっとも怒りを口に出してあちこちにぶちまけている今より、こぶしの中でギュッっと握りつぶしていたあの頃の方が、よっぽど大人だったような気もするが・・(^^;
ビールを飲みながらそんなことを考えていたら、水槽の中の小さなコブシに少し笑われた・・・ような気がした。

一方、主役のヤドカリたちだが、潮干狩りの友ユビナガホンヤドカリの来訪に伴って勢力図が書き換えられることになった。
まずこのひと月の間に古株のホンヤドカリとケアシホンヤドカリが相次いで脱落した。
ホンヤドカリはすっかり色が褪せて動きも緩慢になっていたので老衰による大往生だと思われるが、ケアシホンヤドカリの方は、まだ若い個体が脱皮殻だけを残して姿を消した。
例によって現場を押さえたわけではないが、異様な腹の膨らみ加減から推して、やはりクモハゼの仕業だと思われる。
ちなみにイソガニも、ここしばらく姿を見ていないが、これもクモハゼに屠られた可能性大。
これで、ホンヤドカリが4匹、ケアシホンヤドカリが2匹。
ユビナガホンヤドカリは新たに来訪した5匹を加えて6匹。
ホンヤドカリとケアシホンヤドカリを合わせてやっと同数。
元々磯がコンセプトの水槽なのだが、マメコブシガニを加えると浜組優勢である。
今後、磯組の巻き返しはなるのか?って、飼い主次第なのだが(笑)
ホンヤドカリ
一見、ユビナガホンヤドカリのような色合いだが、れっきとしたホンヤドカリ
自慢の眼力もすっかり衰えてちょっとロンパリ気味
細かな記録をとっていないので確かなことは言えないが、水槽で2年くらい生きたと思う
天敵クモハゼを向こうにまわして、ここまで生きのこった勇者だが寄る年波には抗いようもなく・・
この画像を撮った数日後・・消えた


ユビナガホンヤドカリ
連立与党と肩を並べる一大勢力となったユビナガホンヤドカリ
元々は全員細長いニナ系の貝殻にはいっていたのだが、揃ってイシダタミなどの丸い貝殻に引っ越した
立体的な動きが要求される磯水槽では、丸い貝殻の方が機能的なのかもしれない
脚が長いのでイマイチ似合わないが(笑)

オウギガニ
こちらはサンゴ砂の中の微小ガニ
「偏屈の洞窟」の管理人caveさんからご教示いただき正体が判明した
どうやらオウギガニの仲間らしい
それにしても背中のスジといいコケの生え具合といい 
サンゴ砂に手足が生えたとしか思えない
パスツール以前の人間なら絶対砂から生まれたと信じただろう
残念ながら現在行方不明中
無事を祈る



ガジュマル林
こちらはオカヤドカリ水槽
剪定したガジュマルの枝で青々としたジャングル・レイアウトになっている
年に一度の贅沢である
五月病気味の飼い主の分まで癒されてくれ
2007.5.16

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