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平成15年9月21日



自民党大阪府連幹事長  松 室  猛


銀行がバブル期の放漫融資による不良債権の処理のために、有史以来と言われるほどの業務粗利益を計上しながら赤字決算をしているため法人事業税を収めていないことの是非をめぐり争われていた「銀行税訴訟」に関し、最高裁の判決を待たずに双方が和解に応じた。

和解の内容は

その内容のあらましは、東京都は2000年に遡り税率を3パーセントから0,9に引き下げ、銀行が払いすぎた税金を4パーセントの利子相当分を上乗せして返還するという内容である。都の返還金の総額は2,340億円に上るそうである。

今日までの訴訟の経過

銀行団が提起した銀行税無効に関する訴訟に対して平成14年3月27日に東京地裁は判決を下した。その判決は都の全面敗訴であったが、判決内容は担当裁判官である藤山雅行氏のこれまでの評判とおり極めて偏向的な論理である思われるものであった。
地方自治体が徴収する法人事業税はその自治体から受ける応益性に対する側面があるにもかかわらず応能性と担税力のみを捉え、地方税法72条の19に定める「事業の状況」についても都の主張を全面的に退け、銀行税を無効とするものであった。
大阪府議会における銀行税の提案者である自民党議員団は、この判決は東京都のそれに対するものであり、何ら拘束されないものであるが、同趣旨の条例を既に制定している立場から黙視することはできないと声明文を発表した。
詳細は弊WEBの主張「銀行税判決と大阪府の対応について」をご参照いただきたい。

一審判決を受けて都は当然控訴したが、東京高裁で審理された結果平成15年1月30日に二審判決が下された。
判決内容のあらましは下記のとおりであるが、法理論的には一審判決と大幅に異なり

事業税の原則的な課税標準は所得であるとしながらも「事業の状況」に応じて所得以外の外形基準による課税を地方公共団体の裁量によって行うことを認めたのであった。
また、立法裁量権の行使結果は納税義務者に直接的かつ重大な影響を及ぼすものであるから、まったくの自由裁量ではないが72条の19の解釈論に地方公共団体の裁量に対する制約原理を求めることには限界があるとし、5兆円規模の銀行に限定し業務粗利益を課税標準とすることをも明確に許容した判決であった。
この判決を見る限り法理論的には全面勝訴というべき内容であると考える。
しかし、やはり72条22第9項が定める均衡要件を満たしていない点を指摘し違法であると判断をしたのであった。
均衡要件に関する見解は、弊WEB3月3日発信の「松室 猛・府議会最後の質問」をご参照願いたい。

東京高裁の二審判決に対して銀行側、東京都ともに最高裁に控訴し徹底抗戦の構えを見せていたが、突如和解に至ったのである。この和解に至る経過の詳細は私には判らないが、そのあらましは本文の冒頭に記したとおりである。

税制に関する和解の意味するものは・・・
読売新聞の平成15年9月18日の社説によると「税法学界では税務訴訟に関して和解はなじまないという定説があり、国税当局は原則として和解に応じていない」とあるが、新しい税制を創設する場合に徴収者側と納税者側で話し合うことの妥当性は大変疑わしいものがあるのではないだろうか。
本来、新税制の施行や徴収事務は行政に与えられた強制力を持つ絶対的な権限である筈だ。それを話し合いで決めることは談合でしかないのではないか。国税当局が和解に応じないのは当然であり、それが税制ではないだろうか。

訴訟を提起した銀行側の主張は「銀行税は不公平であり無効である」というのが明確な理由であった筈だ。それを話し合いによって税率を引き下げたことによって妥結したことは明確に銀行税を是認したことになり、銀行側はこの点に関しては全面敗訴と受け止めるべきである。
確かに高裁の二審判決では「均衡要件に照らして違法である」としているが、地方自治体の課税自主権の裁量を全面的に認めたことになり法理論的には都側の勝訴であると言わねばなるまい。

私は銀行税に関する最高裁の判決を不安と期待を抱きつつ心待ちしていたのである。
法理論的には二審判決が正しいと信じていたが、何よりも地方分権の時代といわれながら自治体の課税自主権の裁量の余地を司法がどのような判断を下すかを期待していたのである。
大変物足りないものを感じると共に、司法判断にもかなりの配慮がなされたことを感じずにはおれないのである。
大阪の訴訟に対して地方裁は未だに判決を下し得ないでいるが、どうするのだろうか。
また、この決着を受けて大阪府の当局はどんな対応をするのだろうか。大いに関心のあるところである。

平成15年9月21日

松 室  猛


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